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東急不動産らの巨大マンション「湘南袖ヶ浜レジデンス」に住民反対運動(神奈川県平塚市)

旧杏雲堂平塚病院(現ふれあい平塚ホスピタル)の敷地内に予定されているマンション建設計画に対し、地元住民による反対運動が展開されている。

問題のマンションは東京建物(株)、東急不動産(株)、三菱地所(株)が事業主となり計画している「湘南袖ヶ浜レジデンス」(ピースピースピースプロジェクト、旧(仮称)平塚袖ヶ浜計画)。設計施工は浅沼組東京本店。ふれあい平塚ホスピタルの敷地内に3棟(333戸)が建設され、このうち東側道路に面するA棟の一部は、地上16階建て高さ49.13メートルとなる予定。

海へのシンボル軸

建設計画地周辺は平塚を代表する街並みが形成されている。計画地の東側道路は、平塚駅から海岸へと伸びる海へのシンボル軸(湘南なぎさプロムナード)で、「湘南ひらつか都市景観基本計画」に基づき景観モデル地区に位置づけられている。

南口の顔となるメインストリートである。戦災復興で道路幅が広く、閑静な住宅街が広がる地域である。統一感があり、目に優しくてホッとする町並みである。ゆとりを感じさせる街である。広い歩道、広い空、広い海、明るい幸せな気持ちになれるところである。

計画地周辺図 (「Yahoo!地図情報」より)

住民反対運動

突如持ち上がった「巨大マンション」計画に住民はすぐさま反応した。景観を無視し、地域住民をないがしろにする高層計画が住民の怒りを買った。「広々とした空や松林といった市民の貴重な財産である住環境が失われる」と周辺住民は反発する。

松の緑と調和する高さの建物、広がる空、この景観を壊してしまう。湘南袖ヶ浜レジデンスが建てられたなら、今の街並みは失われてしまう。一度建てられてしまうと、業者による開発の歯止めがなくなる恐れが高い。

巨大マンション建設により、日影の問題も深刻になる。道路を挟んで東側の湘南高浜台ハイツの1号と5号棟、さらに計画地の北側と西側も日影になる。この計画により、平塚に住む魅力が失われかねない。

袖ヶ浜自治会

袖ヶ浜自治会は1月29日、役員会において同計画に反対することを全員一致で決定。2月8日、地元老人会、子供会、花水地区自治会連絡協議会などと連名で、計画の撤回を求める要望書を業者側に送付した。10日には同会の田中三朗会長が平塚市役所を訪れ、マンション業者に対し指導を徹底するよう求める嘆願書を、大蔵律子市長あてに提出した。

田中会長「今の計画ではマンション北側の住宅における日照権の侵害は深刻なものになる。また近隣住宅まで3・5メートルしかない場所もあり、周辺住民の精神的な圧迫感は計り知れない。敷地内の松林などが伐採されることは地域にとって大きな損失になる」(「巨大マンション計画に「ノー」」タウンニュース平塚版2005年2月17日号)。

湘南なぎさプロムナードの環境を守る会

現在は袖ヶ浜を中心に署名活動が展開されており、こうした動きはマンション予定地と道を挟んで向かい合う場所にある高浜台ハイツ自治会など、近隣地域へも広がった。湘南高浜台ハイツ居住者有志は1月に「湘南なぎさプロムナードの環境を守る会」を結成(菊川一彦会長)、アクションプランを作成し活動を始めた。

会は2005年3月3日に周囲の環境にふさわしい計画への変更を平塚市が事業者へ指導するよう求める請願を市議会に提出した。請願には11770人分の署名も添えた。同様の要望書と署名を大蔵市長にも提出。大蔵市長は「皆さんの思いは十分理解しました」と話す(「高層マンション計画「周辺と合う計画に」住民団体が市議会に請願提出」タウンニュース平塚版2005年3月10日号)。

