総勢16名の漫画家による、「デビルマン」トリビュート・コミック集。現在第一線で活躍する漫画家たちにオリジナルのデビルマンを描かせるという「ネオデビルマン」プロジェクトは、当初「コミックガンマ」誌上で1996年に連載がスタートし、その後「週刊モーニング 新マグナム増刊」に引き継がれた。しかしリアルタイムでは読んでいないので、今回の文庫本が初体験。なお永井豪による原作は、72年6月11日〜73年6月24日「週刊少年マガジン」に連載された。恥ずかしながら、執筆作家陣の中で当初より作家名を把握していたのは、永井豪を除くと3名だけ。し、知らなすぎる。なにせ月太郎のマンガ人生は「ドラゴンボール」連載終了とともに終わっており、それ以来ほとんどマンガ雑誌を読んでいない。ちなみにその3人とは、石川賢、とり・みき、江川達也(年代順)。中でも江川達也については『BE FREE!』をリアルタイムで読んでおり、作中に登場するデビルマンのパロディに思わずニヤリとした記憶があるので、楽しみだった。それから「寄生獣」という作品や三山のぼるの絵柄は、かろうじて知っていた。
文庫版「ネオデビルマン」の存在を知った月太郎に一気にデビルマン・マイブームが訪れ、本作全二巻をAmazon.co.jpで注文し、さらにネット上の関連ウェブページも検索した。原作デビルマンと初めて出会った時の衝撃を語り合う「トラウマっ子倶楽部」を擁する、HIRO-Pさんの俺とデビルマンが面白そうだったが、残念ながら現在更新停止中の模様。それからふりーく北波さんのサイトビバ!ダイナミックは再発時の加筆内容など原作関連のデータ量が緻密で、こちらは現役で活躍中。キーワード「デビルマン」でウェブを検索すると、マニア向け?3Dフィギュア関連のページがあまりに多くヒットするのには辟易したが…。
今回あちこちのHPを見学して、初めて知った事実など。
そうこうしているうちにアマゾンから本が届いた。文庫本版2冊組。各作家の作品について、思いつくままにコメントしてみる。なお原作を所有していないので、原作との比較などは完全に記憶モードでのコメントになるため、思い違いもあるかも知れないがご容赦いただきたい。
- 原作をベースにしたビデオアニメが2本製作・リリースされたが、続編は作られていないようだ。
- OVA(オリジナルビデオアニメ)のAMON デビルマン黙示録が2000年5/24に発売されている。原作のストーリー後半部の時代を舞台にしたオリジナル作品だが、牧村美樹の惨殺シーンを含む、かなり過激な内容だったらしい。きっぱり不快だと評していたHPもあった。
- バイオレンスジャック、デビルマンレディーなど、他のその後の永井作品にもデビルマン(不動明)らが登場しているそうだ。しかし多くの読者は、こういったデビルマンの扱いに不満を感じている模様。好意的にこじつけて理解しようとする向きもあるが、少なくとも絶賛されているのを見たことがない。幸いにして、これらの関連作品は読んだことがないが…このまま読まない方がいいのかな?
【萩原玲二】 「黙示録」の一節を借りた、なんとも思わせぶりな内容。明と了の、衝撃のキスシーンも。
【江川達也】 ミーコ外伝。とは言っても、自慰シーンなどごく一部を除けば、原作をそのまま描き直しただけの箇所や、原作のフラッシュバック的ダイジェストが大半を占めている。原作のストーリーは脳裏に焼き付いているので違和感はなかったし、元来江川センセの絵柄はかなり好き(江川版デビルマンがマイベスト。円熟味さえ感じる)なので、その点で不満はないんだが…思い入れが強すぎたのかな〜。
【寺田克也】 デビルマン(アモン?)と人間型デーモン(死体?)との愛の交流が描かれているようだ。シレーヌも登場。セリフはないが描き込みが圧倒的。異形のキャラクタが多数登場する上に、元がカラーページなので、モノクロ印刷の文庫版ではいまいち伝わらないのが残念。
【石川賢】 デビルマン・アギラの成長過程を描いたサブストーリー。アギラとは、本編デビルマン対サタンのシーンで明が乗っている台座の巨大なデビルマンで、どうやら名前は今回が初登場。その直後に続く永井豪のネオ作品でも「アギラ」の名で呼ばれている。しかし、明とアギラでは紛らわしくないか(笑)? ちなみに、「デビルマン」本編の作画に石川賢は参加していないそうだ。
【永井豪】 石川賢のストーリーからそのまま続くような展開で、アーマゲドンの激しい闘いを追い、原作のラストシーンに繋げる内容。意外にもあっさり負けてしまう明に涙…。
【ヒノモト森一】 『DaMNeD』 500年のあいだ封じ込められていたダムドという名のデーモンが、アモンへの復讐を果たすべく、自らを3体に分離して復活を遂げる。闘争本能「白虎」・破壊本能「青龍」と、最後の一体「朱雀」は…? 重要な役所でシレーヌが、さらに脇役にジンメンも登場。
