Smash Hits - September 22, 1999号

The boy's own story



彼の人生の中で最も大変な3ヶ月間、スティーブン・ゲイトリーは沈黙を守った。しかしながら今、彼は全てを打ち明けることを決心し、スマッシュ・ヒッツのJordan Paramorに語った。



ロンドン、明るい太陽の照りつける日、スティーブンの肌は紅潮していた。ダブダブのグッチの黒いパンツ、デザイナーブランドのTシャツ、そしてごっついブーツといった出で立ちのスティーブンはスタジオに入るや否や、スマッシュ・ヒッツ読者からの手紙が入った大きな箱を見つけ、トレードマークのニッコリ笑顔を見せた。彼はさっそくその箱をかき回し、読み始めた。そして一つ一つ手紙を開ける度、ますますその顔は嬉しそうな表情を見せた。

このように幸せそうに読者からの手紙を読んでいるスティーブンを見ていると、この数ヶ月間が、彼の言葉で言うならば、「とっても感情的な時」だったことを忘れてしまう。誰かが彼のセクシュアリティに関する話を新聞社に売ろうとしていることが分かった時、スティーブンは一大決心をして世界に向かって自分がゲイであることを告げた。今でもスティーブンはその話を売ろうとしていた人が誰なのか知らないし、また知りたいとも思っていなかった。ただ、ひとつだけスティーブンが分かっていたことは、もし世間の人々が知ることになるのであれば、自分自身の口から人々に伝えたい、ということであった。それ故、スティーブンはThe Sun紙とのインタビューに同意した。

The Day In The Sun

−サン紙のインタビューに答えて、それが出る前の晩はどんな気分だった?(訳注:サン紙にSteoのカミング・アウトインタビューが掲載されたのは1999年6月16日)
(大きく息を吸う)Eloyと僕はミラノにいたんだ。で、次の日にそのインタビューが出るのは分かってたんだけど、どれくらい大きく扱われるのかは知らなかったんだ。だから僕たちはスカイ・ニュース(訳注:イギリスのニュースチャンネル)を見ていて、そしたら「次は明日の新聞コーナーです。」って、紹介された新聞の4紙の一面を飾ってたんだ!もう泣くべきなのか笑うべきなのか分からなくって、笑っちゃったよ。で、Eloyに(力なく手を振る)「こういう事になったみたいだね。みんなの反応がいいことを期待しようよ。」って言ったんだ。幸い全ての新聞がとっても好意的に書いてくれたよ。

−目が覚めて、全世界が知ってるんだっていうのはどういう感じだった?
それはねぇ、すごく、、、ヘン。すごく怖いっていうのもあったよ。その日はアムステルダムにいたんだけど(訳注:その日、彼らはミラノからアムステルダムに戻っている)、いろんな人からたっくさん電話を貰って、みんな「がんばれよ。おめでとう。」って言ってくれたんだ。スパイス・ガールズのヴィクトリア(ベッカム)も事務所に電話をくれて「スティーブンに心配しないように伝えて。全てが大丈夫だから。」って言ってくれたし、バックストリート・ボーイズからもメッセージをもらったよ。それから(目を丸くするスティーブン)シニード・オコーナーもメッセージをくれて「素晴らしい事だわ」って言ってくれたんだ。誰一人として僕をがっかりさせなかったよ。エルトン・ジョンと彼のボーイフレンドのディビッドからもお花を貰ったし、ジョージ・マイケルも電話してくれたし、それからグラハム・ノートンもステキな手紙をくれたよ。リリィー・サヴェージも電話をくれたし、ボーイ・ジョージもいい事を言ってくれた。すごくみんなにサポートされてるって感じたよ。そしてファンがみんな、ただただもう凄かった。

−どんな風に?
(読者からの手紙に目をやる)ファンからの手紙の入った大きな箱を未だにもらってるんだ。全部読もうとしてるところで、時間のあるときはいつでも読んでて、読みながら笑顔が絶えないよ。だってホントに素晴らしいんだ。すごく元気付けられる。例えばファンやファンの両親、若い子供たちからの手紙なんだけど。これ以上ないくらいの反応だよ。

