爆乳戦隊・パイレンジャー


第五話「戦慄! キングレイパー出現!!」

 

時おり吹く風が、樹海の木々の葉を揺らす。

 そのざわめきが収まると、蝉たちがその残り少ない短い命を振り絞るように、鳴き始めた。

そしてパイブルー・眞鍋かをりも、その蝉たちと同じく短い命を散らされようとしていた。

「アアッ、アアアンッ、イヤアアアッ!」

 引き裂かれた青いパイスーツからこぼれ出たかをりの剥き出しの爆乳は、レイパー獣・カメレオンレイパーの手で荒々しく揉みしだかれていた。その白い乳房は揉まれつづけているうちに、ピンク色に染まっていた。そして大きく広げられたかをりの下腹部には、カメレオンレイパーの長大なペニスが深々と打ち込まれていた。凶悪なペニスが、正義の戦士の股間を犯し、熱くヒートアップしていた。

(あああ、もう……だめ。このまま私はこのレイパー獣の精液を注ぎ込まれて、レイパー獣の子供を生みながら死んでいくことになるのね……)

 なすすべもなく、かをりはレイパー獣に陵辱されるがままとなっていた。

パイレッド・優香、パイブラック・栄子は京香長官とともに、敵に捕らわれたままだ。パイイエロー・乙葉とパイホワイト・若菜は、その三人を救うため先行している。もう誰も彼女を助けてはくれないのだ。

恐怖と屈辱、そして絶望感に、青いマスクの中のかをりの目からさらに涙が溢れた。

「ハヒッ、クウウウ! オオッ、し、締りのいいマンコだぜ、パイブルー! さあ、そろそろ孕ませてやるからな!」

カメレオンレイパーは息を荒げ、腰の動きをこれ以上ないくらいに早めていく。

「アッ、アアッ、アアーッ!」

「ウウッ、うおオオーッ! イクッ、イクぞおおおおおっ!」

(ああっ、もうダメッ!)

 かをりがギュッと両目を閉じ観念したその時だった。

ダダダダダダッ!

 耳を聾するほどの、すさまじい機関銃の射撃音が間近で聞こえた。

「……グエッ! ギャアアッ!」

 カメレオンレイパーの雄たけびが悲鳴に変わった。目を両手で押えて悶絶する。だれかが機関銃で目を撃ったのだ。荒れ狂うカメレオンレイパーのペニスが、かをりの身体から抜ける。そのまま仰向けにひっくり返った。

「ウウッ、ウアアアアッ!」

 ドピュピュピュッ!ドピュルルッ!

