ブラウン管を飾った探偵たち

 ここでは様々な事象を、私が独断と偏見でランキングさせていただきます。今回はとりあえず、幼少の頃から楽しませていただいた探偵たちを紹介します。
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1. 古畑任三郎警部補 (演者) 田村正和

『古畑任三郎』

脚本:三谷幸喜

 三谷氏自身が公言しているように、『刑事コロンボ』の日本語版である。しかし、単なるモノマネではなく、明らかに本家を質で上回っている。その要因は、主に以下の2点にある。
(1)放送時間が短い:本家が2時間作品(正味90分)であるのに対し、『古畑..』の放送時間はスペシャルを覗いては1時間(正味40分強)であった。そのおかげで非常にテンポがよく、無駄な場面が少ない。番組前半の伏線を忘れてしまわない内に、種明かしをしてくれるのがいい。また三谷氏が舞台出身であるためか、限定された場所(劇場・新幹線・放送局など)から一歩も出ずに事件を解決することが多く、視聴者が混乱する危険も少ない。
(2)コメディー色が強い:意外な展開や巧妙なトリックは探偵ものの大きな魅力だが、ドラマである以上、登場人物の魅力など、見ていて単純に楽しめる要素が必須である。その点、およそ刑事にはふさわしくない今泉巡査(西村雅彦)と、普段はからかっているが、困ったときには今泉を本気で心配している古畑のコンビが実にいい。正直、『古畑..』には本格推理にはほど遠い回も幾つかあるが、西村氏の突き抜けた演技に救われている。

ベスト作品:汚れた王将 ... 犯人は何としてでも「竜人戦」に勝つために、殺人に至ったにも関わらず、その犯行が原因で結局「勝負」できなくなるストーリーが哀しい。しかもその振る舞から、古畑が決定的な物証を見いだす過程が素晴らしい。この作品は、将棋関係者から細々した不備を批判されたそうだが、そんな枝葉のミスの何百倍も面白い。

2. コロンボ警部補 (演者) ピーター・フォーク (声優) 小池朝雄・石田太郎

『刑事コロンボ』

脚本:作品によっ
 て異なります。

 倒叙物の面白さを一般的にした、重要な作品である。基本的に犯人が主役であり、犯人の状況説明からはじまり、犯行に及ぶまでのかなりの時間、探偵役のコロンボは登場しない。しかし、コロンボが事件の関係者への事情聴取のため、"犯人"の前に一度現れると、執拗に犯人を追い回し、次第に生じるほころびから決定的な事実を見つけて、追いつめる物語である。この作品の最大の魅力は、状況証拠しか得られない場合に、コロンボが犯人を巧みにだまして、自白や物証を引き出す点だろう。このだましが本当に巧みな回は、はじめから犯人が分かっているにもかかわらず、最後の最後に視聴者をあっと言わせる。
 だが惜しむらくは、多少単調な展開が多く、時にはそれがラストまで続いてしまうことである。作品によって、当たりはずれがハッキリしている。だがこれは、ノベライズ版では改善されている。小説版では、犯人の心理や背景がより詳細に記述されているので、コロンボとの対決がより小気味よい。中学生の時に図書館に通い詰め、取り憑かれたように読破したのが懐かしい。

ベスト作品:ロンドンの傘 ... 中学生の時にあのラストを見て、鳥肌が立った。

3. 柴田純 主任・警部補 (演者) 中谷美紀

『ケイゾク』

脚本:西荻弓絵

 これほど、 登場人物が風変わりで、魅力的な刑事物は後にも先にもないなのではないか。秀才で推理力抜群だが、子供っぽく風呂嫌いで方向音痴な柴田。一見無気力だが、暗い過去を背負い、妹の敵に凶暴な殺意と憎悪を秘めた真山(渡部篤郎)。定年間近でことなかれ主義に徹しているようだが、いざという時には芯が強く、実は女子高生の彼女がいる野々村係長(竜雷太)。この3人の怪演が、とにかく素晴らしい。TVシリーズの前半は、探偵ものとして質が高い。必ずしも、視聴者に考える時間を十分与えているとはいえないが、「私、犯人わかっちゃいました」というあっけらかんとした決め台詞に至る展開はテンポよく、飽きさせない。
 惜しむらくは、TVシリーズ後半・スペシャル・映画が、ミステリーというよりオカルトになってしまい、あまりに説明が不足になり過ぎたことである。無論、朝倉を軸に展開するサイコミステリーのおどろおどろしさは面白かった。しかし次第に、雰囲気や中途半端な死生観に重きがおかれすぎて、楽しめる作品でも、共感できる作品でもなくなってしまった。

