I Wish 〜とどけ、この想い〜 jANIS |
ファンタジックなRPGは根強い人気があります。その独特の世界観、アイテム収集、敵とのバトル、レベル上げの苦しさと楽しさ・・・などが理由として主にあげられるでしょう。これらを満たしてくれるゲームが、一般的に望まれているかとおもいます。ただしそのような要素をゲームに取り入れたからといって「それって面白い?」と問われたら、もちろん答えは「NO」。そういった諸要素はあくまでゲームを特色づけている形式そのものにすぎません。既存の形式をつくり手が独自に特徴化し、脚本とあわせることで、はじめて効果的な演出が可能となるのです。 さて「I wish」も、アイテム売買、あるいはイベントやバトルをRPG風につくりこんでいるわけですがそれは徒労におわっています。魅力を感じない最大の原因は、つくりこみの甘さ。この一点に集約されるでしょう。本作をイメージで喩えてみれば、一見こぎれいな家だけれども実はお粗末な撮影用セットで、最小限の骨組みだけで立ててるから風が吹けばぺったんこ。そんな感じです。このゲームを作った方も、それは否定できないように思います。 内容をかけあしで紹介します。主人公と幼なじみが若気の至りというやつで、冒険の旅に出発しようとします。が、考えたら目的がないってことで、何でも願いをかなえてくれるレフィースと呼ばれるものを「とりあえず」探すことになり、その旅の途中で仲間も加わってきて、てきとうに冒険をするというおはなしです。旅の目的に切迫感が無く、プレイしていてあまり引き込まれるものが正直ありませんでした。 ほかにいくつか目立った、甘い点を挙げます。まず人物造形ですが、幼なじみの精霊使い、性格が男勝りの戦士、内向的な学者、家出少女、獣人の猫娘。(例外的におまけの獣人の若者。やおい系の展開もありますが)。完璧といってよいほどの、典型的なキャラ設定ですね。キャラクターはみんなわりと低年齢なのですが、その会話はオトナが一方的に考えた「子供」の型通りのもので、型紙で抜かれたように予想通りのリアクションを返しております。どうも薄気味悪さすら感じる始末で、非常につまらないものでした。いっそ、会話を省略した方がマシだと思える部分もありました。でてくる敵のイラストは使い回しだし、戦闘に関していうと、あまり悪役らしい悪役が出てこないためにレベル上げの必然性を感じません。一つだけ気になったのは、たぶん人手がないのでしょう、一人で何人もの男性のボイスを吹き込んでいたりして思わず涙が出てきました。でも男性の音声一致なんて些末なことだと思うほど、やっていて適当な作りが目につきました。やっつけ仕事なんて言葉がありますが、キャラの名前ぐらい間違えないでほしいものです。 まいど小姑のように言っているように、アドベンチャーやRPGにエロシーンを付けたら一丁上がり!、ではどうしようもありません。それでは、乱立するメーカーによって無菌室でオートマティックに濫造される、高価なゴミだとしか受けとめられない。多分そういうゲームはパッケージごと燃やしても、あたりさわりの無い素材で作られているので、ダイオキシンは発生しないでしょう。しかし欲されているのは燃やしたら大量のダイオキシンが発生するような、灰汁の強いゲームなのです。そして、そういう個性的なゲームソフトをエコロジカルにフォローすることがレビューを書くものの務めだと思います。それはソフトを選択する我々も同様ではないでしょうか。 |
夜が来る! Alicesoft |
アリスソフトがアドベンチャーをあまり出してこないのは、自社のゲームの作りにかなり自信があるのではないかと思っている。実際、やり始めてゲームの部分でつまらないと思ってやめたゲームが無いからそれはすごいことかもしれない。私はレビューを書くに当たっては、最後まで、つまりマルチエンドならすべてのシナリオを遊んでから書き始めるので、ここにあがっていないゲームでも結構遊んでいたりする。レビューにしていないのは最後まで遊んでいないからである。飽きっぽい性格であるから、シナリオやシステムに難があるとそのせいでやめてしまうことが多いのである。そう考えても、アリスのゲームはかなりレベルが高い。 このゲームに関しても、同じ事はいえる。特殊な能力を持つ者たちと、敵との戦い。そんなものはかなり語り尽くされたジャンルであるが、ゲーム的にかなり面白い仕上がりになっている。ダンジョンに潜って、レベルアップして、イベントをクリアしていく。それの繰り返しであるが、かなりいろいろと考えられている。主人公の武器や訓練の要素、合間合間に入ってくるキャラ同士の会話。