 カメレオンレイパーの亀頭の先から、無駄弾となったザーメンが空しく宙に飛んだ。

「今よっ! パイブルー!」

「えっ!」

 いきなり声をかけられて動揺したかをりだったが、すぐに冷静なパイレンジャー戦士に戻った。

 立ち上がると両腕をクロスさせ、自分の二つの乳房を手に取った。

「再爆装! レインボーチャージ!」

 かをりの両手首のパイ・リストが、まばゆい虹色に光り、輝く。

 破損したスーツがいったん除装され、再び青いパイスーツがかをりの全身を包んでいく。

パイレンジャー基地の転送ルームには常時パイスーツの予備が用意されており、「再爆装」のコールで、破損したスーツを除装し、再び新しいスーツが装着されるのだ。

「再爆装」を終えると、パイブルーは新たに装備されたパイレーザーを腰のガンベルトから引き抜いた。

「パイソード!」

 レーザー銃の銃身が、パイブルー専用の日本刀モードに変形した。電光の刀身が煌めく。

 カメレオンレイパーは、両目から緑色の血を流したまま立ち上がった。だが視力を失い、足元がおぼつかないようだ。

「いくぞ! カメレオンレイパー!」

 パイブルーはパイソードを八双に構え、腰を落とした体勢でカメレオンレイパーとの間合いを一気に詰めた。

「くらえ! 『パイソード・水面返し!』 」

 そう叫びながらレーザー剣を水平に薙ぎ払った。

 パイブルーのもう一つの必殺技が炸裂する。

その名のとおり、あたかも水面をなぞるように。

蒼い稲妻がカメレオンレイパーの身体を上下二つに引き裂く。

「グギャアアアアアア!」

 カメレオンレイパーは、断末魔の叫びとともに灰となって消えていった。

「やった……やったわ!」

 パイブルーは、剣道で言う「残心」、つまり打ち込んだ後も残していた気合を緩やかに静めていく。呼吸が静まると、パイソードをレーザーモードに戻し、ホルスターに戻した。

「お見事ぉ〜! さすがは、パイレンジャーね」

 パチパチと拍手をしながら、先程の女性の声が背後から近づいてきた。

 ハッとしてパイブルーが振り返ると、01式多機能ライフルを肩から下げた小柄な女性自衛隊員だった。

「あっ、あの、あなたは?」

「陸上自衛隊・第一空挺団・レッドベレー小隊、小隊長の菅野美穂一尉。よろしくっ!」

 ヘルメットを軽く持ち上げながら、菅野一尉はニッコリと微笑んだ。戦闘服の肩ベルトには、レッドベレー=紅いベレー帽が挟み込まれている。

「レッドベレー小隊・・・・・・」

 陸上自衛隊の最精鋭部隊・第一空挺団は、格闘術、サバイバル訓練、空中降下などの各種の訓練を積んだレンジャー隊員が多く配属されている部隊である。その中で、男性隊員と同じ過酷なレンジャー訓練に耐えた女性自衛官だけで編成されたチームは、アメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」にならい、「レッドベレー」と命名されたのである。

「さあ、みんな、もういいぞ。出て来い!」

 菅野一尉が後方の茂みに向かって叫んだ。

「おう!」

大きな声とともに完全武装の自衛隊員たちが現れた。その数二十名。そのうち何人かの隊員は補給物資を背中に背負っている。

「こいつら、あたしのかわいい部下なんだけど、悲しいかな隊長と同じで微乳なのよねー。あなたみたいに爆乳だったら、みんな、即、パイレンジャーのメンバーになれる能力はもってるんだけどねー。アハハハッ」

「あっ、あの、ありがとうございましたっ」

 パイブルーが深々と頭を下げた。 

「ああ、いいのいいの。これは任務なんだから。『パイレンジャーを援護して、レイパー獣を殲滅せよ』っていう命令だからね。……で、どうするの、パイブルー? 身体の方は大丈夫?」

「はい、洞窟に捕まっている長官や仲間達が心配ですから……」

「そうね、先を急ぎましょう。……ようし、みんな、前進だ!」

「了解っ!」

「レンジャー!」

「レンジャー!」

 口々にそう叫びながら、レッドベレー小隊は斥候役の隊員を先頭に洞窟を目指して前進していく。

 菅野小隊長とパイブルーもその後を追った。パイイエローとパイホワイトがなぎ倒したブッシュを早足で踏みしめながら、菅野一尉が語りかけてきた。

「ねえ、知ってる、パイブルー? 京香長官はね、あたしたちレッドベレー小隊の初代隊長だったのよ」

「えっ、そうなんですか」

「うん、で、第一期生で入隊したのがあたし……。」

「どんな隊長だったんですか」

「鬼ね」

「えっ?」

「そりゃーもう、鬼のような隊長だったわ。地獄のような訓練ばっかり。あ、でもね、それは長官の愛情だったんだよね。もし万が一、『実戦』になっても、生き残れるようにって……」

 当時を思い出したのか、懐かしそうに微笑みを浮かべながら、美穂は話し続けた。

「それに、訓練が終わるとあたしたちの話し相手、相談相手になってくれたの。やさしいお姉様って感じだったわ」

「ふうん、そうだったんですか」

「あ、ごめんね。さ、先を急ぎましょう」

「はいっ」

 二人の歩みが速まっていった。

 