ベスト作品:『泊まると必ず死ぬ部屋』

4. モース主任警部 (演者) ジョン・ソウ (声優) 横内正

『主任警部モース』

原作・原案:   
コリン・デクスター

 主人公のモースは、オックスフォード大出身で、古典音楽・文学・絵画に造詣が深く、クロスワードパズルが趣味というインテリ。一方で、事件関係者の女性宅に夜遅く訪れては話し込む、下心見え見えの独身男でもある。無類のアルコール好きでもあり、バーばかりか、事情聴取先や被害者の家でも、アルコ−ルを口にする。作品全体を通して、アルコールの出現頻度が高く、モース以外の登場人物もよく飲んでいる。また舞台がオックスフォードということもあり、研究者・教育者が数多く出てきて一見アガデミックなのだが、ほぼ例外なく下半身がだらしなく、色恋沙汰が事件に絡んでくる。不思議なことに、不完全な人間が行き交うこの作品が醸し出す雰囲気は、とても心地よい。正味1時間40分の作品も決して長く感じない。だが正直、この作品は全く本格推理ではない。視聴者に提供されていない事実が、後半5分ほどで飛び出して、意外な犯人が明らかになるのもしばしばである。それでも刑事物と割り切ると、この作品は十二分に楽しめる。横内正の美声が格調を高めるのに大きく貢献している。
 原作のコリン・デクスターがヒッチコックのように作品中にチョイ役で出没していたり、オープニンの音楽がモースにかけてモールス信号になっているとは、メーキングを見るまで気づかなかった。

ベスト作品:森を抜ける道

5. 江戸川コナン (声優) 高山みなみ

『名探偵コナン』

原作:青山剛昌

 週刊少年サンデーの大人気コミックのアニメ。もし、アニメと馬鹿にしてこの作品を全く見ていない人がいるとしたら、あまりにもったいない。「高校生の天才探偵が、裏の組織に注射された毒薬によって、小学生になってしまう」という、確かに漫画ならではの荒唐無稽な設定は見受けられる。だが、探偵が偶然事件に出くわしすぎるなど、多少のご都合主義はいたしかたない。ドキュメンタリーではなく娯楽作品なのだから、面白みを増す都合主義はむしろ歓迎すべきである。
 コミックもそうだが、毎週毎週一定以上の質の作品を欠かさず提供できるのは凄いことだと思う。正直、作品1つ1つのレベルがもの凄く高いわけというわけではないが、機知に富んだトリックにも多く、ミステリーへの入門としてはかなり良質である。気になる点があるとすれば、しばしば論理展開が強引すぎたり、動機説明が希薄すぎることかもしれない。

6. エルキュール・ポワロ (演者) デビッド・スーシェ [David Schie] (声優) 熊倉一雄

『名探偵ポワロ』

Poirot

原作:アガサ・
  クリスティ

 あまりにも有名な、ミステリー界の巨匠・クリスティー女史の代表作である。このドラマではとにかく、ポワロになりきっているデビッド・スーシェのメイクと演技が素晴らしい。ポワロはこれまでも、幾度か映像化されているが、今までのポワロは小男というより巨漢が多く、知的なイメージが正直不足していた。しかしスーシェのポワロは、小説からそのまま抜け出てきたようで、演技であることをしばしば忘れてしまう。
 また随所に映し出される内装や、家具・調度品が実に美しく、アンティークがまだ新品だった頃の華やかさに満ちている。惚れっぽく、車とクリケットが好きなヘイスティング、事務の鬼のミス・レモン、対立もするが良き友人であるジャップ警部と脇役も充実している。惜しむらくは、ミステリーの古典であるストーリーに新鮮みをそれ程感じない点である。トリックの素晴らしさを痛感する回もあるが、視聴者の推理を許さない展開が多いのはいただけない。

7. ジェシカ・フレッチャー (演者) アンジェラ・ランズベリー [Angela Lansbury] (声優) 森光子

『ジェシカおばさんの事件簿』

Murder, She Wrote

脚本:作品によっ
 て異なります。

 片田舎に住む女流ミステリー作家ジェシカが、身の回りでおきる殺人事件を解決する物語。この作品の魅力は、何といっても展開のスピード感である。正直言って、事件が起きる背景もありきたりだし、伏線が緻密にひかれている訳でもないのだが、事件の勃発から捜査・解決に至る話し運びがあまりにテンポよく、余計なことを考える前にエンディングを迎えるのである。放送時間が正味45分と短いのも一因なのだが、このテンポの良さは同じ尺の番組と比較しても群を抜いている。副作用として、その内容は殆ど記憶に残らず、しばらくすると誰が犯人だったかすら忘れてしまう。しかしそのおかげで、再放送を何度見てもそ楽しめたりする。

