たとえばこんなゲーム

前項で検証した通り、ゲーム内容は明らかに調整不足です。いや、システムや設定を云々する以前に企画段階で破綻しています。
ゲームらしくしようとした部分が皮肉にもプレイの足かせとなっています。なぜ、12人全員に会わなければベストエンディングに
たどりつけないのでしょうか。某ときめきの爆弾システム並に不条理な話です。製作者は何を意図していたのでしょう。

本作を恋愛ゲームとして見ると、日帰りのせいで一回一回のデートの時間や会話は物足りません。
最初から好感度が高い為、関係が深まっていく過程が楽しめないという意見についてはここでは触れませんが、
そうだとしても、ゲームの最初と最後では女の子の口ぶりは微妙に変わりますので、そういうのもありでは
ないかと思います。ですが、これが恋愛かというとやはり何かが違うように思います。
これをいったらおしまいかも知れませんが、初恋の相手と同窓会で再会すると必ず興ざめさせられると言いますし、昔の恋人にも
会わない方がいいとも言います。これは私も大いに心当たりがあるのですが、元同級生に昔のイメージのまま接すると大抵
話が合いません。残念なことに歳月は人を変えてしまうようです。
 女の子たちは「あの日のままでいてほしい」と思っているのでしょうし、主人公もそれに応えようとしているのかも知れません。
ですが、こういうのは何度も会っているうちにどちらかが覚めてしまうものではないでしょうか。
自分から別れるという選択肢の他に向こうからも「別れたい」と言って来てもよかったんじゃないかと思います。

では、旅のシミュレーションと考えたらどうでしょう。
そう考えても、日帰りでは各地を回るという楽しみはありませんし、女の子を旅の案内役と考えても、旅情は全く感じられません。
夏休みくらいどこかのホテルや旅館に泊まりたいものです。本作は旅のシミュレーションゲームとしてはきわめて皮相的です。

愚痴はこれくらいにしておきましょう。それではどんなゲームにして欲しかったかをあとの祭りではありますが、
このままでは気がすまないので、いくつか提案したいと思います。

・その1

・ビジュアルノベル

「TO HEART」や「久遠の絆」と同じシステムはどうかという訳なのですが、膨大なテキストを必要としますし、このジャンル
のゲームは評価が高いものが多い為、それらと比較されると残念ながら劣ってしまうと言わざるを得ません。
それに、このゲームはどうも脚本が弱いので、あまりいい文にはならないかも知れません。要はいい文章書きがいればいいのですが、
小説版のような文章だとまずいでしょう。こんな駄文を書いている私が言うのも気がひけますが、
あの小説はもっと表現に気をつけた方がいいのでは無いかと思います。
「久遠の絆」でも感じましたが、文中の稚拙な表現や不適切な俗語が作品の雰囲気を台無しにしているきらいがあります。

では、試案を述べたいと思います。

小説版では、主人公は夏に女の子に会いに行っていましたので、ゲームは夏休みから始まるのがいいと思います。
日帰りではなく何泊かするほうがいいでしょう。ただし、どこかの旅館やホテルに泊まるということで。
まず、誰に会いに行くかを決めて狙いをはっきりさせます。浮気はできないようにします。
特例として、会いに行く途中に偶然出くわしたり、家に来たり、電話をしてきても構いませんが、恋愛対象はあくまで一人
とするべきです。恋愛対象外の娘と仲良くなったとしても、最終的には「僕はもう、心に決めた人がいるんだ」とか、
「私たち、もう会わない方がいいよね」といった形でせつない別れを迎えるようにするといいのでは
ないかと思います。いわゆる2/22イベントのようなものと考えてください。
 ストーリーは基本的に一本道となる変わりに、恋愛対象外のキャラとのつきあいは出来る限り自由にしても良いでしょう。
電話をする、手紙をもらうなど、旧交を温める程度の交際ができるようにしますが、親密度
があがって、会いに行くことになっても浮気までは行かないようにしたい。あくまで話の本筋に影響を与えない程度に
サブキャラの扱いとすべきです。

