MinMin's Diary



 Today's Diary
Go back to  Index
Go back to  Last Week



10月29日

昨日、喫茶店で友人と会っていたら、隣の席にいるおじいちゃん達が声をかけてきた。
おじいちゃん達の話していた中国語から、彼らが外省人だというのは解った。
「みんな、中国語が喋れるのかい?」
中国語で話しかけてきた。
「はい、できます」
そう友人が答えると、一人のおじいちゃんが、
「私達もみんな日本語ができるんだよ」
と言うではないか。
「じゃ、私達、同じですね」
そう答えると、おじいちゃんは、
「なんか日本語で話しかけてみてごらん」
と言ってくる。
「そう言われてもなぁ」
そんな風に躊躇していると、なんとあちらさんが日本語で話しかけてくるではないか。
「私達はね、同窓会を開いているんですよ」
聞けば満州の学校での同窓生だという。
私の友人のお父さんも満州で日本語を習った人で、彼女の家に電話をかけるとお父さんが日本語で、「はい、ちょっと待ってね」なんて答えてくれたりする。
でも、満州出身の人達と日本語で会話をしたのは初めてだった。
ひとしきり出身地の話をした後、一番最初に話しかけてきたおじいちゃんが、
「みなさんは中国語の勉強に来ているの?」
とたずねるので、
「いえ、みんな夫が台湾人です」
と答えると、なんと、おじいちゃんの奥さんも日本人だと教えてくれた。
「私は85歳、妻は80歳」
奥様はおうちにいらっしゃるんですかとたずねると、
「まだいってませんよ、おります。はっはっは」なんておっしゃる。(^^;
そのうち、唐突におじいちゃん達は帰る時間になったらしく立ち上がった。
「それじゃ、お嬢ちゃん達、さようなら」
なんてあいさつをしてくれたりして...。
お嬢ちゃんねぇ...、おじいちゃんからしたら私達もお嬢ちゃんかもね。
それまで比較的黙っていたおじいちゃんが歩きながらながら一言、
「あ〜、しんど」
なんておっしゃる。
「大阪弁だよ」なんて後から注釈をつけてくださった。
中国の北の大地で共に学んだ人達が老いを迎えた時に、その大地から遥か遠い南の島に集っている姿を見て、歴史の流れの不思議を感じた。
一方、私達はというと、日本にいる時は知り合ってもいない者同士が、南の島で一緒にお茶を飲んでいたりする。
その隣で満州で青春時代を過ごしたおじいちゃん達がお茶を飲んでいる。
なんだか、とっても不思議な気持になった。
そして、おじいちゃん達がどのような過程をたどって、この南の島に来たのだろうと思い、遠く故郷を離れてしまったけれど、この台湾で幸せな老後を迎え、一日も多く長生きしてほしいと思った。
台湾をあまり知らない頃、よく、外省人は日本人が嫌いだと言われた。
でも、台湾に暮らしてこのかた、外省人のおじいちゃん達にいじめられたことは一度もない。
出会ったおじいちゃん達はいつも優しかった。
私の運がいいのかもしれないが、常に可愛がってもらった。
日本語ができないおじいちゃんにしても、ちょっとお国訛りのある中国語で話しかけてくれたし、おまけに私の下手な中国語を笑いはしなかった。
「それだけ喋れてえらいえらい」とおだててくれる。
いつも思うのだが、「○○だからこう」ということは絶対に言えない。
台湾が親日だというが、それだって変だ。
その理由を多くの人が戦前の日本政府による統治が、現在の政府の統治よりも優れていたからだとしている。
果たしてそうだろうか。
こうやって日本人を見掛けて話しかけてくるのを親日だというなら、満州にいたおじいちゃん達だって親日になるだろう。
そうすると、おじいちゃん達のいた満州の日本政府をおじいちゃん達が肯定していたということになるのだろうか?
ことはそんな簡単じゃないと思う。
遠い昔に自分の人生に影響を与えた要因の一つである「日本」。
それに対して、彼らは様々な思いを胸に抱いていたであろう。
しかし、老後を迎え、人生の終焉に差しかかり、彼らはそうした思いを越えて、若かった頃の自分と関わりあった日本を懐かしく思うのではないだろうか。
それは満州にいたおじいちゃん達だけでなく、台湾で生まれ育ったおじいちゃん、おばあちゃんにも言えるだろう。
時代の流れの中で、様々な思いをしてきただけに、こうしたおじいちゃん、おばあちゃんは他人に優しいのだ。
そこには外省人も本省人もない。
痛みを受けたものだからこそ他人の傷みに敏感で優しいのだと思う。
故郷を失ったおじいちゃん達は、心の中に、そして友人の姿の中に失われた故郷を見るのだろうか。さらに、時に耳にする日本語に、ふと若き日の懐かしい故郷を感じるのかもしれない。そこには「親日」だのなんだのという薄っぺらな言葉では語り尽くせないおじいちゃん達の人生があるんだと私は思う。
 



Go back to  Index
Go back to  Last Week

minmin@geocities.co.jp