−事が起こるまでの過程ではどうだった、怖かった?
(まゆをしかめて頷く)スッゴーーーく怖かったよ。ホントにホントに大変な事だったんだ。僕の家族や親しい友人たちは知ってたけど、ファンにとってはショックなことだし。でもファンたちが他の誰からでもなく、僕自身の口から聞いたことが僕はうれしいよ。僕は立ち向かわなくちゃいけなかったんだ。スッゴク感情的な時期だったよ。直ぐに落ち込んだり、喜んだり。笑ってたかと思えば、次の瞬間には泣いてたりして。そして常に「何がいったい起こってるんだ」って自問するんだ。でもEloyと僕はホントにホントに強くなって、お互いの側にいようって決めたんだ。

−で、それは出来た?
完全にね。Eloyにとっても大変なことだったんだ。特に彼のバンド(コート・イン・ディ・アクト)が人気のドイツとかでね。僕たちは二人一緒にカミング・アウトした方がいいって決めて、その後の数日間はホントに落ち込んだよ。みんなの反応がスッゴク怖かったんだ。でも「これを乗り越えなきゃいけない」って言って、で僕たちは乗り越えたんだ。

−他のボーイゾーンのメンバーはこの話が公になるって聞いてどう思ったの?
僕がゲイだってみんなに5年前に言ったんだけど、みんな「だからどうした?」って言ったんだ。今回のことに関してもそんな感じだったよ。みんなホントに素晴らしかったよ。ホントに。

スティーブンは自分がゲイだと言うことを10代前半から知っていた。それは本当に大変な時期だったと語る。そして同じような状況を経験する10代の若者たちが大勢いることも知っている。ある女の子からの手紙で、彼女の友達がゲイで、そのことによるイジメに耐えられなくて自殺したことを読んだスティーブンは本当にショックを受けていた。「ショックだね。」目をそらして彼は言った。「最悪だよ。」こうした偏見によってスティーブン、あるいは他の誰であっても、カミング・アウトするのに時間がかかるのは不思議ではない。

A Life Of Fear

−もっと前にゲイだって認めるのを躊躇させていたのはなに?
(考える)どうしても成功したいって思ってた時期だったんだ。残念なことに、人々はゲイだって分かると、ちょっと考えちゃうからね。僕はゼッタイ有名になるって決心してたし、人から色々思われたくなかったんだ。それから僕自身が自分のことについてよく分かってなかった時期だったし、以前にはこんな事とてもじゃないけど耐えられなかったよ。

−サン紙とのインタビューは避けられなかった?
あのインタビューがなくてもどっちにしろ記事になってたと思うんだよね。他のボーイゾーンのメンバーは結婚したり、子供を持ったり、で僕だけシングルだ。すごく心細かったし、「僕はどうしたらいい?みんなが噂し始める」って思ってたんだ。噂されつつあったし、いつその噂が流れたっておかしくなかったしね。

−いつか誰かに君がゲイだってばらされるんじゃないかって恐れてた?
うん。毎日だよ。ベッドで(大きく息を吸う)次の日の新聞に書かれてるんじゃないかって考えてナーバスになったりする夜もあったし。そんな風に生きるべきじゃないよね。精神的な本を一杯読んで、強くなったよ。うまく行きますようにって神様にも祈ったし。僕は今だって、以前と全く同じ人間なんだ。僕のパーソナリティは変わってないし、僕の外見だって。ただ僕はとっても気分がいいけどね。(ニッコリ笑う)もう心配しなくていいんだ。アタマをもたげていたものが全てなくなって、僕がどんなにホッとしてるか想像できないでしょ。

−でも誰かに暴露されるっていう恐れがなかったら、みんなに言うのはまだ待ってたかも?
(間をおく)分からないよ。もしかしたら最後の最後まで待ってたかもしれないね。でも今振り返ってみても、何も変えられないからね。

