『なによ、うるさいわね!』


『なんだよ、このブス!』




「まーたやってる。」

「もう毎朝の恒例行事だよな」

「そうそう。ユウタとエリコの夫婦喧嘩」

『『誰が夫婦だって!』』



「(おい、来たぞ)」




ガラガラ・・・と音を立てて引き戸が開いた。

担任の堺だ。




「まーた夫婦漫才か。朝から元気だよなァ・・おまえら。
 先生は朝早いのニガテなんだよ。どうしたらそんなに元気でいられるんだ?
 ひとつ、ヒケツを教えてくれよ。なぁユウタ。やっぱり愛のパワーってやつか?」




教室中から、押し殺した笑い声が聞こえる。




当のふたりは、何かを言いたそうな顔をして黙っていた。

一度だけ目が合ったが、首が捻れ飛ばんばかりの勢いでお互い顔をそらしてしまった。




それっきりだった。





次へ