「フレッシュひたち」 E653系 上野〜いわき・高萩・勝田
現在、終日30分毎に運転される「ひたち」系統は、東日本を代表する特急列車であるが、その誕生時の姿はささやかなものであった。1966年10月に、キハ81系ディーゼルカーにより上野〜平(現・いわき)間に運転開始。同時に登場した特急「いなほ」の間合運用で、本数も1往復、平以南は電化線区なのに、他の特急のディーゼルカーを間借りしていた。さらに冬季には日本海側の雪害により「いなほ」の遅延が多く、その際は451系急行形電車による代走もなされていた。1960年代前半までは、緊急性の高い東北本線系統の特急の増発が優先されており、常磐線のような中距離輸送は急行が担うものと考えられ、特急の整備は遅れたようである。 「ひたち」は1972年10月、485系電車に置き替わった。1985年3月には、急行「ときわ」を格上げして大増発がなされ、ほぼ30分〜1時間ごとに運転されるダイヤとなる。1989年3月には、新製の651系電車が投入され、日立以南での130km/h運転により、上野〜水戸間を最短66分で結んで「スーパーひたち」を名乗る。増発により、翌年には基本的に上野から水戸までノンストップで走り停車駅の少ない長距離の「スーパーひたち」と、グリーン車を連結せず停車駅も多い補助的な中・近距離向けの「ひたち」が交互に1時間1本ずつ走るというパターンダイヤが整備された。 1997年にはE653系が登場して「フレッシュひたち」を名乗り、翌1998年12月には残る485系車両をすべて置き換えた。E653系もグリーン車は連結しておらず、「スーパーひたち」を補助するという役割分担は現在まで続いている。これで、常磐線の特急はすべて最高速度130km/hの快適な車両に揃えられ、停車駅の多い「フレッシュひたち」でもスピードアップが実現された。国鉄時代は整備の遅れた常磐線特急も、JR化後の努力によって、今ではダイヤ、車両、スピードとも、在来線特急では最も便利な水準に達した列車といえる。 平板な関東平野に都市近郊的な風景が続き、観光地や車窓の見どころは少ない。沿線は中規模都市が連なり、工場や研究機関なども多いため、出張などのビジネス需要や通勤需要が高い列車である。上野〜日立間では最高速度130km/h運転を行い、上野〜水戸間の表定速度は108km/hに達し、JRでトップクラスを誇る。混雑時間帯には、7両編成を併結した14両の長大編成も組まれる。 しかし日立以北は徐々にローカル色が強まり、松林の向こうに太平洋を望む。いわきを過ぎれば線路は単線となって、最高速度も100km/hにとどまってぐっとのんびりした走りになり、東京近郊の忙しいビジネス特急の雰囲気ではなくなる。左手に阿武隈高地の茫漠とした山容、右手に時折望める太平洋といったなか、特徴のない平板な農村地帯を走っていく。 BACK |