ド イ ツ の 旅 1 9 9 8 秋




コラム  いい加減にしろよ日本の銀行





 初めての海外旅行の時は、クレジットカードを持ってなかったこともあり、お金の準備は入念に行った。
 学生であり、時間があったせいもあろう。
 現地通貨建てと日本円建てのトラベラーズチェックを用意していた。
 しかし今回はそんな暇とて無く、またクレジットカードの威力を信じて、現金しか持ち合わせていない。もちろん日本円である。
 何しろ出発は天下の(嫌みだけど)「成田」である。銀行がないわけがないのである。
 ところがどうしてどうして。
 銀行はあったものの、両替は出来なかった。
 どの窓口も長蛇の列、おとなしく待っていたのでは、搭乗に間に合わない。
 この時は「それも仕方ないか」と思った。
 何しろ出発ロビーの両替であるから相手国も複数有り、それなりに手間がかかるだろうと思ったのだ。
 両替そのものは諦めたものの、どのようなシステムかちょっと拝見しようと思った。メンバーのうち何人かが行列に加わっているが、あまりにも進み具合が遅いので心配でもある。
 僕は空腹のためまずファーストフードに立ち寄ったわけなのだが、一目散に行列についたはずの人がまだ両替できないでいるのだ。
 両替のためにはまず、申込書を書くべし、とある。
 両替の申込書?
 僕はそんなもの今まで見たことがない。
 考えてみれば、僕は日本国内で日本円を外国通貨に替えたことは一度もない。そうか、日本という国はそういう面倒くさいシステムなのか。
 たかが現金を現金に替えるだけなのに、どうして住所や名前が必要なのだろう?
 「外国通貨に両替するヤツは全て悪者だ」と言われているみたいな気がした。
 他にも提示があり、「小額紙幣への両替はしません」とある。
 おいおい。僕がいくら無知でも、コインへの両替が出来ないことは知っている。しかし、小額紙幣がないとはサービスが悪い。
 小額紙幣がないと言うことはお釣りの大部分が日本円で帰ってくるのであり、せっせと財布の中の小銭を減らしてきた僕にとってはバカみたいだ。
 空港での銀行業務は「両替」に決まっており、それに手数料を払うのだから、各種紙幣があってしかるべきではないだろうか。
 さらに、「なるべくパックを利用するように」とある。
 つまり、どういう札がどれくらいとか、そんな注文を出されたら面倒だから、なるべく避けるように、と言うことだ。
 最悪のサービス内容である。
 しかも、ここにいる客達は全てこれから海外に飛行機で出かけるのであって、それぞれ出発時間が決まっている。にも関わらず、1人に要する時間が長すぎる。
 窓口の中までのぞき込むことは出来ないから、テキパキやっているのか、ダラダラやっているのかさっぱりわからないけれど、迅速に処理してあげようという誠意が感じられない。
 さらに!
 並列していくつかの銀行が並んでいて、それぞれにいくつかの窓口を持ち、そこにそれぞれの列が出来ている。
 いまどき市中の銀行だって、一列に並び、先頭の人が空いたところへ行くシステムだ。
 運悪く、自分の行列の前方に「手間取る」人がいれば、いつまでも待たされることになる。
 空港の両替窓口という特殊性を考えれば、全ての銀行が共同でひとつの窓口を運営するくらいの機転があっても良いのではないか?
 確かに、両替の手数料なんてたかが知れてるだろうし、人件費をまかなえるかどうか僕は疑問だなと思う。
 であればこそ、高品質のサービスと能率の良い処理方法で、たくさんのお客を短い単位時間で応対し、愛される窓口にならなくてはいかん、と思うのだが、いかがだろう。



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