第1回 4割ジョッキー武豊・前編

 

さて、初っ端ということで誰を取り上げようかと考えたんですが、
やはり関西、いや日本一のジョッキーということで、武豊から話したいと思います。

とは言うものの、武豊を完全に掴めてるわけじゃないんですよね(笑)。
彼を掴んでいるか掴んでいないかで、関西の馬券の的中率だけじゃなく回収率まで大きく変わってくるんですが。

彼はいつでも人気になって、いつでも馬を持ってきて、堅い配当を残していく、という憎き存在でありますが(笑)、
実際には彼のここ数年間の連対率はおよそ4割。ということは6割も連を外しているんですよ。
いや、4割も来てるのはもの凄いことなんですけど(笑)。
でも、この6割は来ていないわけで、もっと言えばそのうちの大半は人気を裏切っているわけで。
ということは、武豊の取捨選択さえ掴めれば、美味しい馬券にありつけることもある!?
そうすれば、回収率UPも夢じゃない!? となるわけです。
つまり、「武豊攻略は関西攻略への近道」なんです!!

まぁ、今年はヨーロッパに行っちゃったから、あまり関係なかったんだけども(笑)。

 

前置きはそのくらいにして、実際に武豊攻略にとりかかりましょう。

まずは、武豊の騎乗パターンを探ってみます。
この騎乗パターンというのは、例えば「中館はとにかく逃げる」とか、「後藤はよくマクる」とか、その騎手がよくやる戦法のことです。岡部なら「インでじっと我慢して、直線でちょい差し」とか。
この騎乗パターンが無い人も居ますが、一流ジョッキーは大抵これを持っていますね。
まぁ、だいたい一人一つ持ってます。

ところが、彼は、この騎乗パターンを複数持っています。ここが他の騎手とはひと味違うところ。
彼の騎乗パターンをざっと挙げてみますと、

1:「ポンと出て押し切り」戦法……2歳、3歳戦でよく見る
2:3〜4角で前の馬を捕まえ先頭に立ち、「差すなら差してみやがれ」戦法
 
(例:メジロマックイーン)
3:最後方待機→大外から追い込み戦法(例:エアシャカール、ナリタタイシン)
4:後方待機→イン突き戦法(主に京都で見る)

と、4つも思い浮かびました。よく見てみたらもっとあるかもしれません。

つまり彼は「どんな脚質の馬でも、どんな展開でも自分の騎乗パターンにもっていける」んです。
中館のように開催後半の逃げ馬が厳しい馬場が苦手だったり、松永幹のように差し馬が苦手だったりと、ほとんどの騎手は得意な騎乗パターンがある反面、苦手なものもあるんですが、彼にはそれが見当たらない。ここも彼の凄いところだと思います。

 

しかし、それならばどうして6割も連を外すのか?
まぁ、単に能力の足らない馬に乗ってる時もあるから仕方ないんですが(笑)、中には↑の騎乗が原因の時もあります。
ということで、実際に↑の4つの騎乗パターンを検証しながら、見ていきましょう。

 

1:「ポンと出て押し切り」戦法の場合

↑にも書いたように、これは新馬・未勝利でよく見られる戦法です。
武豊が乗る馬は大抵能力上位の馬が多いので、ヘタに折り合いを気にして馬の気を悪くするくらいなら、絶対的スピードの差で押し切っちゃおうというものなんでしょう。
99年以降、武豊が新馬・未勝利戦で逃げた時の連対率は、なんと60%!!
複勝率に至っては73%と、もう手がつけられない状態です。

ところで、結構居るんですよね、これでバカ勝ちしちゃう馬が。そして昇級戦でも人気になって、同じ競馬をするんだけども、昇級戦じゃさすがに通用しないんですよ。
例えば、97年の阪神3歳牝馬Sでコケたエイシンシンシアナ(父ストームキャット)や99年の、同じく阪神3歳牝馬Sでコケたウォーターポラリス。最近では、―これは乗り替わりなんだけど―今年のこぶし賞でのストロングウィドウとか。

これは、「昇級戦のペースに惑わされた」とか「スンナリ逃げられなかった」とか「初めて揉まれる競馬をした」とか、色んな理由が挙げられます。

ということで、「スピードの違いで新馬・未勝利戦をバカ勝ちした馬の昇級戦は危険」です。
って、これは別に武豊攻略じゃないのか(笑)。
まぁ、これは武豊に限ったことじゃないですけども、特に武豊の場合は人気になりやすいので、美味しいですよ、と。

こういう逃げてバカ勝ち→昇級戦で惨敗 のパターンは、主にミスプロ、ストームバード、その他マル外のバカっぱやいのによく見られるので、そういう馬には注意っすね。
って、やっぱり馬の攻略になってるぞ(笑)。

−エイシンシンシアナ−
日付 開催 レース名 着順 騎手 距離 着差 コーナー順
980125 1京8 寒梅賞 500 3 5着 武豊   ダ1200良 1.0 2-2
971130 5阪2 阪神3歳G1 5 13着 武豊   芝1600 2.0 1-1-2
971101 5京1 新馬 3 1着 武豊   ダ1200良 -2.2 1-1
このように、緒戦の圧勝で人気になってしまうケースが多いが、かなり危ない。
「例えストームキャットでも、武豊だからなんとかしてくれるのでは?」
という考えは非常に甘い(笑)。

 

−ウォーターポラリス−
日付 開催 レース名 着順 騎手 距離 着差 コーナー順
991205 5阪2 阪神3歳G1 6 14着 武豊   芝1600 1.9 2-2-2
991114 5京4 新馬 1 1着 武豊   ダ1400稍 -1.7 1-1
これは距離が長過ぎたというのが一番の敗因。
でも、ヤマカツスズランが逃げ残る展開でここまで負けたのは、やっぱ見過ごせない。

 

−ストロングウィドウ−
日付 開催 レース名 着順 騎手 距離 着差 コーナー順
010210 2京5 こぶし賞500 1 15着 武豊   芝1600 3.1 3-3
010127 2京1 新馬 2 1着 松永幹夫 ダ1200 -1.2 1-1
この馬は単に芝が合わなかっただけかもしれない。
が、そういう不安材料がありながらも人気になるのが武豊の宿命。

 

−結論−
例え武豊が乗って新馬戦をポンと出てバカ勝ちした馬に再び武豊が乗っても、
多くの不安材料が残っていることをお忘れなく!!