建設地周辺では建設反対の幟旗が掲げる。幟旗は赤字に白字で「緑と空を守ろう」「緑を奪うな」と記述されている。

住民向け説明会

高層マンション計画事業者による周辺住民への初の説明会が2005年1月28日に開催された。会場に充てられた平塚商工会議所大ホールは参加者で埋め尽くされた。一方、三菱地所、東急不動産は一人も顔を出さなかった。マンション事業者らは、概要書に沿って説明したが、怒号が飛び交うなど、会場は一時、騒然とした。

ある参加者が「我々にできるのは抵抗しかない。工事を妨害するしかない」と呼びかける一幕もあった。事業者らは「市の開発指導要綱に沿って説明している」など法的に何ら問題ないことを繰り返し強調したが、両者の言い分は接点が見出せず、物別れの状態で終わった。説明会は時間切れとなり、次回に持ち越す。

第2回説明会は2月6日に開催された。松本とし子・平塚市議は以下のように述べる。「計画にあたり1月28日と、2月6日の2回地域住民への説明会が開かれました。これで明らかになったことは、事業者側はいかに建蔽率を有効に利用するか、いかに多くの入居者を確保できるか・・つまりはいかに儲かるということしか考えていなかったということでした」(松本とし子「「(仮称)平塚袖が浜計画」とは」活動ファイル2005年2月7日)。金のことしか考えていない。環境についての責任放棄と言える。

第4回説明会は4月24日18時から平塚商工会議所3階で開催される。入場自由。同説明会は、計画変更を求める市民有志の集まり「湘南なぎさプロムナードの環境を守る会」と、「袖が浜自治会」(田中三朗会長)が、過去3回の説明会では不十分として再度の開催を事業者に求めていたもの。

「業者は高層マンション計画を押し通そうとしている。大勢の参加により景観・環境・生活を守る決意を示し、計画の変更を実現させたい」と関係者は話す(「袖ヶ浜高層マンション建設問題=市の指導つづくも高さ見直しに事業者難色=」湘南ジャーナル2005年4月15日)。

株式会社メイズ・プラン

事業主は株式会社メイズ・プラン(代表取締役平野直樹、宅建番号[神奈川知事]3-20379、平成14年1月現在)に近隣折衝業務を委託している。事業者は直接住民と向き合わず、住民運動側はメイズ・プランの担当者と折衝することが多い。該社は他でも紛争が起きた分譲マンション建設にかかわっている。事業主は自らが正面に出ない限り、自分の手が汚れてないとでも思っているのだろうか。

平塚市の対応

市は「周辺と調和するような建物にしてほしい」とマンション業者に要請しているが、「聞き入れてもらえるかどうか」は不明。市都市政策課でも「周辺の街並みに合ったふさわしいところまで下げてほしい、とお願いしている」「この地域は周りに高い建物がないので、突出するだろう。市の重要な景観地区なので、粘り強くお願いしていく」(「杏雲堂病院跡 高層マンション建設」湘南新聞2005年2月5日号)。

3月29日は事業者との間で通算7回目となる景観協議が持たれた。市側は再度、高さ22.5メートル(ガイドラインから導いた景観を損なわない基準値)への計画変更を指導。樹木の保全と生活環境の保持も求めた。

対して事業者側は譲歩案を提示した。主な内容は「(1)高さは16階から15階建てで検討、(2)保存樹を当初計画より増やす、(3)南側の住居専用庭を廃し自主管理緑地にする」等である。住民側からの「焼け石に水」「小手先の変更」との反発は必至で、平塚市は今後も粘り強く指導・要望していく姿勢である。

平塚市議会

平塚市議会では3月定例会において、平成17年請願第4号「「(仮称)平塚袖ヶ浜計画」についての請願」及び平成17年請願第5号「「(仮称)平塚袖ヶ浜計画」に伴い損なわれる地域の景観の保存、生活環境の保持を求める請願」が趣旨採択された。請願は景観や松の緑を保ち、当地域の街並みに合った高さへの変更を求めるものである。マンション問題で全会一致で趣旨採択されることは全国的にみても珍しく、この結果は事業者も重く受け止めるべきである。

