MOONLIGHT LOVE STORY |
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このお話は、涼馬が愛娘に買ってきた絵本「どんなにきみがすきだかあててごらん サム ブラットニィ著 -評論社-」のお話をヒントに書いた物です。 とりさんのホームページで、とりさんと涼子さんの短い掛け合いを書いたことはありますが、これ程長い物語を書くのは、生まれて初めての経験です。 稚拙ですが、よかったら最後までおつきあい下さい。では。 |
「どんなに君のことを好きか」 食事の後、公園を一緒に散歩するのも久しぶりだね。とりさん。 うん、やっぱりあなたと一緒にいると楽しい。 でもね、昨日までずっと落ち込んでいた私を、あなたは知らないでしょうね。
「‥‥いや。ここんところ、ずっと会えなかったから、自分も会いたいと思ってたんだ。」 悪かったかなぁ。でも、もう限界だよ。ひと月以上ずっと会えなかったんだもの。 忙しいのは私も同じだけど、こっちが一生懸命、時間を作っても、いつも断られてばかりなんて。 恋はどちらかがいつも片思い、なんて言うけど、これじゃ私の方がずっと「想って」ばかりじゃない。
「違うよ、忘れてなんか‥‥。」 とりさんに訊いてみようかな。 決めた。私、立ち止まってとりさんに尋ねる。
「そんなこと‥‥‥‥。」 毎日とりさんのことばかり想って、胸がキュンとなりっぱなしのこの状態、どう表現したら分かってもらえるのかな。そうだ。 「こんなに!」 ちっちゃな子供がすることみたいで、結構恥ずかしかった。 けど、少しすっとした。 さあ、とりさん。この気持ち、受け止めてよ。 とりさん、急に両手広げた私を見てびっくりしてた。 その間、2、3秒位。 でも、次の瞬間のとりさんの行動は、私のまるっきりの予想外だった。
すごいジャンプ力。 指先が街路樹の葉を叩いて、ピシッと音を立てる。 着地した後、私の前に立って、微笑むとりさん。 ふざけてる風でも、からかってる風でもない、真面目で優しいまなざし。 私もこれには参っちゃった。 だって、間違いなくとりさんの方が勝ってるんだもの。 ‥‥うん。分かった。 でも、私だって負けたくないッ! これが16か17歳の私だっら、 「でも涼子はとりさんのこと、これっくらい好き!」って3段跳びくらいやって、 元陸上部の面目躍如も果たせるんだろうけど、このスカートじゃちょっとね。 悔しいなぁ‥‥。
少し歩くと視界が開けて、きれいな船が何隻も停泊してる。 対岸の街の明かりもきらめいて、うん、結構ロマンチックじゃない。 波打ち際まで来ると、ほほに当たる潮風が気持ちいい。
高知は、とりさんの故郷の長野より、ずっと遠いわ‥‥。 ‥‥もう私、何にも考えられなくなっちゃった。 もうあたりはすっかり暗くなって、きれいな夜空がどこまでも広がっている。
「とても、とても、 遠くだ‥‥。」 私、助手席に座った後も、恥ずかしくってまた目を閉じてしまった。 でも月明かりで、私が泣いてるの、分かっちゃってるんでしょ。 とりさん。 とりさんは私の席のシートをゆっくり倒して、そのまま私のほほに、優しくキスした。 私がうっすらと目を開けると、 とりさんは月明かりの中で、私に微笑みながらそっとささやいた。
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