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昨日は、貴重な本をお貸しいただきまして、ありがとうございました。表記の難しい漢字が多く、読み取れない部分も多々ありましたが、名づけのなんたるかが明確に記述されており、味のある文体で、大変興味深く読ませていただきました。残念ながら全てを読破する事はできなかったのですが、本を傷めてもいけませんので、ここにお返し致します。
息子の名前は、「小川 藍任」(おがわ あいにん)にしようと考えています。「あいにん」は、ハニサのたっての希望でつけたもので、変わった名前ですが、呼びやすく、頭に残りやすいという点で、僕も父も気に入っています。これはマレー語で「我が子」を意味する「ヌルアイニン」という語からとったものです。また、「ヌル」は光、「アイニン」は「眼」という意味もあるのだそうです。
「あいにん」に漢字を当てはめる事は、思ったより難しかったのですが、読みやすくて印象に残る、気に入った漢字として「藍任」を選びました。最初は教えていただいていた10画と5画の漢字を重点的に調べ、「晃」、「目」、「民」などを候補として挙げたのですが、字がしっくりこない、或いは読めないといった理由で、誠に残念ながら、断念しました。折角、調べていただいたのに、本当に、申し訳ありません。「藍任」は、陰陽配列と地格にちょっと難があるのですが、他は全て吉となっているので良しとしました。もし、僕が気づいていない何か重大な問題がありましたら、お願いばかりでとても恐縮なのですが、ご指摘頂ければ幸いです。
今晩から、ハニサが産婦人科の病院に入院しています。陣痛は6〜10分刻みで起こるのですが、子宮口が固く、出産は明日以降になりそうです。無事、出産できるといいのですが。 それでは、失礼致します。子供が落ち着いたら、機会を見つけてお礼に伺えればと考えています。まずは、書面にて御礼申し上げます。 寒い日が続いています。お体にお気を付けください。
ヒーフー、ヒーフー、皆が声をそろえてハニサの深呼吸を促す。陣痛強度を示すプロッタが上がりはじめる、と助産婦さんが「はい、大きく吸って!」。んっ、と いきむハニサ。赤ちゃんの心拍数が150を超える。力みの加減をみながら、「はい、息吸い直して!」。はー、「すぐいきんで!」、んーっ。はー、んーっ、陣痛強度が徐々に下がってくる。はー、「はい休もう」。
もう、何度繰り返しただろう。最初の数回で、赤ちゃんの頭は見え隠れするようになったものの、なかなか見えっぱなしの状態にはならない。じりじりしながら、次の陣痛を待つ。この3分間が、僕らにとって、だんだんと長く感じられるようになってきた。
分娩室に入る前よりも、間隔が長くなったような気がする。もしかしたら、陣痛が治まってきてしまっているのでは?
一瞬、また後で仕切り直しになりそうな気がした。 でも、冷静に考えてみると、頭が見えるようになったら、早く出さないと、赤ちゃんが危ない。僕らの前では、全く冷静だった病院のスタッフも、当然、そう考えていたに違いない。
厳しい顔をして、先生がスタッフに加わった。白髪の大柄な先生だ。「まじめにやらなきゃ、出ないぞ」先生の言葉にハニサの顔色が変わる。「ねぇ、まだ出ないの」、「もうダメ」、最初のころのそんな言葉はもはや出なかった。必死にいきむハニサの顔に脂汗が滲む。先生は産道を押し広げながら、お腹の上から、赤ちゃんを腕で押し出す。看護婦さんの力とは、比べものにならない。んーっ、あばらを押されて、あまりの痛さに いきみながら上体を起こしかけるハニサ。一瞬、赤ちゃんの心音が消える。はー、ハニサの頭の方から見ているだけの僕も、一緒に いきまずにはいられない。
陣痛が引いたときの赤ちゃんの心拍数が心なしか下がっているようにみえる。ハニサも目に見えて疲れている。と、先生がベッドの角度を緩くした。異常に盛り上がった出口は、昔テレビで見た怪獣の産卵シーンを彷彿させた。何回目の いきみだっただろう。既に、頭は見えっぱなしの状態だったようだ。羊水があふれ、赤ちゃんの頭髪が見えた。
「次こそ出すぞ」との先生の声に、疲れ果てたハニサとは裏腹に、僕の期待は高まっていた。それまでは1周期3回までしか いきめなかったハニサが、最後の力で4回目の特別大きな いきみを絞り出した。
頭が出た!
先生が手早く赤ちゃんの全身を引き出す。へその緒が首に1周巻いていた。泣き出そうとする赤ちゃん。でも、気管が詰まっているらしく、声が出せない。慣れた手つきの先生は、すばやく
へその緒を解き、つぎ目から数センチのところでそれを切ると、赤ちゃんの口を吸引した。
泣き出す赤ちゃん。感動した。思わず涙が出た。1997年1月26日、日曜日、午後3時15分。静岡県三島市。富士山の奇麗にみえる冬の出来事だった。
おくるみ に包れて、赤ちゃんがハニサの手元に連れてこられた。3725グラム、これ以上待てない状態だったと、今になって先生が言った。
アイニン、この赤ちゃんが君なんだよ。
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