恋愛対象を一人に絞って話を展開させていくわけですが、大筋では夏休み、冬休み、2月と3月に2、3回ずつ
会えるという形としてはどうでしょうか。回数は少ないですが、その分密度は高くなります。
この少ないチャンスで親密度を上げていくようにするのです。そして、もしなにか悪い選択(台詞に限らず)をした
場合、親密度が上がらなかったり、最悪の場合ふられてしまうようにします。当然ゲームオーバーです。
休みが終わって学校が始まれば、電話や手紙のやり取りをします。一回か二回くらい会いに行ったり来たりする
イベントがあってもいいでしょう。
ストーリーのおおまか流れはこうです。
夏に再会して、1、2回遊びに行きます。秋は会いたくても会えない寂しさを主人公とヒロイン双方から描写し、ある日突然、
ヒロインが会いに来たりもします。冬休みはクリスマスや新年に会って二人は急接近します。
そして、2月に入って学校の休みが増えて来た頃に、もう一度会ってさまざまなやり取りのあと、回想シーンへと
突入します。ゲームのように数回に分けるよりも一度にした方が効果があるでしょう。
内容は小説とかぶってしまうかも知れませんが、細部まで描写するよう心がけます。
そして、そのあとやりとりをして、向こうから告白されるか、こちらから告白されるか、ふられるかを親密度で決定します。
親密度が高ければ、後日ヒロインが上京して告白を受けてゲームは終わりますが、(エンディング1)されなければ気持ちを整理
するためにサブキャラとのせつない別れをします。親密度が高ければ、ふってしまうようにします。(ゲーム本編に劣らぬ程ひど
い主人公だ)せつなさや心の痛みを演出するためには止むを得ません。「保険」はかけられないようにします。
3月に自分から告白します。親密度が基準値をクリアしていれば、エンディング2、クリアしていなければエンディング3
を迎えてゲームは終わりです。

・その2
ミニゲーム付きアドベンチャーゲーム
恋愛ゲームは、何度も言うようにゲームとは呼べません。唯一ゲームと呼べる部分はミニゲームです。そこで、よりゲーム
らしくするためにミニゲームを導入します。 何の為にするかというとお金を稼ぐために、そう、アルバイトをミニゲーム
にするのです。ゲームの内容は死ぬほどつまらなかったり、退屈だったり、やり込みがいがあったりとさまざまなものを用意
します。ミニゲームのスコアをお金に換算して、稼いだ金額に応じて滞在日数と行ける場所が決まるようにします

具体的にいくつかあげますと、ベタベタかもしれませんが、「倉庫番」とか、「新入社員とおるくん」とか、(これは違うかも)
「ペーパーボーイ」とか。他にも、以前パソコンのRPGで炭鉱のアルバイトをするというのがあったのですが、それは、つるはしを
一回振ると、1G貰えるという内容でした。当然、連射装置は受け付けませんでした

他にもさまざまなアルバイトをゲームにできると思いますが、簡単過ぎるとつまらないし、難しすぎてもこういうゲームをする
人々には受けないので、匙加減が難しいですが、それなりにやり甲斐があると思います。ですが、あまり変なゲームだとイメージ
が崩れてしまうかもしれません。

お金がたまるといよいよ会いに行きます。交通費、デート費用、宿泊費などと相談をして、デートプランを立てます。
このあたりは時間の概念を取りいれて、「同級生」のようにしてもいいでしょう。
女の子からもリクエストがくるようにして、ある程度親密度があがれば、強制イベントが入ってきます。

ゲームは春から始まり、ミニゲームで稼いだお金を遣って会いにいきます。これも一度に何人も会えないようにしたいですね。
女の子が家に来たり、旅の途中で会ったり、手紙を送って来たりするのはいいのですが。

