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変わらなきゃ
By 一歩
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『おーぷん・まいんど。
変わらなきゃ。』
「そうだよな。変わらなきゃな。
ようし、いっちょやったるかあ!」
「最近、積極的だね。君、いい方向に変わったよ。
なんだか、まぶしいくらいだ」
「本当? 嬉しいわ」
「部長、なんだか最近変わってきたわね。
生え際が」
「植毛?」
「気にしてたしね」
『おーぷん・まいんど。
変わらなきゃ。』
「新しい携帯の番号教えとくよ」
「なんだ、また契約会社変えたのか」
「今度の方がお得。通話範囲が広がったし」
「あれ、車変えたの?」
「うん。モデルチェンジしたからね」
「そうかあ。あの業界も生き残り戦略に大変だね」
「コンピュータも世代交代烈しいよなあ。3か月したら新製品でるってよ。」
「俺もそろそろ買い変えるか。
あれ? ホティサーブ、繋がらない」
「ああ、告知みてないのかお前、今度低ロードは閉鎖になったんだ」
「そんな変更聞いてないよ。いつの間に変わったんだ」
『おーぷん・まいんど。
変わらなきゃ。』
「よお、久しぶり!」
「まあ、貴方こそ。元気、相変らず……変わったわねえ、なにその真っ赤に染め
た髪。すっごおい」
「……お前、お前こそ、その話し方……」
「うふ。性別、変えたの」
「貴方も自己開発セミナーに参加しませんか、嫌な自分から変われます」
「今こそ悔い改めよ、古き心を捨て真の信仰を持つのだ、さあ、私と共に祈ろう」
「俺はタフだ俺は無敵だ俺は不死身だ、そうだ、不死身だ誰にも負けない負けない」
「変わってるのは判ってる。でも、今のままじゃ駄目なんだ」
『変わらなきゃ。』
「花嫁は衣装直しの為に中座させていただきます。さあ、どんな姿に変わって」
「さよなら」
「ああ、待って!……
はあ。
なにが悪かったんだろうなあ。女心と秋の空。永遠の謎だよ。」
「その服装のセンスから変えなきゃな。
時代のニーズに全然あってないぞ」
「でないともてない?」
「もてない」
『変わらなきゃ。』
「ううん、可愛い!」
「いきなりディスプレイにはりついて、なんなんだヘンタイ」
「いやあ、このアニメのコがさあ。なんたって魔法で変身するんだよ」
「……」
「な? いいだろ?」
「同意を求めるなこのマニアめが」
「隊長、今年はやたらに応募が多いですね」
「ここしばらく、我が秘密の正義戦隊社には新人が来なかったのだがなあ。
いったいどういう風の吹きまわしだか」
「全員、変身ヒーローが第一希望です。
その為には改造人間になってもいいというのがアンケート調査によると約7割」
「今度の患者は?」
「おとなしいよ。ただ、スプーンを手放さなくてさ。
こう、高く掲げ持って飛び跳ねてるんだ」
「じょわっ。
じょわ!」
『変わらなきゃ。』
「また総理が変わったってよ」
「またあ?」
「まったく、お前といい鈴木といい、どうして離婚なんかしたんだよ。
まあ飯でも食いに」
「すまん、俺弁当があるんだ」
「え、自分で作ったのか?」
「まさか、妻だよ。再婚したんだ」
「さいこん、誰と」
「その鈴木君の妻だったヒトだよ。
取り変えたんだ」
「寄生してくれるペット、ってないですか」
「はあ?
あの、例えば、ダイエットとかが目的で?」
「いえ。例えば右手に寄生してナイフとかに変形したり、主人の危機には全身を
取り囲んで武装化したり」
「申し訳ありません、当店ではそういう動物は扱っておりませんので」
『変わらなきゃダメなんだ』
「本場所最初の白星です。いやあ、しかしあそこからよく変わりましたねえ」
「うっす。やれると思ってたっす」
「こんな仕事はもう嫌だ、デューダしてやるう!
すみません、その転職マガジン下さい、あ、月刊じゃなくて、そっちの、そう、
日刊の方ね」
「体質を変えたぁ?」
「なんとか薬を呑んでね。毎年この時期に花粉症じゃ仕事にならないからね」
『変わらなきゃダメなんだ』
「いよいよ1990年代が終わります。今、世紀が変わろうとしています」
「突然変異菌ですね」
「まさかこんな速度で変わるとは。抗体の作成が間にあうかどうか」
「奇形児の出産が多いのは、ひょっとして」
「判らん。因果関係は不明だ。新生児の方が抵抗力の強い感触もあるが」
「異常気象だ。異常気象だ」
「時代が変わるんだ。次に来るのは氷河期か、それとも灼熱なのか。
恐竜を地表から消した変化が、再び」
『変わらなきゃダメなんだ!』
「見て。
青虫が蝶に変わったよ」
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