『天使の王国 平成の精神史的起源』
浅羽通明
幻冬舎文庫 533円+税
ISBN4-87728-486-9
だが、ここで、ひとつの反駁が考えられる。動機がアイデンティティ確認で実効性は無に等しく、効果は参加した人のナルシシズムの満足だけだとしても、少なくとも悪いことではない。何もやらないよりはましではないかという反駁だ。
(中略)
こう言われると、ちょっと反論が難しくなってくる。マクロな状況に関心を抱くことは良いことだ、それは誰もが知っておくべき教養なのだ、という良識を私たちみんながどこかに持っているからだ。
だが、果たしてそうか。
この自明に思える良識こそ、いちど徹底的に疑い洗い直してみる必要があるのではないか。みんながマクロな問題へ目を向けるとなぜ良いのか。それは実はもっと肝心なことから目をそらすことではなかったか。
(「新聞投書に見る「発言したい欲望」」p242〜243)