Charles Bukowski "Ham on Rye"


昔、「アメリカには文学が無い」とキザな事を言った人がいました。「文学」という言葉は曖昧なので、アメリカに文学があるかないかは私にはどうでも良いことですが、アメリカにも素晴らしい小説が沢山あるのは確かです。

友人が紹介してくれたチャールズ・ブコウスキーの「Ham on Rye」は、そんな素晴らしい小説の一つです。この作品は、Henry Chinaskiという主人公の誕生から20歳くらいまでをまるで自叙伝のように描いたものです。本当は繊細な主人公が、自分に正直であるがために、常に周りの連中と葛藤し、アウトサイダーとして生きていかざるをえなかった姿を描いています。また、チャールズ・ブコウスキーはお酒が大好きだった作家で、この小説でも若い時から大量に飲酒していたことが判ります。私はお酒をほとんど飲みませんし、学生の頃は優等生だった(と自分では思う)ので、この主人公とは正反対のはずなのですが、彼の生き方に共感を覚える部分が沢山ありました。

この小説には様々な価値観を持った人物が登場しますが、それを読みながら改めて自分自身の人生について考えさせられました。その意味で、この小説はただストーリーを読ませるような小説ではなく、人間について書かれた本物の小説だと言えます。

日本にいた時にはチャールズ・ブコウスキーの名前を知らなかったので、てっきり日本ではあまり知名度の無い作家だと思っていました。ところが、先日日本のベストラーのリストを見たら、「町でいちばんの美女」という文庫が入っていました。チャールズ・ブコウスキーの個性が多くの日本人にも理解されているんだなと思い、とても嬉しくなりました。


前のページに戻る
ホームページに戻る