その頃、洞窟の中では捕らわれたパイブラック・小池栄子が犯され続けていた。

 鎖で宙づりになった全裸の栄子の身体を、レイパー獣コウモリレイパーのペニスが、刺し貫いているのだ。

「ウウウッ、うぐうううっ、ウウウウッ!」

 コウモリレイパーの発した催眠音波の影響で、まだ声が出せない栄子は、うめき声をあげて悶えているしかなかった。

「フヒヒヒッ、どうだ、俺のモノは? ほーれほーれ、もっと腰を使え、パイブラック!」

 グチャッ、ヌチャッ、ズチャッ……。

 肉襞を激しく擦りたてながら、凶悪なペニスが栄子の蜜壷を出入りしている。最初は必死に抗っていた栄子だったが、熱く疼いた結合部からは愛液が溢れ出ていた。

(く、くそおおっ! 油断さえしなければ、こんな奴、簡単に倒せていたのに……)

 屈辱と悔恨の涙が、栄子のふくよかな頬を濡らす。その涙が飛び散るくらいの、コウモリレイパーの腰の動きに伴って、栄子のでかメロン爆乳も激しく揺れた。すさまじい乳房の揺れは、ともすれば栄子の顔面に当るほどの勢いだった。

「ヒヒヒッ、いいぞいいぞ。もっと泣け! もっと乳を揺らすのだ、パイブラック!」

。だが、両手を鎖で繋がれたままの栄子には何も出来なかった。

「ウウッ、アアッ、アアアッ」

快楽の波が、次第に栄子の体内にこみ上げてくる。だが、その波が膨れ上がり崩れた時が、自分の最期を意味していた。

(ダメ、イッちゃだめだ。でも、あああっ、感じちゃうっ)

 ふと横を見ると、同じように全裸で鎖に繋がれた、鈴木京香長官とパイレッド・優香が栄子を心配そうに見つめている。

(ああっ、ごめんね、長官、優香……助けてあげられなくて、ごめん。でも、もう、あたし……)

 栄子の身体の力が抜け、快楽の波に呑み込まれようとするその時だった。

「そこまでよ、レイパー獣!」

「私たちが相手よ!」

 洞窟の入り口から二つの影が飛び込んできた。

 パイイエロー・乙葉と、パイホワイト・酒井若菜である。

「はぁっ!」

「とうっ!」

 二人は大きくジャンプすると、コウモリレイパーに飛びつき、栄子からそのおぞましい身体を引き剥がした。

「ヒキャッ!」

 不意を突かれて羽根を羽ばたかせる間もなく、コウモリレイパーは地面に仰向けにたたきつけられた。すかさずコウモリレイパーの羽の突いた右手にパイイエローが、左手にパイホワイトが飛びつく。柔道の腕ひしぎ逆十字を同時にかける。

「ヒギャアアア!」

 あまり太いとは言えないコウモリレイパーの腕がきしむ。イエローとホワイトの技は完全にきまっている。柔道の試合なら、「まいった」=ギブアップとなるところだが、この戦いにはギブアップはない。パイスーツのパワーを生かし、二人はコウモリレイパーの腕を折る。

「ヒキイイイッ!」

乾いた音と共に、コウモリレイパーの肘が折れた。奇妙な形で捻じ曲がった。羽根も曲がり、もう空を飛ぶことは出来ない。イエローとホワイトはコウモリレイパーから距離を置くために飛び退った。

