ド イ ツ の 旅 1 9 9 8 秋




旅の記録3  日本のテーマパークは
ユーロパークにかなわない





 テーマパークは鬼門である。
 僕の会社での話であるが、「よく喧嘩をする夫婦はしょっちゅう喧嘩をしているが、それでバランスがとれている」。一方、「喧嘩をしない夫婦はとことん喧嘩をしない。」というデータがある。
 僕の場合は、喧嘩をしない方である。
 もちろん、どちらかが怖い顔をして大声で怒鳴り散らすことはあるけれど、そういう場合もう一方が応戦しない、応戦しないどころか謝るのが我が夫婦の通例である。
 唯一の例外があり、売り言葉に買い言葉で応戦してしまったその原因が、東京ディズニーランドであった。
 どちらが売り、どちらが買ったのかもはや記憶にないが、僕はもともと博覧会やテーマパークが嫌いであり、妻は大好きなのだ。
 何故嫌いかは、おいおい明らかになるはずだ。
 ともかく、離婚の一歩手前に至ったのが、東京ディズニーランドである。
 しかし僕は遊園地は好きである。中でも好きなのが宝塚ファミリーランドと金沢サニーランド(もう無いけど)だ。遊園地の中に動物園や植物園があり、緑が豊かで、穏やかな気持ちにさせられる。
 シーズンオフなら人混みもなく、乗り物にも待たずに乗れ、植物が豊富だから日陰もたくさんあり、近所の裏山(実際サニーランドは近所の裏山だ)でピクニックしてるような気分になる。
 伊勢スペイン村はテーマパークとしては良くできているが、そういう面ではやはり僕好みではない。
 神戸ポートアイランドは、ポートライナーの輸送力のなさとスピードのなさにイライラさせられ、アプローチからして不機嫌になってしまった。
 東条湖ランドは遊園地の部類で悪くないけれど、いかんせんアトラクションが若干貧弱である。
 とてもとても感心したのが、長崎バイオパークで、ここなら何度でも行きたい。小動物や草食動物が放し飼いにされていて、触り放題。サファリパークなんてくそくらえだと思った。
 こうして書いていると、嫌いだと言いながら結構行っているのだが、とにかく離婚寸前の喧嘩の原因がテーマパークなのである。
 さて。
 で、ユーロパークである。
 タイトルから分かるとおり、ユーロパークをこれから誉めることになるので、最初にけちを付けておこう。
 駐車場である。
 規模の大きなこの手の施設に行くといつも感じるのだが、駐車場から入場ゲートまでが遠い。
 しかもわかりにくい。
 どちらの方角に、どの程度歩いたらいいのか、さっぱり見当がつかない。
 駐車場に「その1」「その2」「その3」(...以下、続く)とあって、満車になるごとにどんどん遠くなっていく、と言うようなことはここではないようだけれど、それでも遠い。
 何で駐車場が平面にドバーッと広がっているのだ?
 どうして立体駐車場にしないのだ?
 10階建てとかの駐車場にすれば、場所もとらないし、わかりやすいし、入場ゲートまでの距離も当然短くなる。
 入場料は38マルク。当時1マルク約80円だから、日本の遊園地相場と比べれば安い。
 ディズニーランドでこの時、確か5200円。それでも世間ではユーロパークは「高い」と言われている。
 ドイツの物価は決して安くないことを3週間の旅で思い知らされるのだが、遊園地相場としてはドイツでは高いのだろう。
 入場すれば何に乗ってもお金はかからない。
 当初の予定ではここで半日くらい過ごすスケジュールになっているが、みんなの希望で短縮された。園の端と端を結ぶ鉄道にまず乗車し、向こう側の駅で解散、各自こっち側に戻ってきて、何時にこっち側の駅の近くのレストラン前に集合、ということになった。この間おおよそ2時間である。
 それにしても、なんと緑の多いことか。
 一歩園内に足を踏み入れたときからそうなのだが、鉄道に乗って移動中もますますその印象が濃くなっていく。ベンチも至る所にある。
 場所によっては森林公園みたいな印象さえ受けるのだ。
 これなら僕にもなじむことが出来る。
 アスファルトやコンクリートで固められた遊園地なんて嫌いだ。
