Kenny`s ウェブ・マガジン 特別増刊号, By ケン吉岡
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Hello!たまたまこのページにたどりついた人もいるかと思うンで、自己紹介しときます。ボクはカナダ・トロント在住のブルース・ハープ・プレイヤーのケン吉岡です。下の通りストーンズのトロント・コンサートに行ってきたぜイ!読んで下さい。
ケン吉岡の
ローリング・ストーンズ
"Sarsをぶっとばせコンサート"リヴュー
〜2003年7月30日、カナダはオンタリオ州トロントに45万人を集めた大コンサート、通称SARSストック 体験記
日本ではあまり話題になっていなかったのかもしれないけど、この夏7月30日の水曜日にトロントでローリング・ストーンズ他十数バンドが出演した大コンサートが開催された。先月くらいに観に行くことを宣言しといたのでここにレポートしときます。このイベントは春に発生したSars騒動による観光客の減少などで被害をうけたトロントのサーヴィス業を立ち直らせるべく挙行されたチャリティ・ショーだったんだけど、結果的には一日で45万人が集まり、天気も快晴、オルタモントの悲劇のような事故もなく大成功のうちに終わった。個人的にももちろんとても楽しんだ。11時間の長丁場だったから非常に疲れたけど。
事の起こりはと言うと、そもそもSarsに関する日本を含む各国での報道はとても大げさだったようで、しかも世界保健機関によるトロントへの渡航警告もあって観光客は激減した。実際トロントの住人はそれ程気にもしていなくてマスクしてる人なんかいないし、感染する確率なんて全体から見ると低いものだった。そりゃあ死者は出てたけど老人や病人だけだったし、大抵の患者は治ってた。俺もそのころは日本の家族や友人から心配するメールもらったりしてたけど。その後騒動はおさまったものの経済的なダメージから回復するため、トロントに縁のあるストーンズの連中を呼んでコンサートを開き再び世界に安全なトロントをアピールしようとなったわけだ。前にも書いたようにストーンズはいつもツアー前リハーサルをトロントの高校やら劇場やらでやっているしシークレット・ギグもここ。俺は94年以来3回すべてミスりました。それにキースはいまだにトロント裁判の時の恩も忘れていないようでトロント市民に特別な情があるみたい。ここ一週間くらい町中異様な盛り上がりをみせていた。新聞では毎日のようにミックの写真が一面に載ってたし、コンサートまであと何日ってカウントダウンまで出てたし。俺のバンド・メイツもみんな行くって言ってた。それにその他の出演者も豪華でAC/DC、ラッシュ(地元だからね)、ゲス・フー(これもカナディアン・バンド)、ブルー・ロデオ(地元じゃ人気あるんだな。)、これまた地元のジェフ・ヒーリーもサス・ジョーダンっていうモントリオールの女性シンガーのゲストで参加。噂によるとU2 とポール・マッカートニーまで飛び入りするって言ってたけどこれはデマでした。場所はトロントの北部にあるダウンズヴュー・パークッつうところで去年の夏ローマ法皇が来て大集会をやったこと以外はトロントの人にさえ全然知られていない(ちなみにその時は80万人集まったとのこと)。空軍基地の跡地で公園とは名ばかりの殺風景な空き地だったのだが。
当日の開始予定時刻は一時半。前の方に場所をとるのははじめからあきらめていたので朝早くでるのはやめた。徹夜する程若くないし、、(何でもストーンズの粋なはからいで徹夜組みには朝食が差し入れされたらしい)。家を11時頃出てまず店で水とポテトチップを買う。今回持ち込み可能なものと禁止のものがはっきりと新聞に掲載された。警備の都合ではじめかなり厳しいルールが設けられたのだが主催者やファンからの猛烈な抗議の末あらためられる。それでも傘、イス、各種レコーダー、カメラ(使い捨ての物に限り許可される)、武器(当然だけどテロも警戒しなきゃね)、酒の持ち込みは禁止となる。しかしカナダの土地柄かマxファナに関しては黙認すると警察のコメントがはっきり月曜日の新聞の特別折り込みコンサート・ガイドに出る。まあ普段警察だろうが教師だろうが大抵は、、うむ、言及は避けておこう。チケットを取ってくれた友人のルイスとエグリントン・ウエスト駅のプラットフォームで12時に待ち合わせする。