「ヒギエエ……。お、おのれ、き、貴様たちも俺様の超音波の餌食にしてくれるわ」

 不自由になった手をぶら下げながら、コウモリレイパーが立ち上がった。超音波を発射するために口を開く。ゆっくりとコウモリレイパーの口が裂けていく。

それと同時にパイイエロー・乙葉が叫んだ。

「みんな、イクわよっ!」

その言葉を合図に、ゴーグルを着けていない京香、優香、栄子は目を閉じた。次になにが起こるかを知っているからだ。

「カアアアッ!」

コウモリレイパーの口が完全に裂ける。

 だが、その口から超音波が発射されるよりも、パイイエローの爆乳が唸りを上げるほうが早かった。

「喰らえっ、『爆乳! イエローフラーッシュ!』」

パイイエローが爆乳を突き出すと、その先端から強烈な黄色い光球が放たれた。パイイエローの必殺技の光子弾である。

強烈な光を放ったそれは、コウモリレイパーの顔面を直撃した。夜行性のコウモリレイパーにとっては地獄だ。眼球が焼け、視神経までが焼ききれたはずだ。

「ギャアアアアアッ!」

コウモリレイパーの悲鳴が響く。床に崩れ落ち、もがき苦しんでいる。

その様子を見て取ったパイホワイト・若菜が前に進み出る。

「とどめはわたしよっ! イクわよっ、『爆乳! ホワイトブリザード!』」

パイホワイトの乳房の先端から、強烈な冷気が放たれた。パイホワイトの必殺技だ。文字通り白い吹雪が、のたうち回っている黒いコウモリレイパーの身体に浴びせかけられた。コウモリレイパーの身体が白い雪に覆われ、やがて一塊の氷になっていく。

「ヒィイ、ギャアアア……」

悲鳴が凍りつくのと同時に、コウモリレイパーの身体も氷結した。

「さあ、砕け散るのよ、レイパー獣!」

パイホワイトが脚で氷結したコウモリレイパーを蹴り砕こうとする。

その時だった。

「待っ……て、若菜……。あ、あたしに……やらせて」

 コウモリレイパーの死によって、声を取り戻したパイブラック・栄子だった。

「栄子ちゃん……。わかったわ。イエロー、手を貸して」

 パイホワイトとパイイエローが栄子の手を拘束していた鎖を外し、地面に下ろした。

 超音波攻撃とセックス攻撃の余韻で、まだ少し脚がふらついていた。しかし、コウモリレイパーに対する怒りと恨みが栄子に気合を入れた。

「うおりゃあああ!」

 優香に習った空手の構えになる。

「こんのやろぉおおおお!」

 ものすごい蹴りが炸裂した。コウモリレイパーだった氷の固まりを蹴る。

 パイスーツを身につけていないのに、そのキックはものすごいパワーだった。

コウモリレイパーは粉々に砕け散っていった。

 パイブルーと「レッドベレー」小隊の二十一名が洞窟にたどり着いたのは、それから数分後の事だった……。

 

 東京・市ヶ谷の防衛庁の地下、パイレンジャー基地にも全員救出の吉報が入った。基地要員や自衛隊員、防衛庁の職員達は喜びに沸き返っていた。だが基地の留守を預かる本上一尉には、それを喜ぶ時間はなかった。パイレンジャーの新兵器に最終チェックの段階でトラブルが発生したのである。

「申し訳ありません、長官」

 レッドベレー小隊によって復旧した画像通信を通じて、本上まなみ一尉が鈴木長官に状況報告をしていた。

「起きたことは仕方がないわ。それで、トラブル解消の見通しは?」

「はっ、はい……二時間以内には解消します」

「……一時間でやりなさい!」

「はっ、了解しました」

 額の冷や汗を拭うと本上一尉は通信を切り、新兵器のチェックを続けている作業室へ内線電話をかけた……。

 

「おかわりぃ!」

 空き缶を放り投げると、パイブラック・栄子は次の缶詰に手を伸ばした。銀色のブリキの地色に黒で「鶏飯」と印刷されている。300グラムの鶏飯がぎっしり詰まった大型の缶詰なのだが、これでもう三個目だ。

