合成着色料
『ぴんぽーん』
「はぁい。……よう、どうした。」
「いやあ、財布落としちゃって。下宿の鍵がないんだわ。今日、泊めてくれん?
それから、ご飯も。ほら、金無いからさあ。も、バイト後だから腹減って腹減って」
「そらまあ、いいけど。あがれよ。」
「じゃまーっす。」
「で、何食う? 今あるのはねえ、えーと、ご飯だろ、梅干しだろ、たくあんだろ、後はキムチに紅ショウガに……」
「おいおい、なんじゃそりゃ。米だけやン。せめて卵ぐらいないんかい。」
「あるけど、日付は二ヶ月前だぜ。」
「……いい、ご飯と漬け物だけでいい。食わせてくれ。」
「ほれ。」
「何これ、なんか色の鈍い梅干しやなあ。もしかしてこれも腐ってるんじゃ」
「いちいちうるさい奴だなあ、黙って食えよ!
それに文句言うてるけどな、とにかく口に入れてみろ。」
「あ、うまい!」
「だろうが。
俺の冷蔵庫には俺がうまいと思うもんしか置かんのじゃ」
「卵は?」
「なんか言ったか」
「いえいえ、なーんも。いやしかし、これいけるわ。」
「だろう? だいたい、見た目の色なんかで判断するのが悪いんだよ。梅干にしろ、紅ショウガにしろ、やたら鮮やかに赤いのは、あれ、着色料だぜ。毒だよ、毒。
俺はそういうあぎとい色のは避けて、自然色なヤツを買い物してるんだ。」
「うんうん。」
「やっぱり食べる物には気をつけないとね。大事だよ。」
「うんうん。おかわり。」
「ほれ。」
「いや、うまいわ。なあ、これ、どこで買ったん?」
「どこって、あの学校前のローソンだよ。ええと、ほら、これがそのパッケージ」
「どれ、貸して。……こんなの、並んでたかなぁ」
「並んでたんだよ。目が悪いんちゃうか、お前。」
「あ。おい!」
「なによ」
「これ、原材料の所に『無着色料』含有って書いてあるぜ」
something tell me.
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