彼はアルゼンチン出身のロック・ファンでもう8年くらいのつきあいになり、よく俺のギグにも来てくれる。ちなみにチケットは$21.5と安い。席はなく場所は自由。それにしても地下鉄が駅に止まる度にひと目でコンサートにいくんだなとわかる人たちがぞろぞろと乗り込んでくるので嫌が応にも気分が盛り上がってくる。そしてダウンズヴュー駅で降りて目的地まで歩くが早くも長蛇の列、ゲートでチェックを受けるまで一時間近くかかる。中に入ってからフード・スタンドが並ぶ通路を通りしばらく進む。この日の終わりにはそのあたりまで人でいっぱいだったようだ。
Juno(カナダ版グラミー賞)の新人賞かなんかを取ったサム・ロバーツっていうモントリオールの若手ロッカーがすでに演奏中。なるべく前に行ってみる。巨大なステージの屋根は見えるがステ−ジ上の人間はほとんど見えない!とりあえずビールでも飲もうということになったがビール券を買うのにもそうとう待たなければならないようのでこれまたあきらめる。エムシーはブルース・ブラザーズで有名なオタワ出身のダン・エイクロイド。ジョン・ベルーシの弟のジム・ブルーシと今日のオープニングをやったようだがミスる。彼が次に紹介したのはキャサリン・エドワーズていうアルバータ州出身のカントリー/ロック・シンガー。彼女は来月トロントでのブルー・ロディオのコンサートのオープナーとのこと。あまり印象なかったので書くことがない。ルイスが腹が減ったというので、フード・スタンドにもどりビーフ・サンドイッチ($6)を買いまずは腹ごしらえ。その間ケベックのバンドが出ていたが見逃す。この後これ以外に口にするものはポテトチップスと水だけになるのだった。ステージに接近するのはやめスクリーンが見えてなるべく音のバランスよく聞こえるところを探し芝生に座る。次にティー・パーティ。ボーカル/ギターのジェフ・マーティンとは何回かジャムったことがあるんだ。でも彼のバンド自体を見るのは初めて。中近東フレーズを取り入れたヘヴィ・ロック。ちょっとツェッペリンぽくて声はジム・モリソンかU2みたい名感じ。"Paint It Black"を一部やってた。続いてオクラホマのフレイミング・リップスとかいうバンドが出るが今ひとつ。セキュリティのはからいで水が無料でくばられたのでもらって飲む。気温は28度になるって聞いたからこの長丁場で脱水症状にならないようにしなければ。そしてジェフ・ヒーリーの登場と思いきやサス・ジョーダンが先に2曲歌った後3曲目だけ参加する。彼も興奮したようでいきなり立ち上がってギターを弾きまくってた。ベースがジョニー・デヴィル(来月、彼のCDに何曲かハープ吹く予定。)の友人でスタンっていうヤツ。後日ジョニーの話しによるとスタン君は自分達のセットが終わってからも一日中ずっとバックステージでプラプラしていてキースだとか誰だとかみんなと話したっていうからうらやましい限り。サス・ジョーダンのバンドの音はブラック・クロウズをポップにしたような感じ。今日どのバンドもそうだったけどミックスの調整に非常に手間取っていたような気がする。まあサウンド・チェックなしで何バンドも出てくるのだから多少はメをつぶるが。それにもちろん自分のいる場所的な問題や、さらに風もかなりの影響をおよぼすのだが。アイズリー・ブラザーズはよく知らなかったのだが、50年代から続いてるR&Bバンドというからちょっと期待してたけどチャカポコ・ファンクだった。「昼の部」をしめるのが地元の星ポップなルーツ・ロックのブルー・ロディオ。はじめに一曲ジム・カディが歌い、次に2曲グレッグ・キーラーが歌う。カディは相変わらずよく通るいい声をしていて昼の部ではナンバー1のシンガーだったと思う。キーボードのジェイムス・グレイとリード・ギタリストのボブ・イーガンはウチ(ジェイ・クラーク&ザ・ジョーンズ)の2枚目のCDにもゲスト参加している。しかしな、トロントは土地の起伏があまりなく真っ平で背伸びしても遠くの様子がよくわからないのだがそれでも見渡す限りすごい人の数で驚くばかり。今日の天気は抜群によくすでに首とうでが日に焼けている。後でシャワーを浴びるのにもつらい思いをすることは目に見えている。あまり細かく書くと先に進めないのでこんなもんで。