「……あんた、よくそんなに食べられるわねー」

 パイレッド・優香はなかばあきれながら、すさまじい勢いで鶏飯をかき込む小池栄子を見ていた。二人とも、自衛隊の隊員服を着ている。

 アーミーナイフに付いているフォークで、三個目の鶏飯を掻きこみながら、平然と栄子が答える。

「……むぐっ、うん、だって、これ美味しいんだもーん。あ、タクアンちょうだい、これがまた美味しいのよねー」

 栄子は優香のタクアンをフォークで盗み取った。これも缶詰になっているタクアンだ。市販のものよりも細いが長めにカットされたタクアンがツナ缶ぐらいの大きさの缶詰にぎっしり入っているのだ。

「あっ、ダメよ栄子、私の分なんだからぁ」

「いいじゃん、優香はカップうどんで充分だよっ」

……昨夜からなにも食べていないパイレンジャーと京香のために、「ピンクベレー」の隊員が持ってきた補給物資の食料で遅めのブランチタイムとなっていた。洞窟の外に出たパイレンジャー達を、レッドベレー小隊の隊員が五名づつ四班に分かれて警護している。A・B・Cの三班・十五名は警護及び斥候に、残る一班、D班の五名がパイレンジャーの介護と食糧補給に働いていた。

 その様子を頼もしそうに眺めながら、これも隊員服に身を包んだ京香長官が、脇に従っている菅野一尉に声をかけた。

「……良く鍛えられてるわね、美穂ちゃん、いえ、菅野一尉」

 照れ笑いをうかべながら、菅野一尉が敬礼をした。

「ありがとうございます。久々に見せてもらいましたよ。さっきの通信、厳しかった頃の教官を思い出しました」

「フフッ、恥ずかしいわね。でも、本上一尉ならやってくれるはずよ。……それより気になるのは、キングレイパーの動向ね」

「はい、もうレイパー獣は全滅したはずですから、あとは首領格のキングレイパーだけかと思われますが」

「洞窟の中にはいなかったし、そんなに遠くに逃げているとは思えないのだけど……」

 そう言いながら、京香長官も再び食べかけの缶詰に手を伸ばした時だった。

「キャアアアッ!」

 樹海に女性の悲鳴が響いた。同時に01式多機能ライフルのセミオートの射撃音が響く。

「斥候に出ている隊員の声です」

 悲鳴と銃声の起こった方角を見て、菅野一尉は表情をこわばらせながら言った。

 除装していたパイブルー・かをり、イエロー・乙葉、ホワイト・若菜が京香長官のもとに駆け寄った。優香と栄子も缶詰とカップうどんを放り出して飛んでくる。食料をパイレンジャー達に配っていた五人のレッドベレー隊員も銃を手に取る。

「斥候A班、どうした、応答しろ」

 菅野一尉が無線機に向かって呼びかけるが、応答はない。

 と、別の方向からも悲鳴と銃声があがった。そしてさらに別の方向からも。

「B班、C班、応答しろ、おい、どうした!」

 無線機のノイズが聞こえるだけだ。

「そ、そん……な、まさか、フル装備の十五人が……」

 菅野一尉は呆然と立ちつくす。

 ガサッと音がして、樹海の草むらが揺れた。

 全員に緊張が走った。

 五名のレッドベレー隊員が、草むらに向けて01式多機能ライフルを構えた。

「待て、撃つな!」

 草むらの中から、人影が現れた。血まみれになったレッドベレー隊員だ。胸のあたりを鋭い刃物で差されたらしく、隊員服が赤く染まっている。 

「た、隊……長、キ、キング……レイ……ゴフッ!」

 その隊員は口から血を吐き、地面に倒れるとそのまま絶命した。

「お、おい、しっかりしろ」

 菅野一尉が倒れた隊員を助けおこそうと前に出ようとする。が、京香長官の手がそれを制した。

「だめよ、もう……死んでるわ」

「ちょ、長官!」

 京香を振り返る美穂の顔は、涙に濡れていた。かわいがっていた部下を殺された怒りに唇が震えていた。

「泣いている暇はないわよ。菅野一尉、このあとが……ああっ!」

 京香が説明をするよりも早く、「それ」はやってきた。

 草むらをかき分け、「それ」は姿を現したのだ。

 