 

2:3〜4角で前の馬を捕まえ先頭に立ち、「差すなら差してみやがれ」戦法の場合

これはもう、この2レースを見れば分かるでしょう。


1992年京都3回2日目10R 天皇賞・春 芝3200 良  14頭
馬名 騎手 着差 コーナー順
メジロマックイーン 武豊     4-3-1-1 2
カミノクレッセ   田島信行 21/2 10-9-5-2 4
イブキマイカグラ  南井克巳 12-11-8-5 3
ホワイトアロー   田原成貴 10-11-5-5 11
トウカイテイオー  岡部幸雄 11/4 8-9-3-2 1

 

1999年京都3回4日目11R 天皇賞・春 芝3200 良  12頭
馬名 騎手 着差 コーナー順
スペシャルウィーク 武豊     3-3-3-2 1
メジロブライト   河内洋  1/2 6-6-6-4 3
セイウンスカイ   横山典弘 21/2 1-1-1-1 2
シルクジャスティス 藤田伸二 ハナ 7-7-6-7 5
ステイゴールド   熊沢重文 21/2 5-5-5-4 6

前者は「トウカイテイオーVSメジロマックイーン」で湧いた天皇賞・春、
後者は「スペシャルウィークVSセイウンスカイVSメジロブライト」の天皇賞・春です。
って、言わなくても分かりますよね。

“折り合い”重視になってから、スローペースによる前残りが頻繁に見られますが、
やはり実力を出し切れないまま負けるのは一番悔しいものです。
武豊はそれが分かっていますから、こういう力で捻じ伏せる騎乗をするんでしょう。
カツハルあたりにもこれを見習って欲しいものだ(笑)。

で、武がこういう騎乗をする時は、たいてい自分の馬の実力に自信がある時なんですよね。あと、人気の時。ちょっと足りない馬や人気薄の時だと隙を伺うような騎乗をすることが多いですけど、自信がある時は自分で展開を作る。それで負けたら仕方ない。そんな感じですね。

で、↑の例で見てみましょう。
前者の場合、怖いのはトウカイテイオーただ1頭。で、テイオーも3,4角から進出して押し切るという、マックイーンと同じタイプ。となれば、自分の競馬を貫いた方の勝ち。
まぁ、武豊が3角で先頭に立ったのは、よっぽどマックイーンのスタミナに自信があったからなんでしょうけど。

一方の後者。前にセイウンスカイ、後ろにメジロブライトが控えており、仕掛けるのは難しい……と思ってたんですけど、そんなことはありませんでした(笑)。
ここで怖いのは、ブライトに差されることよりも、セイウンスカイに逃げ切られること。
前年の皐月賞&菊花賞で苦渋を飲んだ武豊に迷いはなかったですね。
ブライトに対しては差されたら仕方ない……というより差されるとは思ってなかったかも(笑)。

 

さて、この騎乗の時、やられるのは1つ。それは後方から差されること。
差されたら仕方ない、と思ってたら、本当に差されてしまった、というパターンです。

この例は、もちろんこれですね。

1991年中山5回8日目9R 有馬記念 芝2500 良  15頭
馬名 騎手 着差 コーナー順 3F
ダイユウサク    熊沢重文   10-11-11-8 35.3 14
メジロマックイーン 武豊   11/4 8-8-8-4 35.6 1
ナイスネイチャ   松永昌博 13/4 10-11-11-12 35.7 2
プレクラスニー   江田照男 クビ 2-2-2-1 36.6 3
ダイタクヘリオス  岸滋彦  11/4 3-3-2-2 36.7 9

敢えて何も語りますまい(笑)。

もう一つ例を。

2000年中京1回8日目11R 高松宮記念 芝1200 良  17頭
馬名 騎手 着差 コーナー順 3F
キングヘイロー   柴田善臣   7-10 34.9 4
ディヴァインライト 福永祐一 クビ 7-6 34.9 8
アグネスワールド  武豊   クビ 2-2 35.6 2
ブラックホーク   横山典弘 ハナ 4-6 35.2 1
トキオパーフェクト 岡部幸雄 1/2 12-12 34.7 9

これこそ展開のアヤというやつですね。
まぁ、この時は外差し馬場だったことや、アグネスワールドがアンダーステアに嵌ったのも敗因の一つでしょうが。

 

このように、このパターンの時は、武の馬が勝とうが負けようが、武の馬に捕まえられた馬や武の馬を捕まえようとした馬よりも、自分の競馬に徹した差し馬の方がいい結果を生んでいます
これは短距離でよく見られる「人気の先行馬−人気薄の差し馬」の構図に通じるものがありますね。
ということで、武がこういう競馬をしそうな時は、無欲に差してくる馬を狙ってみましょう。
で、押し切られたら仕方ない、と。
まぁ、武から人気薄の差し馬に流す手の方が賢いっすか(笑)。

 

−結論−
武豊が「先行押し切り、差されたら仕方ない」という競馬をする時は、
武から人気薄の差し馬に流すか、無欲の差し馬から狙ってみよう!!

 

話が長くなってきたので、ここでいったん区切ります。続きは次回に。

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