休憩時間トイレに行くのもひと苦労だ。なかなか前に進めないしトイレの近くにやっとのことでたどりついても人の山だし。俺のバンド・メイトのマイク・オグラディはラッキーなことにV.I.P.チケットを手に入れたので後で聞いた話によるとビールのアクセスもトイレも全く待たずにすんだらしい。で、俺らは何とか用を足している間に夜の部が始まる。ダン・エイクロイドとジム・ベルーシのバンドが再びオープニング。ハーモニカが聞こえたけどメンバーは誰なんだろうか?次にジャスティン・ティンバーレイクとかいうアイドル・グループ出の若者が登場。非常に場違いな感じがしていたが案の定ブーイング。ペット・ボトルを投げ付けられるのを後日テレビで見た。そこまでしなくてもいいのに。トイレから戻ってももとのスポットには当然帰れないのでもう一度人ごみをかき分け場所を探す。すると後方のスクリーンで日陰になっているところ運よく確保する。
次にゲス・フー。カナダではロック界の重鎮的存在。日本ではそれほど知られていないと思うけど、"American Woman"くらいは聴いたことがあるでしょ。俺もトロントに来た頃はそれしか知らなかった。しかもその曲はけっこう単調でつまらないのであまり気にしていなかったけど合衆国にライバル意識のあるカナダ人にとっては特別な意味が含まれた歌らしいことを知った。その後マイケル・セオドアやらジョニー・デヴィルやらとのギグの時にいつの間にか自分もゲス・フーの他のヒット曲をプレイしていたし。ラジオでもよくかかるけどわりとフォーキーなクラシック・ロックでいい曲が多い。何年か前トロントのGrossman`sっていうクラブのジャムにたまたまボーカリストのバートン・カミングスが現れもう少しで俺も一緒にジャムるところだったがそこにいたもうひとりのハーピストが譲ってくれなかった、なんてこともあった。とにかくGuess Whoが"American Woman","No Sugar Tonight"など往年のヒットを連発すると会場の雰囲気はガラっとかわり盛り上がってくる。元BTOのギタリストのランディ・バックマンが"Taking Care Of Business"を歌うとまわりの大観衆が一緒に歌い出し、するとほとんどバンドの音が聴こえなくなる。彼等もいい年でストーンズに次ぐがこちらはメンバー揃って腹がボテっとしていて、このそこらへんのバーにいるオヤジ的なルックスが親近感をそそるのか、大受けする。
続いてラッシュ。こちらもカナダのベテラン・ロッカー。メンバー3人ともトロントでは有名人だ。何故かステージ上に洗濯機が並べられ演奏中ずっと動いていた。俺はあまり彼等について詳しくないからわからないけど、何か意味があるんだろう。ギターの音がやや小さかった気がするが、たった3人で45万人を相手にしているってことはひとりあたり15万人か。俺のホームタウン鎌倉の人口がたしか17万だったからな。それぞれ個人が受ける重圧ははかりしれないものだろう。変拍子を随所に折り込んだ複雑な楽曲と3人のインタープレイは完璧でレコードそのもののように聞こえる。こちらも""Paint it black"を曲に挿入してたな。曲名は知らないけどよくラジオでかかる曲を数曲やってラッシュはステージを後にする。ここまでのアクトはすべて短いセットだったので大抵3、4曲だけしか演奏しなかった。ようやく日が暮れ始める。夏時間のトロントは日没が九時近いからね。一日が長いのだ。
ヘリコプターから写した会場の様子が時折スクリーンに。ルイスが言うにはビア・テントがすいているぞとのこと。オンタリオ州では屋外でアルコールを飲むことが禁止されているのだが、こういうイベントでは一部エリアが設けられその中でだけビールが売られる。今回のコンサートではビール会社モルソンがスポンサーになっているのでビールはモルソンに限られているのだろう。でもって、ルイスとビールを求めてさまようがさっきより混雑具合は悪化しているため無駄な努力に終わる。その代わりちゃっかり後方のビッグ・スクリーンの前にたちどまることに成功。すると今日の2番目の目玉とされるAC/DCのショーが始まった。これまたラジオでもよくかかるヒット曲を連発する。おそらくこういうフェステヴァルにでも来ない限りラッシュもAC/DCも見ることはなかったと思う。しかしだ。