その一方で、アメリカではワールドカップはほとんど話題になっていません。なぜアメリカではワールドカップの人気が無いのか? その理由について私の考えを書いてみたいと思います。
アメリカで人気があるスポーツと言えば、アメリカン・フットボール、野球、バスケットボール、それからアイスホッケーになります。今回のワールドカップが始まった当初は、バスケットボールとアイスホッケーのプロリーグの全米一を決める最終シリーズが行われていたので、スポーツニュースの話題もそちらがメインでした。そういう私も、ワールドカップよりもバスケットボールの試合を熱心に観ていました。
サッカーの試合観戦が人気が無い理由として、簡単に思いつくのは、なかなか点が入らない事です。アメリカと日本では13時間の時差があるために、日本で午後3時半に開始される試合は、アメリカでは午前2時半から中継されます。試合を観ようと午前2時半からTVの前に座っても、全然点が入らないと、途中で眠ってしまいます。(もしアメリカでワールドカップの人気があれば、試合開始を午前中にするようにアメリカのTV局やスポンサーが圧力を掛けていたと思いますが・・・) でも、点がなかなか入らないというのは、アイスホッケーも同じです。それでもアメリカではアイスホッケーの人気があります。(特に北部で) その理由は、上に挙げた4つのスポーツの中で、アイスホッケーが一番選手の動きが速いのと、特にプロのアイスホッケーでは、選手同士のぶつかり合いが激しくて、プロレスの要素も持っているためだと思います。サッカーの試合の魅力の一つは、一流選手の華麗なボールさばきだと思いますが、その点ではバスケットボールにはかないません。プロのバスケットボール選手の全身を使った華麗な動作は、一流のダンサーと同じくらい素晴らしいので。
私は、スポーツには「観る」スポーツと「プレイする」スポーツがあると思います。相撲は典型的な「観る」スポーツですし、ボーリングは「プレイする」スポーツです。アメリカでもサッカーというのは、プレイするスポーツとしては人気があります。でもそれがTV中継になると人気がありません。それはプロ・スポーツが発達しているアメリカにおいて、サッカーの試合は「観る」スポーツとして、観客に対するサービスが足りないからだと思います。ワールドカップのTV中継を観ていて一番困るのは、前半と後半のそれぞれプレー中は、全然コマーシャルが無いことです。他のスポーツであれば、コマーシャルが頻繁に入るので、観る側としても適度の息抜きできます。TVでのスポーツ観戦が娯楽の一つであるとすれば、途中で食べ物を準備したり、おトイレに行ったりする時間があった方が気楽に観戦できます。ということは、アメリカでサッカーのTV観戦の人気を高めるには、試合のルールを変更する必要がありますが、たぶん無理でしょう。また試合がいつ終了するのか、主審しか知らないというのも、欲求不満の元です。アメリカン・フットボールやバスケットボールの試合なら、最後の0.1秒まで観客は把握する事が可能なので、試合の終盤の攻防が戦略的になります。
日本では、普段Jリーグの試合はそんなに人気が無いのに、今回ワールドカップに熱狂しているというのは、いつもオリンピックに熱狂するのと同じ理由かも知れません。私が思うに、日本人は外国(特に欧米諸国)に対してコンプレックスを持っていて、オリンピックやワールドカップのように各国の選手がそれぞれの国旗を背負って闘うという大会は、もし日本の選手が勝てばそのコンプレックスを解消できるというのが人気の理由だと思います。それは50年以上戦争を経験しないで済んだ日本人にとって、戦争の代償行為と言えると思います。もしワールドカップに出場するような一流選手の素晴らしいプレーを観たいというのであれば、ヨーロッパのプロ・リーグの中継を観るのが一番いいと思いますが、実際はワールドカップほど人気がないと思います。たとえ日本で開催されるワールドカップといっても、あくまでもサッカーの大会なので、サッカーが好きな人達だけが観るというのが一番自然だと思うのですが。