A昆虫記の巻

自他共に認める昆虫好きである。私の昆虫好きはひとえに虫を臆さずに自然と接する楽しさを幼少の

ミギリより私に教えてくれた今は亡き母の教育の賜物である(嘘)。昆虫大好き少女だった私はバッタ、

ヨコバイ、土グモの三大マイナー昆虫たちと親睦を深めるのに日々時間を費やしていたと言っても過言では

ない。虫を見ると心がときめいて変な高揚感と共にそろりそろりとエモノに近づいていっきに捕まえる

快感は今でも忘れられない。捕まえたバッタに「ピーナッツ・バッタ」と命名していたのもこの時期である。

外国に引っ越す際にぎりぎりまで飼っていたカタツムリを連れて行こうと粘ったこともあった。

日本にいた頃は都心だったとはいえ、公園や原っぱにはありとあらゆる所に子供心をくすぐる昆虫たちがいて、

まさに黄金期であった。が、 アメリカに引越したとたんに待ち受けていたのは大の大人の男でもビビるような

蟻をウン十倍にしたようなグロテスクな怪虫や、取り除いても蘇ってくる女郎グモなどのハッキリいって

オトモダチになりたくないタイプのゲテモノたちだったのである。子供心にトンデモない国に来てしまった

と焦ってみても後のフェスティバルだったのも今では甘酸っぱい思い出である。そんなある日越したばかりの

家で何気に開けたクローゼットに黄色いヨコバイを見た小学三年生の昆虫大好きっ子が、たとえそれが実は

ペンキの染みだったなんてオチが待っていようとも 、とっさに条件反射でとらえてしまったのは

仕方がないというものだろう。