核
三日前は、十時間ねた。だから十四時間起きていた。起きている間に二回食事をした。寝ている間六つの夢をみた。
二日前、十六時間寝て、八時間起きていた。一回食事をして、十、夢をみた。
昨日、二十時間寝て、もう食事はいらないと思った。
今日は一体何時間眠ったたんだろう?いや、まだ夢の中にいるのか?
腹はへってないし、まだ眠い。ベッドの中にいるのはとても気持ちがいい。
暖かい、そして電気は点いていない。ああ起きたくない。多分腹がへっているんだろうけど、
そんなに空腹でもない。喉さえ乾いていない。
目を閉じているけれども、ぼくは今ぼく自身を見ることができる。ぼくは小さくなりつつある。
ぼくの両手……それには五本づつ指がついている……それらは今ひとつになりつつある…大きなひとつの指、しかし指のようには見えないな、
それはもっと太いなにか、そう、球根かなにかのようだ……いや、それはほんとうに太くて短い球根のようだ。
足。両足がひとつにくっついて、一つの太くて短い球根状のものになっていっている。ぼくの四肢は短く、短くなってきている。あぁ!今それは塊のようだ。
ぼくは黒い塊になりつつある。その色は深い、深い黒だ。そしてツタに覆われている。その表面はたくさんの、たくさんの細い根で覆われている、
それはツタのようだ、いくらかのそれは赤く…本当に赤い、赤だ…そしていくらかは白い、が、ほとんどのその根は黒い。そして鼓動している。
その塊は肝臓のようにもみえる…黒い肝臓。ひどい臭いだ。この臭いは排泄物の臭いだ。が、次の瞬間それは花の香りにもなっている。
これらの臭いは交互にやってくる、毎秒のように。どっちが本当の臭いなのか…たぶん、そのひどい方だ。おお!!ぼくはいまぼくの核に近づいている。
ぼくはぼく自信の核を見ているのだ。そうだ、今ぼくはその核について”考えて”いる。ぼくの思考はぼく自信の核、それについて考えている。ぼくはその黒い核をスライスして食べるのだ。
その後何もなくなってしまう、いやぼくはそれをマッシュするのだ。ぼくはそれをマッシュしたい。大きなボールとすり潰す為のヘラをくれ!
ぼくはそれをほんとうにすり潰したい。ぼくはただ、ひとつのことを確かめたいのだ。そのすり潰したものを固めて、それが二酸化マンガンとマグネシウムによる化合物と似ているかどうか。
そしてぼくはそれからでてくる蒸気を見ることができ、臭いを嗅ぐこともできるだろう。ぼくはそこにたくさんの、たくさんの精子を認めることができるかもしれない。何故かはわからないがその精子達が皆死んでいることがぼくにはわかる。
しかしいずれにしてもその塊はぼくなのだ。その塊はぼく自身である。ぼくがその塊にたいして何かをすることに飽きたとき、ぼくはそれを地面に撒き散らすだろう。それでおしまいだ。
それだけだ。ああ、ぼくはそれをやりたい、ほんとうに。ぼくは今幸福だ!ぼくは今、それ、すなわちぼく自身の核について考えるつづけることができている。それについて考えることに集中し続けることができている。
つまり、ぼくはいまだその塊を見続けることができている。ぼくはドラッグをやっているわけじゃない。ぼくは正気で、純粋に、それについて考えているのだ。
頭痛だ。突然頭痛が襲う。止めてくれ!頼むから止めてくれ!あぁ、聞こえる、現実世界の音が聞こえてくる。何も聞きたくない、頼むから止めてくれ!光まで見える、止めてくれ!光などいらない!
ああ!見よ、ぼくは突然、急激に成長を始めた。ぼくの体は膨張している…もとの大きさに戻ってゆく…戻りたくない、しかし、もうぼくにはそれを止めることはできない…頭痛だ。町の雑踏が聞こえてくる。
ぼくは目覚めている。ぼくは目覚めたくない、ほうっておいてくれ!
ぼくは今、ここに現実に存在することを認めなくてはならないのだ。