ところがお店に行ったら「海辺のポーリーヌ」は貸し出し中でした。「ああ私のバカンスが遠のいていく〜」と少しショックでしたが、無いものは仕方が無いので他の映画を借りることにしました。そうしたら、まだ観たことがなかった「コックと泥棒、その妻と愛人」にピーンときてしまいました。病気で身体が弱っている時に、ピーター・グリーナウェイ監督の映画を観るのは無謀かなとちょっと思いましたが、私の直感を信じてそのまま借りて来ました。
ピーター・グリーナウェイ監督の映画では「プロスペローの本」が好きですが、人間の創造力で作られたとは思えないような映像が次々と画面に登場し、まさに「動く絵画」と言える作品でした。この映画は私が大好きなドイツの歌手ウテ・レンパーが出演しているというので観たのですが、想像を絶する映像の連続に圧倒されました。
「コックと泥棒、その妻と愛人」も他の作品と同様、計算し尽くされたような映像の美しさが圧倒的で、本当に動く芸術作品だと思います。ハリウッド最新の特撮映像とは別の意味で、画面から目が離せない映画でした。
この映画で私が一番に気に入ったのは、主人公の女性が自分の愛人が殺されているのを発見した後、夜が明けるまでそのそばで一緒に寝るというシーンでした。これはとても静かで美しいシーンでした。
結局、借りる前の心配をよそに、私はこの映画を観てかえって元気になりました。