再び笑顔が戻った。スティーブンはただ幸せそうなだけではなく、今までになく幸せそうだ。それは愛のせいだろうか?彼が我々の探りをいれる質問に答えようとしたその時、スティーブンはベルによって救われた。誰かが彼の携帯を鳴らしている。スティーブンのニッコリ笑顔を見ればそれが誰だか分かる。
....Eloyだ。「うん、今インタビューしてるところ。」彼は心配するボーイフレンドに言う。「心配しないで。うまく行ってるから」二人は彼らの犬がどんな風に泳いでたかについて話すと、スティーブンがEloyに見せるために, 撮影した写真を家に持って帰る約束をして電話を切った。会話が終り、我々がスティーブンがどんなに嬉しそうな顔を電話の間中してたかを指摘すると、「ホントに?」と少し赤くなると、恥ずかしそうに言った。そして彼はボーイフレンドの写真を取り出し我々に見せると、我々がEloyの完璧な顔立ちを繁々と見るのを自慢げに眺めていた。我々の質問の答えは出た。スティーブンは恋をしている。

A Boy In Love

−Eloyとはどこで会ったの?
パーティで。でもその前から仕事してるときに彼とは会ってたんだ。ほら、あっちこっち回ってるから、いろんなところでお互い顔合わせてたんだ。ずっと長い間知り合いで、付き合ってからは1年になるよ。

−すごく落ち着いてるように見えるんだけど。。
そうだよ。ちょうど二人で犬を買ったところで、彼は白と黒のシーズー犬でジョーイって言うんだ。昨日も二人でジョーイを散歩に連れて行って、ただ二人で座ってしゃべってたんだ。全ての事から離れてね。すっごく良かったよ。

−昔の「愛」についてのインタビューを読むと笑っちゃうんじゃない?
だってそれは・・・・(笑い出す)僕はずっとインタビューが怖かったんだ。だってみんな聞くって分かってたからね。「ところでスティーブン、どうしてあなたは女の子と付き合わないの?」って。

−でも君は一度も「ふさわしい女の子に会ってない」とは言わなかったよね。いつも「ふさわしい人」って言ってたね。
うん。嘘はつきたくなかったから、言葉は注意して選んでたよ。

−カミング・アウトによってEloyとの関係は変わった?
うん。今は彼と道を歩くことが出来るんだよ。全てのことに気を配る必要もないし、(目を見開いて)ホントにホットしたよ。

インタビューが終わり、スティーブンは発売予定の彼のソロ ・シングル、新しいアニメシリーズ「ウォーターシップ・ダウン」からのクラシック、Bright Eyes(訳注:この時点ではBright EyesがSteoの最初のシングルとして発売される予定だった。結局Bright EyesはNew BeginningのUK版シングルの両A面として発売)を聞かせてくれた。このアニメシリーズではスティーブンはウサギの中の1匹の声優もやることになっている。ステレオから成熟した、太い声が流れてくるとスタジオにいた全員が驚いた。「ボーイゾーンの中ではいつも高いパートを歌ってるからね。」スティーブンが説明する。「でもこの曲では違うヴォイス・スタイルに挑戦することが出来たんだ。すごくエキサイティングだったよ。」シングルは素晴らしかった。しかしながら、スティーブンが経験したこれらのことの後では、ソロ・キャリアなんてちっぽけな事はあまり気にしないのではないだろうか?「気にするよぉ!すっごいナーバスだよ。」彼は赤くなる。「Bight Eyesがどうなるかは分からないけど。もしチャートに入れば、それだけでハッピーだよ!」そして少し考える。「もしみんなが僕にケチつけたら、それはしょうがないよね。少なくとも自分はやったんだって事は分かってるから。」「じゃあ、今は前よりも強くなったと思う?」「ひとつだけ分かってることは、今は全てのことに対してより覚悟が出来てるってことかな。」彼は両手を広げて言う。「今まで以上にね。」そう言い残すと、スティーブンは彼の手紙をかき集め、さよならを言い、ドアの向こうに去っていった。頭を高く上げて。



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