AC/DCのショーもよかったねえ。アンガス・ヤングとあのボーカルのオッサン(ブライアン・ジョンソンだっけ?)のコミカルなアクションは今日のベスト・アクト賞に匹敵する。観客の中の若い年齢層からは今日もっとも支持されていたバンドだろうけどオヤジ連中も盛り上がってたな。この頃興奮がピークに達したのか肩車に乗ったお姉さん方がおっぱいを出しまくり一段とデカい歓声があがる。カメラマンも調子にのったようであちらこちらめざとく見つけてスクリーンにアップで写したりして。コンサートっていいなとつくづく実感するのでした。アンガス・ヤングは例によって一枚ずつ脱ぎ始める。上着を脱いで、シャツを脱いで、最後にズボンをおろすとやっぱりパンツはカナダの国旗の模様でした。AC/DCのバンド編成は5人でセッティングもシンプルだったためミックスの調節が容易にできたみたい。今日のバンドの中でもっともバランスのよい音になっていた。途中でギターも取り替えなかったし。文字どおりシンプル・イズ・ベストと言える。45分くらいのセットだったがけっこう楽しめた。
そしてお待ちかね、我らがストーンズの登場だ。しかしそれまでわりと待たされる。さすがに一日の疲れもたまってきたし。とはいえしばらくガマンしているとやっとオープニング・ナンバーの"Start Me Up"が流れる。はじめに感じたことはまず音のミックスがヒドかったね。キース・リチャーズのギターがほとんど聴こえなかったしキーボードが大きすぎたし。後日聞いた話しによるとキースはメチャクチャ酔っ払っていたそうで実は自分のアンプのボリュームをあげていなかったらしい(よくある友人の友人はストーンズの誰それと知り合いだっていうヤツ。でも、トロントの人の中にはホントの場合がよくあるからな。あのチャーリーのドラム・テクのマイクのように。ついでにキースには22歳のガールフレンドがいて昼間から酒の量がすごいとか、ロン・ウッドは肺に病気を持っていて本当はタバコを禁止されているとか聞いたけど)。話がそれたがボーカルとチャーリー・ワッツのドラムだけははっきりとしていたのがせめてもの救い。それにしてもミック・ジャガー、彼は先日60歳の誕生日を迎えたばかりなのだが、超人的だ。そうとしかいいようがない。実際年令を聞かされなかったらまだ40代でも通るんじゃないのか。まあ顔のアップが画面に写るとますます増えた皺が目立つけど。ここ数年俺は、もう飛んだり跳ねたりしないでボ−カルだけに専念してくれれば十分だからと思っていた。だけどあの動きのためにドラッグも酒もやめて肉すら食わなくなって、からだを鍛えて、、。それが発声にも影響しているのは言うまでもない。ちょっと前に観たグレッグ・オールマンも、それからさっきのバートン・カミングスもラッシュのゲディ・リーも昔程の声量は明らかになくなっている。しかし驚くべきことに彼等よりさらに年上のミックは完全にボーカリストとしての力量を維持していたのだ。さすがにSticky Fingers,Exile on Main st.当時のゴスペル唱法的なシャウトやIt`s Only Rock`n Roll で聴かれる強引な歌いまくりSome Girls,Tatto Youでのファルセットのスゴみこそなくなったが、リズミックでスムーズなフレーズは一流の名を欲しいままにしている。キースがギターのグルーブ・マスターって言われるけどミックはボーカルのグルーブ・マスター。ブルース的なくずし方なんてますます磨きがかかっているではないか。何よりそんな分析なんて必要としない程単純にカッコいい。エネルギーのかたまりみたいに今でもよく動きまわり全身からパワーを発散している。それを生で確認できただけでも今日来た甲斐があるってものだ。俺がまだ学生の頃初めて観た"'Steel Wheels"のツアーのときより若返っているんじゃないのか、、。などと言ってるとだんだん興奮してくるのでこれくらいにしといて。つづいて"Brown Sugar"。そうですか、2曲目にそれできましたか。意表をつかれましたな。ボビー・キーズのサックス・ソロははじめ音がでかすぎ。ほぼレコードの通りに吹いていたが俺は大ファンだ。今回ホーン・セクションもバックアップ・シンガーもツアー・メンバーを皆連れてきていた。