色々と面白い要素を詰め込んで、それでいて、無理矢理という感じがしないのは、ゲームを作り慣れている証拠であろう。些細なことだが、キャラの書き方だって丁寧である。極端な癖や口癖、行動でキャラを定義するのは簡単で、さりげなく書くというのが一番難しい。一応それぞれのキャラに定型みたいなものはあっても、それを全面にあまり持ってきていないのがよい。あと、男性キャラの使い方がうまい。さすが女性向けのゲームを作っていると言うところか。だいたい、学園物で主人公以外の登場人物がほとんど女というのはおかしい。こいつは嫌われているのかと思ってしまう。学校での風景を書くなら、そういったところに気を使うべきである。そのあたり、きっちり男性キャラの会話も入れているのがいい。 ただ、難点といっては、シナリオが総じて薄いのである。なんだか、ダンジョンに潜っていたら終わりました。という感じでゲームが終わってしまう。キャラだけで作っているゲームは嫌いであるが、結構うまく動かせていたので、もう少しイベントが多ければ良かったと思う。 |
温泉DE卓球 STUDIO B-ROOM |
誰かが卓球のことを世界一地味なゲームと言っていた。経験者としてそれには全面的に賛成できないが、反面思わず頷いてしまうところもあったりするのである。素人のいわゆるピンポンではなく上級者のゲームなどを見ると、選手の動き、玉のスピード、スマッシュの豪快さ、こういったもので、地味な感じなんかは全くしなくなる。とはいってもやはり、恐ろしく狭い競技スペース、玉やラケットの小ささを考えると、スケールは小さいと感じてしまうのも無理はないと思う。実際、練習も体育館の隅で時折飛んで来るバレーやバスケのボールをかわしながらやっていたことを考えると、すごく納得してしまうのである。この経験者でさえも感じてしまう地味さ、こじんまりとした感じが、手軽さを生み、饅頭と温泉しかない温泉街での娯楽の筆頭にあげられる位置に卓球を押し進めたのである。 で、エロゲーのジャンルとして珍しいこの卓球というゲームは、こじんまりとしている点ではモニターのなかでやるのには適している。ゲームは九分割した画面にボールが来たところでキーを押す、という結構単純な作りになっている。ただ、敵キャラクターごとにいろいろと必殺技があり、レベルが高くなるとかなりの反射神経を必要とするなど、結構面白い。モードもシナリオモードだけでなく、延々と球を打ち返したりするものや、対戦モードなどもある。暇つぶしにちょうど良い感じの面白いゲームにHシーンがついているという感じのゲームである。ただ、人によっては結構苦戦するのではないであろうか。PC歴の長い、キーボードでゼビウスとかやっていた人には楽勝な気がするが。 |
フェロモン 〜走れエロス!愛のタイムリミット〜 Ciel |
主人公は女性を引きつけ変な気分にさせてしまうフェロモンを発する特異体質という設定からして、Hシーン主体のやるだけゲームであることがわかると思う。そのほぼやるだけという設定に対して、ただ単にアドベンチャーにしなかったのは正解だ。Hシーンを主体にしてしまうと、たいてい中身のないすかすかのシナリオになることが多いからである。 ただ、最近は変にシナリオに注文がつくから、作り手側もそれを意識してか、中途半端に他の路線に走ってしまうものが多い。Hシーンが売りなら、中途半端なシナリオをつけて、変に客層を広げると失敗する。方向性が違うのであるから、よほど構想力のある人がシナリオを練らないと、矛盾がでたり、話が飛んでめちゃくちゃになったりするものである。しっかり作れないのなら路線は絞らないといけない。エロならエロと割り切った方がいい。まあ、エロビデオとまではいかないが、そういう作りの方が作り手の売る部分がわかりやすくて良いような気がする。 このゲームにおいては、シナリオなんてまあいえば二の次という感じになっている。本筋であるヒロインとのシナリオはあるが、とってつけた感じのシナリオだ。だから先述したようにアドベンチャーだけにしなかったのは正解なのである。マップ上を移動して、目的地にいくという単純なゲームでも、Hシーンはどこにあるかというゲーム性が生じるからだ。全部一度に見ることはできないので、いろいろ考えながらゲームをすることができる。設定が設定だけに、Hシーンにも無理がない。 ただ、単純なものなので、すぐに飽きてしまうという事がある。あと、移動シーンが思った以上に簡単なのである。まあすぐHシーンが見ることができるのはいいことかもしれないが、もう少し複雑にしても良かったと思う。簡単に終わってしまうと、今度は紙芝居ゲームみたいだから。ユーザーは大枚をはたいて買うのであるから。そういった点は考えてほしい |