 レッドベレーの隊員が据え付けていた通信用カメラが、その様子をパイレンジャー基地に伝えていた。

「遂に出たのね、キングレイパー」

 モニター画面に大写しになっているキングレイパーの姿に向かい、本上まなみ一尉が呟く。

「あ、あの、本上一尉……」

「美奈子ちゃん! 大丈夫なの?」

「はい……」

 パイピンク・小向美奈子だ。パイレンジャー予備軍である彼女は、京香長官とともにレイパー獣に襲われたのだ。間一髪パイレンジャーによって助けられ、現在まで基地のメディカルセンターで治療、休養していたのだ。

「本上さん、私も……、私も行かせてください!」

 思い詰めた表情でまなみに訴えた。迷彩服を着込み、いつでも出動できる用意が出来ていた。

「私だって、パイレンジャーなんです! みんなと一緒に戦います!」

「美奈子ちゃん……わかったわ、ちょっと待ってなさい。……私も行きます」

 本上一尉は、席を立った。

 

「こ、こいつが……キング……レイパー……」

 パイレッド・優香は絶句した。

 キングレイパーは、ごく普通の人間の男の姿をしていたからだ。

 長髪の若い全裸の男だ。美術の教材の石膏像を思わせる彫りの深い顔だ。股間の男根は、獲物を求めているかのようにいきり立っていた。

「きゃあ〜ん、美形だわ!」

「乙葉ちゃん。見かけに騙されちゃダメ。奴の右手を見てご覧なさい」

「え、ああっ!」

 優香の声に乙葉が男の右手を見た。赤い血糊が男の右手にべっとりと付いていた。殺されたレッドベレー隊員の血だ。

「どうして、……どうして人間の姿なの?」

 乙葉の問いに、京香が答えた。

「レイパー獣は、歪んだ性欲の持ち主と地球上の生物が融合・合体して出来る……。乙葉ちゃん、この地上で、最も強く、そして最も醜い生物は何だとおもう? ……それはね、人間よ。人間なの。この地球で最も強く醜い生物・人間の姿、これがキングレイパーの正体なのよ!」

「そんな、そんなことって……」

 絶句する乙葉に、さらに京香は続けた。

「今のセックスのあり方にも問題があるわ。今の人類は、セックスを遊びやお金儲けの道具に貶めてしまった。セックスに必要な、愛がないのよ。その愛を失った人間の性欲が生み出したのが、このキングレイパーなのよ!」