【永野のりこ】 ナチスに命を奪われたアンヌという少女の怨念を明が成仏させる?エピソード。ドロドロの闘いとは対照的な、キャピキャピの美樹ちゃんが新鮮。
【安彦良和】 夢オチ短編。深刻さのかけらもなく、ダジャレもマジで寒い。主人公の名前を「自動扉(じどう・とびら)」としたところで信者は怒るかも知れないけど、ヘヴィな作品が多い中、こんなカバーもあっていいのでは。
【三山のぼる】 「将来権力の頂点に立つ」代議士がデーモンに幽閉され、人生を狂わされてしまう物語。脇役としてシレーヌ登場。夢の出来事として、美樹の母親の逆さ吊りシーンも再現されている。
【とり・みき】 小学校を舞台にした、ゼノン出現前夜のエピソード。とり・みきセンセはほとんどギャグ絵柄でしか知らなかったので、シリアスいストーリーと絵柄にとりあえず違和感。でも原田知世ファンでもあるので、それ系の単行本は持ってます。
【岩明均】 これも原作中もっとも深刻なシーンである「悪魔狩り」をモチーフにしているが、軽妙なタッチがよい。でもデビルジジイ、かっこよすぎ(笑)。
【田島昭宇】 『Made in Heaven』 シレーヌ編の死闘シーンを、作者独自のビジュアル系タッチで再現。絵がうまいっていいよねぇ。でも個人的には、デビルマンの口がちょっと…。
【高寺彰彦】 『エウリノーム』 刑事・多聞天志がデビルマンとして覚醒する話。原作のラストにも登場する、明の側近?犬デビルマンの女の子が準主役。「世界に潰されないだけの圧倒的な力を持った者が逆に世界を潰してやればいいんだ」とうそぶく悪役の日向は、デーモンではなく悪のデビルマンと見ることはできないか? ストーリーに明との接点はないが、途中ちらっと了と豪ちゃんが登場。
【夢野一子】 『〜あなた〜』 家庭内に問題を抱えつつ、牧村美樹には嫉妬を抱きつつ、同級生の明に恋心を抱く少女・相沢路子の物語。無差別合体攻撃により肉体はデーモンに乗っ取られるも、明への想いは生き続け、その執念が逆にデーモンを支配してしまう…。膝をすりむいて保健室へ…といった少女マンガのステレオタイプ的導入部からデビルマン世界への展開がお見事。
【神崎将臣】 美樹を失い、人間性を失いつつある明。彼の心を繋ぎ止めているものは…。暗くて残酷で激しくていい感じなんだけど、1ページ目の美樹ちゃんはロリロリで、イメージ違いすぎ。
【黒田硫黄】 『ゼノンの立つ日』 これもデビルマンかぁ…独特なペンタッチに最初は違和感があったが、なかなかのめり込める家族ドラマ。主人公・安倉は目的地である生物科学(悪魔)研究所を目前にして全ての道連れを失うが、最終シーンの直後、自分も射殺されてしまうのね…。どーでもいいことだが、雷沼→電沼の誤植あり。
【風忍】 『MK23の女』 ダイナミック・プロの作家さんらしいが、設定といい絵柄といい、かなり独特で個性的。原作キャラも一切登場しない。主人公の神月真美が、原作のストーリーの中でどのような位置づけになるのか、いまいち想像できない…。
【永井豪2】 『Devilman in the Dark』 本編とは全く無関係で、舞台は地獄。地獄でもシレーヌは明を追い続け、再び対決するわけだが、地獄では互いに何も背負っていないせいか、なんとも呑気なバトル。明と行動をともにする共演者はどうやら、デビルマンレディに倒されたキャラのようだ。
「ネオデビルマン」クロスリファレンス
原作のキャラが登場する作品(◎主役、○脇役、△チョイ役)
作家
萩
原
玲
二江
川
達
也寺
田
克
也石
川
賢永
井
豪ヒ
ノ
モ
ト
森
一永
野
の
り
こ安
彦
良
和三
山
の
ぼ
ると
り
・
み
き岩
明
均田
島
昭
宇高
寺
彰
彦夢
野
一
子神
崎
将
臣黒
田
硫
黄風
忍永
井
豪ページ数 36 60 16 38 36 50 26 12 42 40 42 28 60 50 28 54 34 58 デビルマン(明) ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ◎ ○ △ ◎ ○ ◎ △ ◎ サタン(了) ◎ △ △ ◎ △ △ ○ △ ◎ △ △ ◎ 美樹 △ ○ ○ ○ ○ △ ○ ゼノン ○ △ △ △ サイコジェニー △ △ ○ シレーヌ △ ○ △ ○ ○ ◎ △ ◎ ミーコ ◎ △ △ 雷沼雷蔵博士 ○ △ 久しぶりに身体中の毛穴がゾワゾワするのを感じながら、一週間読みふけりましたよ〜。音楽ではトリビュート・アルバムってよくあるけど、マンガの世界では初めて見たので新鮮。有名な曲を歌うだけなら誰にだってできるけど、マンガではそーはいかない。しかもアーティストではなく単独作品へのトリビュートで本が2冊できてしまうのだから、「デビルマン」ワールドの奥深さとその絶大な影響力も推して知るべしである。(つーか、原作買えよ>自分)