Halloween‐‐‐Oct.31th,1999 |
テキサスでの最後のハロウィンは、多忙の為、何もしないまま静かに終わった。今まで、色々なパーティーへ行ったけど、ハロウィンの大騒ぎは格別なので、とても残念だった。アメリカ人のパーティーは、どこへ行ってもあまり面白いと思わないし、どちらかと言うと遠慮してしまうが、いつもこの日だけは、待ち遠しかった。只でさえ羽目の外れた奴らが、更にバカをやる。普段は真面目な大人達も、ここぞとばかり表に出てくる。 2年前は、自分にとって特別な年だった。私生活のストレスに、学校でのハードワークが追い討ちをかけて、倒れてしまった。腎臓結石、胃潰瘍、おまけに水疱瘡だと医者に言われた。嘘の様だが、実際2ヵ月間熱が下がらず、タバコと酒も禁じられた。特に普段何をするわけでもなく、たまに暇になると、外に飲みに出るのだけが楽しみだったので、逆にストレスが溜まった。その年のハロウィンの前日に、胃カメラの検査を受けた後、やっと医者に酒タバコ解禁を告げられた。 その年は、パットにオースティンでのハロウィン・パーティーに誘われていた。医者の許可がなくても行ってただろうけど、許可が出た事で、より開放的な気分だった。飲みに出るのも2ヵ月ぶり、しかも初めてオースティンでの仮装パーティーに参加できると云う事で、最高の復帰祝いだった。オースティンは、テキサスで一番好きな街。自分の住んでる所が学生ばかりの街なので、大きな街で色々な人と知り会えるのは、いつも刺激的だった。 オースティンのジュリーの家で、僕らは仮装して、6thStreetへ繰り出した。パットはシンプソンズの黄色い奴(?)、ジュリーは猫(?)、病み上がりで何も考えてなかった自分は、胃カメラで撮った自分の胃の写真を腹にガムテープで貼り付けただけだった。でも何故かパーティーでは、3人の中で一番ウケが良かった。 パーティーへ行くと何時もそうだが、パットもジュリーも自分の事で忙しくなってしまって、1人になってしまうことが多い。オースティンは、テキサスの中では比較的開放的な人達が集まってるせいか、あちらから話し掛けてくれる場合が多いのだが、その日は、アメリカ海軍のゲイ集団にナンパされたり、逆に危険な目にも会った。 ふと、1人で物思いにふける、気だるそうなインド人(?)の女の人と目が合った。目つきが鋭かったが、話しかけてみると、機関銃の様に話し出した。僕が仮装だと思ってた妊婦の格好は、どうやら本物のようで、父親が誰だか分からないとか、せかっくのパーティーで酒も飲めないとか、愚痴をこぼしていた。パットとジュリーの知人らしく、その2人も交えて、結局4人でずっと喋っていた。遊び人らしく、話題は豊富の様だった。その場の空気にも飽きてきた頃、僕らはクラブへ行く事になったが、彼女はお腹の子供が居るから踊れないと、寂しげな顔をして去って行った。 再び街へ出て、他の店で飲み始めた。もちろん客もバーテンも皆仮装している。病み上がりのせいか、それとも2ヵ月の禁酒生活の後遺症か、ショット3杯くらいで目に来た。それとも前日の全身麻酔がまだ抜けきってないのだろうか、視界が歪んだ。仮装した人々も、オースティンの風景と共に溶けてゆく。でもどうせ、その時そこには、まともな人間なんて居やしなかったのだろう。 |
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