まず最初に、私は今回の事件(実際には事故ですが)は、中国の戦闘機のパイロットが衝突を避けられなかった事に一番の問題があったと思います。偵察機に比べたら圧倒的に運動性能が高い戦闘機に、回避行動を行う責任がより多くあったと思います。
一方、24人の偵察機の乗員が解放されたのは、アメリカが中国に謝ったからだと中国では報道されているようですが、これには疑問を感じます。今回の事件に対して、アメリカでは「Sorry」という単語を使っていますが、アメリカでは別に「I'm sorry.」といったところで必ずしも謝ったことにはなりません。たとえば、知り合いの身内に不幸があった場合、自分には全然関係なくても「I'm sorry.」と言います。この場合の「I'm sorry.」は「ご愁傷様」の意味になります。今回の事件でもアメリカが行方不明のパイロットに対して使った「sorry」は「ご愁傷様」の意味になるというのが常識だと思います。それを中国が自国の都合のいいように、「sorry」をお詫びの言葉として翻訳したことについて、アメリカでは議論の的になっています。ただしアメリカ政府は、中国があくまでもアメリカの謝罪を求める強硬な態度に出ていたために、アメリカの国民やマスコミから偵察機乗員の早期救出を求められても、事件の解決について有効な打開策が見つからず苦労していました。その結果、「sorry」の誤訳によって中国が自国の国民に対してメンツを保ちながら、結果的に偵察機乗員が解放されたことは、アメリカ政府とっても事件解決に向けて進展していることをアメリカ国民にアピールすることが出来たと思います。恐らくアメリカ政府の関係者は、この誤訳を計算した上で「sorry」という単語を使ったと思いますが・・・。
アメリカと中国にとっては、強力な軍隊を保持していくというのはとても重要な事です。そのため、この手の軍事がらみの事件が発生した場合、両国とも自国にとって有利な報道となるのは仕方がないと思います。
一方、中国がアメリカに対して今回強硬な態度を示したことで、今後アメリカは中国の軍隊をさらに敵対視することになると思います。その結果、アメリカと中国の間に位置する日本が、これからどんなポジションを取っていくのかという疑問の声がアメリカでも挙がっています。今までの日本は軍事活動については、あまり表だって議論してきませんでしたが、中国の軍隊がその存在をどんどん大きくしている以上、見て見ぬ振りは出来ないと思います。また、日本にはアメリカの軍事基地があるので、中国にとってみれば日本はアメリカの味方をしていると考えられても仕方がないと思います。