道東自転車旅行
夏の北海道。本州の酷暑が嘘のような涼風、広がる畑や森に、地平線までまっすぐ伸びる道。狭苦しい東京での忙しい日々のかたわら、そんな情景が頭をよぎり、北の大地を愛用のマウンテンバイクで走りまわりたい想いが高まる。「特割運賃」の早朝便で千歳空港へ到着。機の眼下に広がる小麦畑は、もはや本州よりヨーロッパに近い景観だ。
道東の北見まで列車に乗って、そこから自転車の旅を開始する。彼方まで背の低い丘が連なり、空は広い。国道は丘にさしかかると、ゆるやかな坂を一直線に上る。自動車の流れも、高速道路並みに速い。しばらく人家の少ない畑地を走り続けると、前方にぱらぱらと建物が見え始め、美幌の市街地に入っていく。ペダルを一歩一歩踏みつつ、なかなか減らない目的地への標識のキロ数を指折り数えながらも、じりじりと進むうち少しずつ建物が増えてきて、やっと町に着く、食べ物も手に入る・・・。ぼんやりしている間に目的地に着いてしまう列車などでは味わえないこの手ごたえと嬉しさは、自転車の旅ならではだ。
美幌の町で一服してから、美幌峠へ向かう。若いライダーの旅人が多く、彼らはすれ違うときピースサインを向けてくれる。他の地方ではあまり見られない夏の北海道の風物詩ともいえる光景で、見知らぬ旅人同士の心が通い合う一瞬だ。傾斜はゆるめだが長い坂道を上り続けると、樹木がまばらになり景色が荒涼としてきて、峠に着いた。眼下には、中島の浮かぶ広大なカルデラ湖である屈斜路湖と、ヘアピンカーブを描いて下る国道が一望される。建物はほとんど見当たらず、湖のまわりは緑濃い樹海がうっそうと続く。自分の足でたどりついた展望地には、満足感もひとしお。また次なる景色との出会いを求めて、どこまでも走り続けたくなるのであった。
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