慎&真由子シリーズ
キャスト
シリーズの方向付けをした最初の二作品
どちらかというと渋いミステリーである「スーパー&ポテト」シリーズに比べると、この二作品はドタバタ喜劇、活劇、冒険もの風のストーリー展開を示している。明らかに、作品の趣を意識して変えている、といえるだろう。しかしこれも初期に限られ、少しずつシリーズの性格が変わり、国内物トラベルミステリーとなってゆく。(海外物がまた別シリーズで登場する)
「死体が…」はシリーズ第1作だけあって、やはりサービス満点で、贅沢な趣向。舞台は九州に始まり、なんと北海道に終わる。真由子は財政界がひっくり返るような極秘ファイルを人質として父の元から持ち出して家出中。そこに密着取材を命じられた慎が同行し、密室殺人に遭遇。そして二人はもう一人の同行者日下部老人とともに逃げ回るのだが、行く先々で死体が転がるという展開。容疑者にされたり、死体を隠したりと、まあ文体そのものも読者を笑わそうとしているのだけど、ドタバタ喜劇なのだ。
2作目「ブルートレイン…」は少し範囲が狭まるものの、大阪から北海道までが舞台。相変わらずギャグはさえまくるが、物語そのものは、一人二役と時刻表トリックを使った本格もの。
このシリーズは最初の2作が主婦と生活社より出版されたが、3作目以降徳間書店の新書版で刊行。また1作目から順に、徳間から文庫で刊行されている。
三作目は、ラジオにもテレビにもなった
とりあえずのシリーズ終了まで
という風に、1文字づつタイトルが短くなって、ここでいったんシリーズ終了。ちょっと悔しいのは、1作目の最後に結ばれた二人の結婚が、雑誌掲載の短編「お座敷列車殺人号」で描かれてしまって、単行本では読めないことだ。つまり、文庫や親書の読者にとっては、「君たちいつの間に結婚したんだよ」と、文句の一つも言いたいわけですね。 インターバルの新シリーズ
さて、このシリーズの中休みの間のピンチヒッターとして、味子さんシリーズが3作だけ登場する。これ、好きだったんだけどね。
ベビーディテクティブとともにシリーズが復活
慎&真由子シリーズの復活第1作 シリーズは次のように続いていく。
「ソウル…」のみ味子さんが登場し、シリーズ4作目ともなっているのだが、作者があとがきでも書いているように、味子さんはあくまでピンチヒッターである。しかし実は、味子さんシリーズには5作目があり、ソノラマの新書版から「緑青屋敷の惨劇」が出ている。
である。
廃止されたローカル線で、もう列車は来ないはずなのに、列車に轢き殺された死体が発見される。赤川次郎さんの「幽霊列車」と、似て非なる趣向で、その対象が面白い。
相変わらずタイトルに凝っていて、ここまでは一字づつ長くなり、この後、短くなってくる。またストーリーもドタバタから社会性のあるもの(ローカル線の廃止だとか、老人問題とか)に変化していくのである。
何作品かはいわゆる夜の2時間ドラマ「何曜日サスペンス」で登場した。僕は一つだけテレビで見ることができたけれど、どうも違和感があってしょうがなかったのを覚えている。ストーリーがおかしいのである。最初、キャラクターだけが辻真先のもので、ストーリーはテレビ版オリジナルかと思った。しかし見ているうちに、ストーリーにもやはり覚えがあることに気がついた。読んだことがあるのだ。この謎は、番組が終わって、はじめてとけた。シリーズが違うのだ。別のページに紹介する、別のシリーズの、探偵役を慎&真由子に入れ替えての登場だったのだ。テレビも無茶するよなあ。(だいたい、この原作者は元テレビプロデューサーで、シナリオライターなのだから、本人が脚本書けばいいのに)
行動的な辻作品群のキャラの中で、異色なのが永坂進吾の存在。交通事故で下半身不随となった状態で、作品に登場。亜子と肌を重ねたのはたった一度だった。いわゆるアームチェアディテクティブである。
ただ何となくシリーズ復活というのでは面白くない、田中雅美さんの史上最年少探偵を下回るべく、ベビーディテクティブがデビュー。しかしどうやら特に意識してかかれたのは、最初の2作だけのようである。また復活第1作は、なぜか例外的に海外の地名が登場している。
相変わらずタイトルには凝っているが、シリーズで統一性を持たせる、というどの作家でもやっていることだなあと気づいてしまった。次のような具合である。
それはともかく、個人的には、これ以降、シリーズの確認ができておりません。どなたかご存じでしたらお知らせ下さいね。
またまたMANAさんから、情報が寄せられました。ありがとうございます。
ドラマになったのは「土曜ワイド劇場」で、覚えている限りでは
「ローカル線に・・・」=「北海道婚約旅行殺人事件」
「三陸鉄道死神・・・」=「三陸海岸婚約旅行殺人事件」
「鳴門に血渦巻く」=「瀬戸内海婚約旅行殺人事件」
の3つがあります。
「お座敷列車殺人号」は、「殺人者が日本海を行く」が文庫になったときに収録されています。
シリーズではないですが、「喪われた関係」(学研1994年)に、シンが主役級で、でています。真由子は最後にちょっと出てくるだけ。
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