新竹週末旅行
「……もしもし?」
「ああ、屈さんか。9時前に電話をくれと言っといたろうに。」
「悪い悪い、つい寝坊してね。(夕べ遅くまでチャットしてたと言う訳にはいかんな)とにかく今日の昼頃の電車でいくから、着いたらまた電話するよ。」
「OK。待ってるぞ。」
相手はこの夏に大学(夜間部)を卒業して、この秋から就職した友人である。伝統芸術への関心から酒に至るまでどういう訳か私と共通点が多いほか、武術方面に興味があり、自分でも南拳(空手のルーツと言われる中国南方系の武術を総合したもの。現在アジア大会の競技に制定されている)を練習していたためか、空手の経験がある私とウマが合う。そのため故郷(くに)の新竹に帰った今でも連絡があると言う訳。
用が済んだからまたベッドへ……とはいかない。課題が山ほど出ているので少し大き目の鞄に旅行の準備と一緒にノートと本を詰め、身支度を整えて図書館へ向かう。今日明日は台湾大学53(国立台湾大学として)/70(台北帝国大学設立から)周年記念の大学祭だとかで出店もあり、図書館にも誰かゲストが来ているらしい。えっと、あれは……。副総統連戦だ。彼をナマで見るのはこれで二度目だが、相変わらずそこらのトッチャン坊やにしか見えない。次期総統にはちょっと貫禄不足かな?(かといって羅福助氏(本職がヤクザ非公式治安対策自警団な立法委員)ほど貫禄があっても困るが)
探している本が見つからなかったので、更に国家(中央)図書館台湾分館、台湾大学図書館法学院分館とハシゴして少しずつ資料を集める。自転車が手に入ったからこその機動力だなあ。法学院分館には大学祭の展示品として、卒業生達の卒論、修論などが公開してあった。
「ん?これは?」
さっきのトッチャン坊や副総統連戦の卒論(修論?)だ。指導教授は何と現在独立派のリーダーの一人で、先の総統選挙の時李登輝と総統の地位を争った彭明敏教授!総統候補と副総統候補の差はあれ、子弟対決だったのか。
資料収集の目処がついた頃にはもう12時を回っていたので、少し慌てて駅へ行く。法学院から台北火車站まではすぐだが、昼飯はどうしようか。
「駅弁でも買おうか。」
今から思えば、これは悪魔のささやきだった。台北火車站で売っている駅弁は3種類ほどあるが、うち2種類は外の弁当屋で売っているものと同じ味も素っ気も無い外見で、しかも値段は80元(市価の3割増し)。1種類は箱に電車の写真があり、やや旅情が湧くようにはなっているものの、内容にはあまり差はなく値段は100元。国有鉄道だから商売下手はしょうがないのかもしれないが、もう少しレイアウトに気を使って地方色のある駅弁を作ればもっと売れるとは思うが……。