第8章 恋人と友達  AMIGO ESPECIAL

ある日曜日、久しぶりにチカス(女の子)だけでお茶をした。女の子同士の話は世界共通だ。「日本にダーリン残してきたんじゃないの?」「ダーリンいたら今ここにはいないよ。それよりホセ、NOVIO(恋人)といい雰囲気じゃないの、あっという間だったね。」

約2週間前、3姉妹の真ん中の姉、ホセは弟ディエゴの友達のアントニオと出会った。そして1日目にして私に告げた。「アントニオのこと好きみたい」その速さにびっくりしながらも、お互いベソ(キス)をして喜んだ。「でも、弟の友達だからゆっくりと進めないとね。まずは、もう一度じっくり話していい人かどうか見極めなきゃ。」意外な慎重振りに驚いたが、その1週間後には皆の集まる場所で膝に乗りながら熱い抱擁を交わしていた。

「ノビオ?誰のこと?」 「誰って、アントニオに決まってるじゃないの」なにをとぼけたことを言っているのだと思ったが、ホセは照れているわけでもなく、さらりと否定した。「彼はAMIGO(友達)よ。」 他のチカスも当たり前じゃないのと言わんばかりにうなずいていた。

「じゃ、彼はまだフリーなんだ」 ちょっとからかうつもりでホセに笑いながら言った。すると「手を出したらこうだから」ホセはコーヒーのスプーンを握り、私の目を抉るしぐさをした。

スペインのNOVIOとAMIGOの区別はなかなか難しい。

NOVIO = 将来性のある恋人という意味。通常数年の付き合いを要する。互いの      拘束力を持つ。5−8年は当たり前。
AMIGO = ただの友達
AMIGO (ESPECIAL)〜特別な友達〜 = 通常紹介する場合は「友達」として紹介されるが、実は特別。互いの拘束力を持つ。このような呼び方はしない。

ここで問題は、「AMIGOです」と紹介された人物は果たしてAMIGO ESPECIAL なのかどうかという判断だ。これはスペイン人いわく10分も見てればすぐ分かるという。

このAMIGOという言葉は、なれない限りさまざまな問題をもたらすだろう。例えば、素敵な異性がいた場合、「NOVIOはいますか?」と聞き、「いません」と言われても、AMIGO ESPECIAL がいる可能性がある。しかし、AMIGO ESPECIALはいますか?とは聞かないらしい。AMIGO ESPECIAL とは AMIGO なのだから、友達はいますかと聞かれて「いない」という人はまずいないだろう。ここらへんはあうんの呼吸で察知するらしいが外人にはほとんど無理だろう。

また、AMIGOと言えど、AMIGO ESPECIAL は日本でいう「恋人」と同じ効力を持つため、複数のAMIGO ESPECIAL を持つ事は不可能であり、またその関係を終らせるには「別れ」をしっかりとしなければならない。

数人のチカスに丁寧にその違いを説明してもらいながらも、あまりしっくりとこない。AMIGO ESPECIAL とはなんなのだろうか。。。

そして、AMIGO と、NOVIOの間に正式な「彼氏」らしき言葉が存在すればこの問題は片付くという結論を出してその「説明会」は終った。

情熱の国スペインと歌われている割には恋愛に対しての考え方が非常に真面目なことに驚いた。しかしローラは言った。真面目なのは女の子だけよ。気をつけなさい、 スペインの男、そしてラテン男はみんな HIJO PUTA(サン・オブ・ザ・ビッチ) よ。

〜ローラのHIJO PUTA話に続く〜

 

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