8. 山田奈緒子 (演者) 仲間由紀恵

『TRICK』

脚本:蒔田光治
   林誠人 

 売れないマジシャン・山田奈緒子と、秀才のはずがすぐに騙される物理学者・上田次郎(阿部寛)が、霊能力・超能力者のネタばらしに奔走する物語。この番組の最大の魅力は、"貧乳"山田と"巨根"上田の掛合なのだが、毎回提示される数々の超常現象とそれを種明かしする過程が、良質のミステリーとなっている。常に「犯人」が冒頭から明示されている意味では倒叙物である。毎回複数のトリックが登場するので、その点では通常のミステリー作品より楽しい。

ベスト作品:第6・7話 ... とにかく第6話が怖かった。

9. 金田一 一 (演者) 堂本剛 / (声優) 松野太紀

『金田一少年の事件簿』

原作:天樹征丸
  金成陽三郎
 さとうふみや

 週間マガジンに連載されたコミックのドラマ化・アニメ化された作品。探偵が一見風采があがらない所や、おどろおどろしさが漂う事件の雰囲気は、元ネタとなった横溝正史作品をうまく受け継いでいる。漫画でありながら、古き良き推理小説の世界をよく再現している。21世紀になって配役が変更されて実写ドラマが再開されたが、堂本剛の好演が頭に残っていて、いまいちピンとこない。

10. シャーロック・ホームズ (演者) ジェレミー・ブレット [Jeremy Brett] (声優) 露口茂

『シャーロック・ 
 ホームズの冒険』

Adventures of 
Sherlock Holmes

原作:コナン・ドイル

「探偵」=「シャーロック・ホームズ」と言われる古典をドラマ化し、「シャーロック・ホームズ」=「ジェレミー・ブレッド」という、新定番を確立した作品。とにかく若い頃のブレットは、顔立ちも動きもシャープで、鋭敏で神経質な「ホームズ」のイメージにピッタリだった。シリーズ後半、少し老いて太ってしまったのが残念だが、その演技は「ホームズ」を見事に具現化していた。吹き替えでは「太陽にほえろ」の山さんが声を担当し、見事に演じきっているのも、探偵モノのファンとしては嬉しい。

ベスト作品:赤毛連盟 .. 小学生の時に読んだこの短編は衝撃的だった。科学的にはありえないとか、低レベルのいちゃもんをつける輩もいるが、ミステリー史に残る名作と言っていい。

11. 桐子カヲル (演者) 財前直見

『QUIZ』

原作:相内美生
   飯野陽子
   関えり香

 幼児誘拐の顛末を1クールかけてじっくり描いた秀作。犯人からの要求が、全て平仮名のメールで届き、しかも全てクイズ形式なっているのが新鮮だった。平行して描かれる隣人の家庭事情も複雑で、何が正常で何が異常なのか混乱してしまう。最終回に明かされる犯人は、推理モノとしてはルール違反だが、制作者たちの言わんとすることには共感できた。

12. 沙庄妙子 (演者) 浅野温子

『沙粧妙子 最後の事件』

脚本:飯田譲治

 異常な犯罪が連発する刑事物。推理モノというよりオカルト作品に近かったが、日本ではプロファイリングの概念が流布して間もなかった当時としては、とても新鮮だった。サイコミステリーとしては、「羊たちの沈黙」よりも楽しめた。

13. クリーガン警部 (演者) ロブソン・グリ−ン (声優) 森田順平

『捜査官クリーガン』

Touching Evil

脚本:作品によっ
 て異なります。

 異常な犯罪が連発する刑事物。これ程、破滅的な作品も珍しい。犯罪を取り締まる側の警官達が、罪を犯したり、犯人と肉体関係をもったりと、頻繁に犯罪に関係していく。主人公のクリーガンも、かつて死にかけた体験にしばられていて、死を美化する犯人との接触で心が乱されてしまう。また、新しい男と暮らしはじめた別居中の妻子を頻繁に会いに行く関係も複雑である。妻と男の関係が危なくなると積極的に仲直りさせるにも関わらず、妻がその男の子供を身ごもると落ち込んでしまう。実際にこんな問題だらけの警察が存在したら、とても安心して生活できない。

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廣田 忠雄 @ 生物.理学科.国際基督教大学