起点の尾道駅は、駅前から渡船が出ており、すぐ対岸にある向島まで数分で着く。買い物自転車やスクーターがそのまま乗り込んできて、生活の足として使われているユニークな渡船である。島がいくつも浮かぶ穏やかな瀬戸内海を眺めながら、自動車も少なくのんびりした島の風景の中を走ると、前方に因島大橋が見えてくる。橋は地上から50メートルと高いところに掛かっているため、丘をぐるりと迂回して上る自転車道が作られている。橋は二段になっており自転車と歩行者は下段で、海を見下ろしながら、檻のように金網に囲まれた道を行く。 次の生口橋から先の橋は二段ではなく、頭上に自動車用の橋が覆いかぶさることもなくなり、まさに海の上を飛ぶような爽快感が味わえる。その次の多々羅大橋は、橋を渡ったところに道の駅があり、しばし休憩をとる。この道の駅から見渡す多々良大橋の姿は、山を背にして真っ白い橋脚が映えて美しい。大三島橋、伯方・大島大橋のあたりは、橋を渡る観光客も少なく、人家もまばらとなりローカル色が濃い。 だいぶ疲れてきたが、最後の来島海峡大橋は、このルートの最大の見所といえる。橋の全長は4045メートルとしまなみ海道では最長であり、何本も高い橋脚が並ぶ姿は風格がある。橋から瀬戸内海を見下ろすと、広大な海の中にも川のようにいくつか水の流れるルートがあることがわかり、穏やかな水面がゆっくりと動いている。渡りきって四国に下りると、ごみごみした市街地、連なる自動車の列に、これまでののんびりした離れ島から、人が忙しく活動する場に戻ってきたことを感じる。 約6時間をかけて、本州から四国まで自転車で横断した。島がいくつも浮かび山並みを海に沈めたような瀬戸内海の風景を眺めつつ、交通量も少なくゆったり走れる島々を渡り歩き、サイクリングを楽しむことができたしまなみ海道の旅であった。 BACK |