■インターネットが変えるビジネスプロセスメガバンクを先頭に、金融機関の熾烈なポータルサイトづくり競争が進んでいます。 玄関とか入り口の意味を持つポータルサイトは、インターネットに接続したとき最 初に現れる画面のこと。転じて、金融サービスにアクセスしたいとき最初に開くペー ジのことを指します。各メガバンクは系列の証券や保険と連携してITを強化し、オ ンライントレードに注力しようとしているのです。 日本企業のインターネット利用は78.3%。販売に活用している企業は25.4%に昇り ます(平成11年度通信利用動向調査=郵政省)。いよいよ本格的EC時代が始まっ たのでしょうか。 インターネットを介して取引を行うECへの関心が、日本で急激に高まったのは昨 年のこと。以下の5つの要因が大きいと考えています。 1) アメリカでのECの隆盛。 GM、フォード、クライスラーのビッグ3が共同で開設する部品調達市場は、 年間取引27兆円といわれています。 2) セキュリティ技術の発達。 クレジットカードの番号を送信しても、データが漏れる危険性が低減しました。 3) 証券での規制緩和。 昨年10月以降、新規参入を含めオンライントレードが百花繚乱です。 4) iモードの急速な普及。 携帯経由のインターネット利用の裾野がいっぺんに広がりました。 5)各社の「eビジネス」キャンペーン。中でもIBMのキャンペーンのインパク トは大きく、ECのイメージがリアルになりました。 これらの結果、企業経営者の多くが「わが社も“大阪のニューヨークパーツ”にな りたい。パリで日本酒を売りたい。」と考え始め、ITをキーワードに一斉に走り始 めたのです。 果たして、ECの未来には薔薇色の夢が広がっているのでしょうか。 ■メディアとしてのインターネット、チャネルとしてのインターネット94年ごろから活用され始めたインターネットは、当初コミュニケーションのメデ ィアとして捉えられ、それゆえ広報セクションは早くからインターネット広報に取り 組んできました。しかし、インターネットの進化は、短期間であるにもかかわらず著 しいものがあります。 技術革新とユーザーの拡大を背景に、インターネットは、コミュニケーションメデ ィアだけでなく、販売チャネルとしても機能しはじめ、メディアとチャネルを統合し た存在になろうとしています。 ソニーはAIBOをインターネットだけで、あっという間に売り切って見せました。 原材料や部品の調達をインターネットで行う動きは今後も加速するでしょう。 オークションのサービスは高い人気を誇り、個人が市場に売り手として参加してき ました。 メディアとしての機能の進化を広報がどう取り込み、どう対応するかという、やや テクニカルな側面を含んだ検討と、メディアとチャネルの融合という未知の変化をど う捉えるべきかという、テツガク的な要素を含んだ検討の両面が必要になってくるで しょう。 ■ホームページに必要な“4つのデザイン”紙幅の都合上、ここでは広報メディアとしてのインターネットというテクニカルな 側面を中心に考えて見ましょう。広報として重視すべきは、いうまでもなく、ホーム ページとEメールです。 ホームページを開設し、会社概要や商品案内やIR情報を載せたり、ニュースリリ ースのバックナンバーを掲出することは、もはや当たり前となりました。 検索機能の発達によりインターネットは壮大なデータベースとしての性格を強めて いますから、それだけでも貴重な情報開示といえます。しかし、時として作りっぱな しで内容の古いページも目に付きます。インターネットで公開する以上、適時適格に 情報を公開するリアルタイムのメンテナンスが最低限のモラルといえるでしょう。 このレベルにとどまらず、企業のホームページもますます質が問われるようになる でしょう。その質は“4つのデザイン”が決めると私は考えています。 1)グラフィックデザイン 日米の企業のページを見て、明らかに差があると思うことのひとつが、グラ フィックデザインです。アメリカでは多くのデザイン会社がWEBデザインに 力を入れており、高いクオリティを実現しつつあります。 2)コンテンツデザイン ホームページに何をのせるか。トップページから探している情報まで、どう スムーズに誘導するか。ユニークなサービスや機能の提供、生活情報の提供な ど、アクセスを向上させるにはどんなコンテンツがふさわしいか。 3)テクニカルデザイン 検索機能、データベースの活用、自動計算、掲示板システム、携帯電話との 連動など、ホームページで使える技術はまさに日進月歩。使い勝手も格段に向 上しました。 4)ビジネスモデルデザイン そしていまや、インターネットをビジネスにどう活用するか、広報メディア なのか販売チャネルなのか。基本戦略そのものが問われているといえます。 これらのデザインを駆使するにあたり、つねに念頭に置くべきは、いかにユーザー とのあいだにインタラクティブな関係を築くかです。インターネットは広聴機能を飛 躍的に向上させるメディアでもあるのです。 ■Eメールの活用電子メールを導入している企業は約9割に達しています(電子メッセージング協議 会調べ)。ホームページがアクセスを待つメディアであるのに対し、Eメールはター ゲットに的確に到達するメディアとして、その広報効果は大きく、マスコミ記者の中 でも、数字やデータを打ち直す際のミスが避けられるとして、Eメール歓迎派が増加 しています。 『プレスネットワーク』http://www.mahoroba.ne.jp/~fukami/pressnet/ というのは、プレスリリースを登録した記者に配送してくれる無料サービスですが、 媒体数で約1000種類、総発行部数では5400万部をカバーしています。現時点 ではIT系のリリースの比率が多く、リリースを受ける側もこれを反映した偏りがあ ると想像されますが、今後はより多様なメディアやジャーナリストをカバーするでし ょう。『Net記者クラブ』http://nkc.s-pr.comという同様なサービスもあります。 本来、各企業が、それぞれ独自のメーリングアドレスをリスト化し、マスコミ、 ユーザー、株主などターゲット別に管理しワンツーワンの発想で良好なリレーション を築くべきですが、その補完機能として上述のサービスは大いに効果的だと思います。 ■ITが変える、広報が変わる広報メディアとしての側面からインターネットを見ると、広報・広聴とともに個報 ・個聴を可能にしたメディアであるといえます。顧客とのワンツーワンの関係をどう 構築するか、今後の広報の重要な課題です。 また、IT技術は資材調達から生産・販売・物流・決済など業務のあらゆる側面で ビジネスプロセスそのものを変えようとしています。この中で広報はそれ自体独立し た機能ではなく、業務のあらゆる側面にかかわる機能との性格をいっそう強くするで しょう。 さらに、社会に眼を向けるなら、ネットの中で、独自に企業レピュテーションが成 立しはじめています。たとえば、昨年の東芝事件が引き金となったネット告発の動き や、株価に影響を与えかねない風評の無責任な流布は、インターネットが企業批判を 増殖させる可能性を持つこと。裏返せばインターネットがブームを仕掛ける格好のメ ディアであることをも示唆しています。 メディアが変わり、業務が変わり、社会が変わる。インターネットに代表されるI T革命は「津波」です。呑み込まれるのか、波に乗るか、2つにひとつです。 インターネット広報に前向きに取り組むことにより、複合的変化を肌で感じ、従来 の枠組みにとらわれず対応することにより、津波の上でサーフィンしてみたいものだ と思っています。 |