満員礼状
満員電車
地下鉄
この人達と二度と顔を見ることはない
話をすることもない
名前もない
でも
一人一人が生きている
みんな帰るところがあって
それぞれ向かっている
別々のことを考えている
だから
ここでは
僕が消えてしまっても
誰も困ることはない
僕が遠くへ行ってしまって、とんでもなく遠くへ行ってしまって
僕の家族が困る
たったそれだけのことだろう
それなのに
僕は遠くへいきたくない
つめ跡は
残らないというのに
つめ跡は
ほとんど残せないというのに
帰るところは無いのに
僕は遠くへ行きたくない