宝塚がやってきた

 

彼女たちにはじめてあったのは鶴見新世界という劇場でした。
 当時はやっていたサタデーナイトフィーバーのジョントラボルタそのままの純白のスーツに花形ミツルヘアーで現れたオネエサンはどう贔屓目にみてもマトモなひとではありませんでした。
 まるで宝塚のパンフレットから抜け出したような(顔は別として)そのスタイルはほかの踊り子たちと比べても明らかに異様で、連れ合いのオネエサン(というよりおばさんだけど)も茶髪にフリフリのドレスを普段着として着用しており、その存在性のすごさに拍車をかけていました。
 この2人は典型的なレズビアンショーをウリにしていました。
ただ、2人とも当時三十台半ばを過ぎており、普段はそれぞれピンで舞台にたっていたようです。
 どうしてもレズビアンショーなどの看板になりうるショーはギャラ的にも高価になりますので、相当余裕のある劇場か、個人的につきあいでもないと彼女達のようにトウの立ったタレントはどうしても敬遠されがちになります。

 ショーの中身はやっぱり不思議なもので、主に郷ひろみの曲(リンゴ殺人事件とか僕たち男の子とか)を中心に組まれていて絡みの曲には突然、エリーゼのためにが鳴り響くという奇怪なものでした。
 1曲目を強引にセーラー服をきたオバサンが郷ひろみのヘヘヘイ〜ヘヘヘイ〜にあわせてゴーゴー(そうとしかいいようがない)を踊り、2曲目のリンゴ殺人事件にのって学生服に身を固めた花形ミツルが現れ、手に手を取ってベッドインされた日には客席は笑うに笑えず(恐くて)、もうどうにでもしてくれという虚脱感につつまれます。
 しかも何故か花形ミツルは学生服の下にはサラシを締め込んでいて、スケスケのスキャンティまではいています。
 エリーゼのためにのピアノにあわせて巻いていたサラシをじょじょにほどき、セーラーオバサンの首を絞め始めたころには客席は不条理とシュールリアリズムの嵐がふきあれ、大半のオジサンたちはあまりのことに失神(居眠りとも言うか)してしまいました。
 結局全ての愚民どもをあざ笑うかのようにストーリー(??)部分が終了すると、サービス精神おう盛なこのオネエサンたちは、ラストを2人揃っての放尿か、(客の目の前に金魚鉢を2個並べて、そこへならんでオシッコをする、金魚鉢のなかにはあらかじめ染料がしこまれていて、オシッコがはいると目にも鮮やかな緑色になる<それじゃ、病人だって!>)花電車(ストリップ入門参照、彼女たちがやるのはバナナの輪切り、しかもそれを客に食わせる。食わせるほうもだが、そんなモン食うやつも食うやつだ。ションベンが緑色の女のマンコできったバナナなんて食うなよな)で幕を閉じます。

一体どこのどいつがかくも不条理なワセショウも真っ青なショーを作ったのでしょうか。

仲良くなってからそれとなく聞いてみたら、金色夜叉をベースにしたものだと判明しました。でも其れだけだと弱いので阿部定的な要素も加味してあるとのことでした。(ど、どこが、、

この2人は本レズで日常も大の仲良しさんでした。
 かれこれ学生(高校だって)のころから付き合っているというからヘタをすると20年位一緒にいることになります。
 ただ彼女等のスゴイところはソンナモンへるもんじゃないんだからと一切の隠し立てナシで町内会の集まりなんかもそのままのスタンスで向かっていることです。
 とくに花形ミツルのほうは不必要なまでに明るい女性(ヤカマシイともいう)でしたから近所でも人気がたかく、町内会主催の盆踊りなんかでは花形スターだということでした。ですから地元の劇場にのると近所のオバサンたちが差し入れもって楽屋に遊びに来てしまい、迷惑がかかるので(そりゃ、そうだ、ソンナとこ警察にあげられたらとんでもないことになるよ)近場は廻れないのが目下の悩みだといっていました。

大分たってから一度ショーの構成とかを頼まれて、花形ミツルに白衣を着せて医者にしたて、茶髪のオバサンを分娩台に縛りつけて、悪戯するっていうのを作ったことが在るんですが、結局<フランケンシュタイン>とか、<死霊のはらわた>とかの仲間になってしまいました。でもどうみても、そっちのほうが面白かったからそのままにしておきましたが。

カゼのウワサでは神奈川のはずれの劇場で花形ミツルが社長をやっているらしいとまでは聞いたことが在りますが、其れも随分前のことになります。
 以前警察に捕まったとき猥褻物陳列罪じゃなくて、幇助を取られてしまった(通常、幇助はシロクロの男優か、照明マンに対する罪状で女性がこれに問われるのはかなり異常なことなんです)花形ミツル。
 長い間にそのことをネに持っていて、交番の前を通るたびにお巡りさんに
「オラァ、男か女かどっちかわかるかい!?」
などと絡んで若いお巡りさんをびびらせていたミツルさん、今も御元気で御過ごしでしょうか?
貴女の健康と御二人のしあわせをいのりつつ、この章を閉じようと思います。

 

さて、ここで一度お休みを貰って、今度は異形のタレントシリーズを書いてみようと思っています。のんびりと御待ち下さい。

 

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