そして、秋からはバイト三昧の日々となりますが、1、2回くらいは会いに行ってもいいでしょう。向こうからも会いにきます。 やっぱり電話や手紙のやり取りはしたいですね。誕生日にはプレゼントを贈ったり会いに行ったりもします。
電話や手紙は親密度に応じてくるようにする。高ければ高いほど、切ない手紙や電話になるのかなぁ?
そして、クリスマスと新年にも会います。稼いだお金に応じて、ホテルのディナーを予約できたり、クリスマスパーティになったり
女の子の友達のパーティに行ったりできるようなるといいなあ・・・・・・・(こんなことを考えているとなんだが空しい)
 新年は初詣に行く。このあたりで、昔のことを話し始めて、回想シーン突入の布石とします。

バイトの傍ら何度か電話のやり取りをして、2月に入るとまた会いに行きますが、ここで昔言い忘れていたことや果たせなかった
約束の事を話し始め、主人公もそのことを思い出して、回想シーンに入ります。
無論、ゲーム本編のようなモノローグではなく、コマンド選択式アドベンチャーとして、小説やCDでは表現し切れなかった
細部までを描写します。

回想シーンが終わると親密度のあがる最後のイベントが発生して、そこまでの親密度に応じてエンディングが別れます。
基準値をクリアしていれば、そこで告白を受けてエンディング1です。
クリアできなければ、ゲームはもう少し続きます。卒業直前に親密度を上げる最後のチャンス(イベント)があって、うまくいけば、
エンディング2です。駄目だったらエンディング3で終わりです。
ゲームの流れは大体こんな通りですが、まだ入れたい要素があります。それは、二人のすれ違いや愁嘆場、そして別れです。
また、展開次第では他の女の子に相談するイベントが欲しいものです。(そうなる前に、女の子が主人公をあきらめて友達となって行く
過程が描かれているといい)
別れはゲーム中悪い選択をした場合、途中で振られてしまうという風にします。
ケンカの場合はやり方次第で仲直りできるようにするといいのではないでしょうか。もし、「もう会いたくない」と言われても、
電話や手紙でどちらかが謝ったり、向こうから上京して来たりと言った形で多少クサイかもしれませんが、愁嘆場を演出したい
ものです。普通、こんな関係がうまく行く筈がないのですから、多くの障害を乗り越えて行くという過程をしっかりと描きたい。
恋愛は楽しいことばかりではないということで。

・オリジナル(設定を少し変えた私案)

本作の主人公は、他の恋愛ゲームに比べて愛着を持っているファンが多いせいなのかどうかは知りませんが、「主人公死す」の
報は大きな反響を呼び、怒りの声がゲーム雑誌やネット上をにぎわせたことは、皆さんの記憶に新しいことでしょう。
それは、自分を殺されたとか、自分の行為が否定されたことへの憤りだったのかもしれませんが。

   ゲームでは、脚本家の愛の欠如のせいか、女の子を振ってしまうときのあの非情な台詞と十二股をかけるという血も涙もない行為、
女の子との会話での当り障りのない台詞の数々、なんで手紙を出したかどうか聞かないのか?などと言ったシステムの欠陥のせいで
株を大きく下げてしまった挙句、続編には不要の存在として鬼籍に入ってしまった哀れな少年ですが、彼抜きには本作が成り立たない
と来ているから困ったものです。ですが、月並みな言い方かもしれませんが、本当の主人公はこの少年ではありません。真の主人公は
十二人のヒロインなのです。 だから、この少年がいなくとも充分に話が成り立つと思われます。
アニメ版でも一人一人の少女が主人公となっていましたし、彼は回想シーンにしか登場しませんでしたから。

ですが、アニメや小説の少年はいいとしても、ゲームの主人公などは私には同一人物とは思えない程、非情な面や誠意のなさが
目立ち、結局ゲームの主人公には一部を除いて愛着を感じることができませんでした。
そこで、この無個性な彼にどうすれば愛着がもてるか、どうすれば、自然に個々の女の子への心情を語れるのか。などを
考察したいと思います。

問題