自転車というと、駅やスーパー、学校と自宅のあいだを行き来する生活用の「ママチャリ」のイメージが強いかもしれない。しかし、少し発想を転換すれば、自転車は非日常の旅行の手段として、楽しめる乗り物である。このホームページの旅行記のコーナーでも、いくつか自転車を用いた旅の実例を紹介している。 (自転車のメリット) ・徒歩の数倍の速さで移動できる ・自動車よりもずっと景色に親しめ、気に入った場所があればすぐにとまってじっくり風景を味わえる ・面白そうなわき道、裏道へもどんどん入り、自由に走り回ることができる ・走り終わった後の気分は爽快であり、食事をおいしく楽しめ、健康にもよい ・知らない土地を自分の足で走りぬいたという充実感がある (自転車の機動力) 変速機構がなく重たい「ママチャリ」ではなかなかスピードが出ないが、然るべき車種を選べば、自転車はかなりの機動力を発揮する。 平地ならばだいたい1時間に20キロ程度は移動することができ、待ち時間や駅から目的地まで歩くことを考えると、都市部ならば地下鉄と同等、バスよりも速い。少し慣れてくれば、1日100キロ走行(だいたい東京〜熱海、宇都宮あたりに相当)、標高1500メートル程度の峠越えも可能である。 (自転車の車種選び) マウンテンバイク(MTB) 突起のある太いタイヤを用い、フレームも頑丈で、舗装されていないオフロードの山越えなどを楽しむのに適した車種である。タイヤがごつい分走行抵抗が大きいため、舗装された道では、クロスバイクやロードのほうが楽に走ることができる。ディスカウントストアでは1万円台の車種も売られていたりするが、耐久性や性能などの面で難点が多く、旅行、長距離の走りを楽しむ場合は、然るべき自転車専門店を選び、安くとも5万円程度の車種を購入したほうがよいだろう。 クロスバイク タイヤがマウンテンバイクよりも細く、街なかでの走行から長距離の自転車旅行まで、幅広く楽しめる自転車である。舗装道路しか走らず、さほど高速走行を追及しない初心者であれば、もっとも手軽に使いやすいタイプの自転車と思われる。 ロード 走行抵抗の小さい細いタイヤを用い、フレームも軽量化されているため、普通のママチャリなどとはまるで別の乗り物と思われるようなスピードが出る。しかしそのぶん造りがデリケートで、タイヤのパンクもしやすいという問題点がある。 (「輪行」とは) 鉄道や飛行機に、自転車を分解して積み込んで旅行することを「輪行」といい、これによってサイクリングの行動範囲を飛躍的に広げることができる。たとえば京都まで新幹線で行き、街なかを自転車で巡って旅することや、飛行機で釧路に到着した後に釧路湿原を自転車でまわるといった柔軟な旅程が組めるようになる。 現在、JR、各航空会社とも、輪行の手数料は無料であるが、分解した場合でも自転車はかなりのスペースをとるため、他の乗客に迷惑をかけないための気配りは非常に大切である。 輪行をする場合は、ボルトなどを使わず手でレバーを緩めるだけで前後の車輪を外すことができる、クイックレバー式の自転車が便利である。慣れれば分解・組み立てともに数分で行えるようになる。 列車に乗る場合は、混雑に配慮する必要がある。大都市の朝夕のラッシュ時に、大きな輪行袋を持って乗ることは、不可能ではないが、自分も周囲もかなり不愉快な思いをすることは避けられない。乗る列車の時間帯には、注意する必要がある。乗る車両は、最前部か最後部が過ごしやすい。そのほうがたいてい空いているし、置き場所に困る輪行袋は運転席の後ろのスペースに置ければ一番都合がよい。また、輪行袋はかなりの重さとなるため、多少時間がかかっても乗り換えが少なかったり、短時間で乗り換えられるルートを選んだほうがよい。 新幹線や特急に乗る場合は、デッキに輪行袋を置くことになるが、車内販売のワゴンの通行の邪魔になることもあるので、やはり一番前か後の車両が望ましい。 飛行機に乗る場合は、通常の手荷物と同様に預かってもらえ、あっけないほど簡単に輪行できる。荷物を受け取るときは、他の客と同じベルト式のカウンターに乗って出てくるのではなく、係員が別途外に出してくれることが多い。いつまでもベルトの前で待っていても出てこないことがあるので、少し注意が必要である。 バスの場合は、長距離の高速バスならば床下のトランクに自転車を入れてくれるが、短距離のバスなら車内に持ち込むことになる。 |