 毅然として、そう言い放った京香長官に、パイレンジャーとレッドベレー隊員は返す言葉もなかった。

「フハハハ、さすがは京香長官、ボディだけじゃなく、頭の方も一級品だな」

 キングレイパーが口を開いた。洞窟の中で嫌と言うほど聞いた、あの声だ。

「なるほど、見事な講釈だったな。それでは、今度はその身体の味を試させてもらおうかな、クックックッ」

 そう言いながら、そそり立つ男根を血の付いた右手でしごき始めた。

 その行為が、菅野一尉の怒りを呼んだ。

「ふざけやがって! ……撃ち方用意!」

 自分自身も銃を構えながら、菅野一尉が叫ぶ。

「撃てえっ!」

 6丁の01式多機能ライフルが火を噴く。フルオートにされたライフルから、銃弾がキングレイパー目がけて打ち込まれた。

 弾丸がキングレイパーの身体に突き刺さ……らなかった。

 身体の数センチ手前で弾丸が静止し、パラパラと地面に落ちた。

「無駄だ……やめろ」

 ゆっくりと、キングレイパーが言った。

「くっそぉ……。みんな、グレネードランチャーだ!」

 菅野一尉以下、レッドベレーの隊員は、01式多機能ライフルの銃身下部に装着されているランチャーにグレネード(榴弾)を装填した。

「撃て!」

 近接距離で6発のグレネードが炸裂する。ものすごい爆発音とともに灰色の爆煙があがった。キングレイパーがいたあたりの地面がえぐれ、木が倒れた。

「やったか!」

 菅野一尉は一歩前に進み出た。だが、それは希望的観測に過ぎなかった。おさまり始めた爆煙の中から、キングレイパーが姿を現した。その身体には傷一つなかった。

「フハハハ……、そんなオモチャは私には通用せん! どうれ、パイレンジャー達を頂く前に、オードブルを頂くとするか」

 キングレイパーが右手を前に伸ばした。五本の指が鋭く太い針のように尖り、それぞれ別の動きをしながら伸びて、五人のレッドベレー隊員の太股を刺した。

「キャッ」

「ああっ」

「うわっ」

「あうっ」

「ぐうっ」

 一瞬のうちに五人が地面に倒された。五本の針は鋭いナイフに姿を変え、隊員達の着ていた迷彩服を切り裂き全裸にしていく。屈強なレッドベレー隊員も、裸にされると普通の女性とほとんど変わらない姿だ。

「フン、パイレンジャーに比べると貧弱な胸だな。まあいい、我が子種を授けてやろう」

 右手を元に戻すと、左手を前に出した。その先端は、男性器の亀頭の形になっていた。

「ハァーッ!」

 キングレイパーのかけ声とともに、五本のペニスが伸び、五人の隊員の股間を襲った。何も抵抗できないまま、五人の女性隊員はキングレイパーの五本のペニスを蜜壺に挿入された。

「いけない! みんな、『爆装』よっ」

 そう叫ぶと、優香は迷彩服のジッパーを下ろし、爆乳を剥き出しにした。

「おう!」

 他の四人も呼応して後に続いた。

「爆装!レインボーチャージ!」

 優香、かをり、栄子、乙葉、若菜の五人が乳房を掴み、腕のパイ・リングが輝く。虹色の光芒がおさまると、赤、青、黒、黄、白の五色のパイスーツを身に着けた五人の戦士が姿を現した。

「パイソード!」

 パイレンジャー達はパイソードを構えると、五本のペニスに斬りかかった。

 だが、一瞬のうちにペニスは引き抜かれ、キングレイパーの左手に戻った。

「フハハハ、もう遅いわ。私の子種は、この女たちに受精した。フハハハハ!」

 キングレイパーが不敵に笑った。

「な、なにい!」

 優香たちは、犯された五人のレッドベレー隊員達を見た。そこには、恐るべき光景が、広がっていた。

「うあああーっ」

「いやーっ」

 口々に叫ぶ隊員達。その下腹部が、みるみるうちに膨らんできていた。一瞬のうちに発射されたキングレイパーの精子は、レイパー獣の数倍の早さで受精し、受胎したのだ。風船が膨らんでいくように、五人の腹部は急激に膨れ上がった。

「いやっ、いやああ!」

「きゃああああ!」

「やめてええ!」

 泣き叫びながら、発狂寸前になる五人。だが、その声が、急に途絶えた。

 五人が、絶命したのだ。

 同時に、ボン! というくぐもった破裂音が鳴り、五人の妊婦の腹が割けた。

 血しぶきが、花火のように飛び散る。

「グギャアア!」

「クヒイイイイ!」

 五頭のレイパー獣が血の海の中から、おぞましい産声をあげた。

 トカゲレイパー、クモレイパー、サソリレイパー、コウモリレイパー、カメレオンレイパー。今までパイレンジャーが倒してきたレイパー獣の子供達だ。

「ひ、ひどい」

「ひでえ、何てヤツだ」

 パイブルー・眞鍋かをりと、パイブラック・小池栄子が叫んだ。パイイエロー・乙葉とパイホワイト・酒井若菜に至ってはこの光景を正視できずに顔をそむけていた。

「みんな、ビビッちゃだめ! 五人の仇を取るのよ!」

 そう言うと、パイレッド・優香はパイソードでトカゲレイパーに斬りかかった。まだ生まれたばかりのレイパー獣は、あっけなく絶命した。それを見た他の四人もパイソードをふるい、目の前のレイパー獣ジュニアを倒した。