 シーズンオフの平日だったので混雑しなかったが、気候がよいので就学前の小さな子供を連れた家族や、学校や会社をさぼったのかカップルなどが結構いる。
 園内に入ればアトラクションは無料だし、何かひとつだけ乗ろうと言うことになって、選ばれたのが「ラフティング」
 大型の急流滑りのようなものである。
 ジェットコースターのような絶叫マシンには行列は出来ていないのに、ラフティングだけは行列が出来ている。
 提示版には「待ち時間40分」と書いてある。
 とてもそんな風には見えないのになと思ったが、どうやらこれは提示版の位置まで行列がのびていれば、と言うことらしかった。
 それでも乗り場の方にすすんでいくと行列の最後尾が見え、結局、時間がもったいないと言うことで、僕とK氏以外は退散してしまった。
 しかし列の進み具合は思ったより早く、待ち時間は15分ほど。
 もっともっと行列がのびれば、ジグザグに並んで待たせるための柵がならんでいたが、そちらは使用されていない。
 感心したのは、その行列の途中に売店があり、ジュースやお菓子が買えること。
 屋根があったり、植物が茂ったりしていて、炎天下で汗をかき体力を消費しながら待たなくて良いこと。
 いたるところに灰皿とゴミ箱があること、などである。
 ラフティングは完全な円形で、水路の中を自由に動く仕組みになっている。水中に隠れたレールやガイドウエイが無く、動きは予測できない。
 水飛沫も盛大にかかる。
 どこかで写真が撮られていて、退場時に買うことが出来るシステムは、日本のどこかでも見たことがある。
 どうやらこのラフティングが一番人気らしいのは、「少しだけ」スリルが味わるというのがミソのようだ。
 絶叫マシンとまでなると敬遠する人が多いからだろう。
 小さい子供やお年寄りも含んだ客層を呼び込んでいる。
 他のアトラクションも、ただ展示物を見るだけの所があったり、トレーラーの頭の部分を遠隔操作で動かしてうまく後ろの部分と連結させる遊びなど、大がかりな遊具が比較的少なく、手軽に遊べる構成になっている。
 何の予告もなかったのだけれど、突然音楽が流れ民族衣装を着た踊り子が路上で踊るというようなパフォーマンスも用意されていた。
 先ほど僕たちが乗った鉄道には踏切や柵が無く、途中で飛び降りるヤツがいたりする始末で、何かと制限や禁止が多い(そのくせ事故が起こる)日本のこの類の施設と違って、開放感のようなものがあった。
 何故かインターネットが出来るコーナーがあった。
 有料で、確か5マルクほど入れたのではないかと思う。
 もちろん繋ぐのは自分のホームページだ。
 文字化けの嵐だが、アクセスカウンタは画像なので、読むことが出来る。
 伝言板のレスをピングさんにお願いしてあるので、提示版にも繋いで、ローマ字でカキコした。
 留守中放ったらかしにしておくのならともかく、こんなところでカキコをしてしまったら、以後インターネットカフェからでも定期的にカキコしないといけないような気がして、かえってまずかったかなとか思ったりもした。
 訪問者も旅先で僕が読めるようにと、ローマ字でのカキコ主体になってしまい、悪いことしたなと思うのである。
 日本のニュースもそろそろ知っておきたいなと思ったけれど、どうせ文字化けするのであるから繋いでも無駄である。
 さて。せっかく滞在時間を短くしたのに、食事に2時間ほどかかってしまい、元の木阿弥となった。
 レストランで食事をとると時間がかかってしょうがない。
 やがてそんなに毎回毎回レストランで食事しなくてもいいのにと思い、旅の後半になるとイライラしてきたのも事実であるが、これはもっと後の話。
 ちなみにこれは9月23日のこと。僕たちの研修テーマは「週末の家族での余暇の過ごし方」で、ユーロパーク訪問も研修プログラムに組まれていたわけだ。
 ユーロパーク自体は良かったが、ユーロパークが研修に組まれていたことに対する評価は低かった。



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