個人的な意見だけどダリル・ジョーンズを含めた5人プラス、ボビー・キーズとチャック・リーベルだけでもよかったのに。そして何曲かやるがまだキースのギターは小さいまま。画面で何やらジェスチャーを送っているところが見えたがモニター具合もおかしいのだろうか。そしてアコースティック・ギターに持ち替え"Ruby Tuesday"をやった。ロン・ウッドのスティール・ギターによるスライドもよかったし、ちょっと感動があったね。そして個人的には嬉しい"You Can`t Always Get What you Want"。エンディングのアップ・テンポになる部分はシャッフルでやっていたがこのアレンジは初めて聞いた。このころになってやっとバランスがよくなってきた。"Miss You"ではさっきのアイドル歌手ジャスティン・ティンバーレイクとやらが飛び入りするがミックと並ぶとかわいそうなくらいパフォーマーとしての表現力のなさをさらけ出してしまう。そりゃあ怪物と一緒だからな。ちょっとビビっておどおどしてた。まあよくがんばりましたと。そして次だ。メンバー紹介の後キーフが2曲歌う。はじめの曲。知らないけど新しい曲かな。おちついたR&Bチューンでとても気に入った。そして"Happy"。キースは随所に間をとったプレイをキメる(要するに座り込んだり手をあげたりしてその間何も弾かない)。まあむかしのマイルス・デイヴィスの言葉、空間(Silence)が音楽をつくるというのを実践しているのでしょう(?)。そして"Rock Me Baby"をやるが何とアンガス・ヤングとその兄貴が飛び入り。話には聞いていたがとても小さい。でもパワーはストーンズにも負けていなかったよ。ギター・ソロになると全開で弾きまくるのでした。曲が終わると敬意を表してキースとアンガスががっちりHugしていた。まるで子供がじいさんと抱き合っているみたい。こういう恐らく日本ではタイプの違うミュージシャンと思われているもの同志の交流をみると何かそこ知れぬ大らかさを感じるね。"Honky Tonk Women"ではヌードの女が例のベロ・マークにまたがりロデオのアクションをしているアニメーションがスクリーンに流れる。今ヨーロッパ・ツアーの合間にトロントに来ているらしいからね。ツアーで使ってるんだろう。あとは"It`s Only Rock`n Roll","Satisfaction"とお決まりのパターンで終わり。アンコールは"Junping Jack Flash"。ミックはTORONTOという文字の入ったベロ・マークのシャツを着てあらわれる。ロン・ウッドはこの曲のオリジナルにある高音で絡んでくるリフを再現するようにかわったギターを使っていた。エレクトリック・バンジョーみたいな小さいヤツ。なんていうんだろ?改井、見てたら教えてくれ。わかっちゃいるけど引き込まれる毎度おなじみのエンディングで1時間強のショーはこれにて終了。11時間にも及ぶ豪華絢爛大ロック・エクストラバガンザはお開きとなったのである。
会場を去ろうとするとその途中花火が打ち上げられ夏祭りにもう一花そえる。余韻にひたるのもつかの間再び駅は大混雑で、俺らはいくつかの駅分歩くことにした。途中早速印刷されたトロント・スター紙翌日号がSouvenir Edition(お土産版)と題され無料で配られていたので一部もらう。一面にはヘリコプターから撮影されたコンサート会場の全体写真。物凄い数の人。歴史に残るイベントに参加した(残念ながら観ただけだけど)充実感が込み上げてくる。新聞には「このコンサートはトロントを再び世界地図に載せた」と書かれている。満ちあふれる興奮と同時に平和的な空気に包まれたコンサートであった。1969年に起きた悪名高きオルタモントの悲劇がいまだに語られるストーンズの連中が愛と平和の祭典ウッドストックの再現とも言える野外大フェスティバルの成功に貢献したのである。これは連邦政府、州政府のバックアップ(そもそもはじめにアイデアを出したのは自由党の議員だった)、警備にあたった警察、看護にあたったパラメディックスの協力なしでは実現しなかっただろう。コンサートの収益金はSarsの被害を受けたサーヴィス業、医療機関に寄付される。Sarsに病んだひとつ時期に終止符が打たれたと記しておこう。
疲れた。腹も減った。しかし長い一日は家にたどりつくまでは終わらない。
2003年8月