「おのれ、私のかわいい子供達を……。フン、まあいい、お前達パイレンジャーから生まれる子供の方が、もっと強いに違いないからな。さあて、誰から犯してやろうか……」

 そう言うとキングレイパーは、パイレンジャーたちのいる場所に一歩一歩、足を進めた。と、キングレイパーの目が、まだ銃を構えている菅野美穂一尉を見つけた。

「おっと、もう一人残っていたな……。ほう、隊長さんか。バストは小さいがなかなかの美人だな」

 そう言うと、キングレイパーの左手が、マジックハンドのように伸び、菅野一尉の身体を掴んだ。

「きゃああああ!」

 掴み上げたまま、美穂を自分の目前に引き寄せた。

「ほう、これはこれは……。いい子が出来そうだ。たっぷりかわいがってやろう」

 キングレイパーの右手が閃き、あっという間に美穂を全裸にした。

「キャーッ!」

 白い肌が露わになる。

「ああっ」

「菅野さん!」

 パイレッド・優香とパイブラック・栄子が、パイレーザーを構える。

「だめよ、菅野一尉に当たっちゃうわ」

 そう言って、二人の肩を掴んだのはパイブルー・眞鍋かをりだ。

「じゃあ、どうすりゃいいんだよぉ!」

 地団駄を踏むパイブラック。

「接近戦しかないわ!」

 そういうと、パイブルーはパイソードを構え、キングレイパーに接近した。上段にパイソードを構え、キングレイパーの左腕に切りかかる。

「とりゃあああ!」

「フン、させるかあっ!」

 キングレイパーの右手が長刀に変化した。パイブルーのパイソードをその長刀が受け止める。青いエネルギー剣は受け止められ、火花が散った。

「キャアッ!」

 パイブルーがはじき飛ばされた。

「チッチッチッ、いけないなあ、お嬢さん。人のエッチを邪魔するのは良くないよ」

 地面に倒れたパイブルーにそう声をかけると、キングレイパーは左手で掴んでいる美穂の裸身を高々と掲げた。京香長官とパイレンジャーたちに見せつけるように、美穂の裸身を正面に向けた。

「う、ああ、や、やめろーっ」

 悲痛な美穂の叫びが空しく樹海の森に響いた。

「フッフッフッ、いい声だ。その声でたっぷり泣いてもらおうか」

 キングレイパーの美穂を掴んでいる左手のうち、親指と小指がさらに伸び、美穂の二本の脚にそれぞれ絡みつく。そして美穂の美しい脚をゆっくりと左右に開いた。黒々と生えた股間の剛毛、そしてその下にある美穂の可憐な花びらが剥き出しになる。

「あ、ああ……。イヤーッ!」

「フフフ、何年ぶりかな、この私の股間のペニスで女を味わうのは……」

 キングレイパーは美穂の身体をゆっくりと引き寄せていった……。

 

 最終決戦を前に、菅野一尉を人質に取られたパイレンジャー!

 はたして基地で用意されつつある新兵器は間に合うのか!

 そして、強大な敵、キングレイパーを倒すことができるのだろうか!

 人類の正義と愛と誇りを賭けた、最後の戦いが、今、始まろうとしていた。

 立ち上がれ! 戦え! 戦うのだ!

 爆装せよ! 爆乳戦隊・パイレンジャー!!

(つづく)


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