『ターミナル・エヴァ 新世紀アニメの世紀末』/永瀬唯[編]
『ターミナル・エヴァ 新世紀アニメの世紀末

永瀬唯[編]
水声社 1200円+税
ISBN4-10-103616-0

「気持ち悪い」
 このみもふたもない科白がある限り、黙示録的な滅びの大地も、卑俗な現実と化す。


 ほとんどがあっさり切り捨てられたとはいえ、ロゴス=論理にもなっていなかった、オカルトがらみの謎やらの残り滓はまだ山ほどある。
 見たくないものを見てしまったことを否定するために、これまた山ほどの謎解きとやらが、オタク消費者たちのために市場にあふれることだろう。何にでも神がかりの願望充足を見出す宗教トンデモもまた、今まで以上にエヴァへとむらがるだろう。
 だが、その一言がある限り、シンジにとって、僕らにとって、あのラスト・シーンは猥雑な現実である。アニメだから虚構なのではない。フィクションもまた、人の心を傷付け、刻印を残し、場合によっては死をもたらすという点において、あなたの日常よりもずっと現実的でありうるのだ。
(永瀬唯「終局の夏」p11)


(この程度の文章は本来ならば、「感想」のページに書くべきだが、長くなったので書評として分けることにした。だが、突っ込んだトータルな論評はなしていないので、「感想」「雑感」程度のモノだと思ってください)


 総評として一言。
 論文の質や方向性が綺麗にまとめられているというものではないのは、評論集だからだろうか(三部の分け方もいまいち明快ではないし)。しかし、各論文を有機的に結びつける「なにか」が見えてこないのは、アンソロジーとして有るべき姿ではない。「寄せ集め」感は少なからずある(これは他の「エヴァ評論集」にもいえることだが)。
 とはいえ、ここに見るべき論も多くある。これで1200円ならコストパフォーマンス比は確実に高い。買って損はしない一冊である。

Grade [ B+ ]
version.1.1.97.08.27.


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