後藤輝彦議員(無所属)より、「(仮称)平塚袖ヶ浜計画」についての質問がなされた(2005年3月8日)。答弁は「この地区は、湘南ひらつか都市景観形成モデル地区の1つである海へのシンボル軸に指定している。良好な松林の中に屋根が見え隠れするようなイメージを形成する地区に該当。クロマツの樹高は20メートルから25メートルと言われており、ガイドラインからの基準値である。大幅制限ということで協議拒否にならぬようねばり強く助言、指導に努める」である。

10階建てへの計画変更を提示

大蔵市長は、6月1日と2日に、マンション計画事業者の東京建物と医療法人社団康心会を訪問した。その際、事業者から6階分の住戸を減らす計画変更の提示を受けた。計画変更によりマンションは10階建ての高さ約31mにし、マンション北側に建設予定の病院は高さ32.29mを約31mになる。これは6月3日に市議会会派代表者会議で発表された。

過去の住民向け説明会では事業者から「事業採算性から高さ、形状に関してはこれ以上は応じかねる」という発言がなされていた。計画変更の提示により、この事業者発言がいかにいい加減で無根拠なものであるか明らかになった。プロジェクトには含み部分というものがある。市長の訪問で提示された10階31mは最初からシミュレーション済み、折込済みの高さであった可能性が高い。 10階建て31メートルは依然として高層である。低層の緑豊かな住宅地が形づくる景観を壊すことに変わりはない。2006年告示予定の高度地区指定、2007年6月議決予定の景観条例に反する高さである。

計画変更について江口友子市議は以下のようにコメントする。「今後、この事業者側が提示した計画修正をどう捉えるかは、慎重に考えないといけないと、私は思っています。病院の方はほとんど高さを下げてきていませんし、住民からの要望に何も答えていないのです」(「江口友子のまちある記」2005年6月3日)。

袖ヶ浜の価値

袖ヶ浜(袖が浜)は明治百年の歴史のある地であり、保存林のクロマツと人間の知恵と労力とで守られてきた市民の自慢の景観の地である。落ち着いた町並みや景観は、建物が低層であることが最も中核的な要素である。超高層の建築物は駅南口エリアにはほとんどない。南口の良さは開放感なのに、メインストリートにドドーンと高層マンションが建てられることになる。

建設されたら、空のない、緑のないグロテスクなマンションを見て過ごさなければならなくなる。休日に少し遠くまで浜辺を散歩すると、防砂林の植栽の上ににょっきりと顔を出す湘南袖ヶ浜レジデンスが目障りなものになる。湘南の海からの景観さえ悪くしてしまう計画である。高村智恵子は「東京には空がない」との言葉を残した。空を奪わないで欲しい。手に届きそうなくらい大きな星、静かで暗い夜を奪わないで欲しい。

黒松

マンション建設工事により、黒松をはじめとする緑豊かな樹木はすっかり伐採された。陽光に照り映え、天へと真っ直ぐに伸びゆく樹木の群はとても幻想的であった。いつまでも眺めていたいほどの美しさであった。伐採後の風景はあまりに殺伐としている。

湘南袖ヶ浜レジデンスの事業主(東京建物、三菱地所、東急不動産)は、旧杏雲堂の敷地内にある桜の木、黒松の木、クスノキ、エノキをばっさばっさ、なぎ倒していった。まるでパレスチナの地で民の歴史が刻まれた地形を根こそぎなぎ倒して世界史から抹消してしまおうとしたイスラエルのブルドーザーのようであった。

黒松は防風林として機能していた。袖が浜は海岸地帯であり、びっくりするほどの強風が吹き抜ける。それをこれまでは黒松の樹林が受け止めていた。「住民の方々は、木を切られた瞬間から家に当たる風の強さがすごいことを知ったといいます」(松本とし子「あの旧杏雲堂病院跡地が・・・。」活動ファイル2005年5月25日)。

黒松の林は「魚つき林」としての役割も果たしている。昔から漁師は「海に魚が多いのは近くの森が豊かだから」ということを知っていた。「森林の魚つき機能としては、(1)土砂の流出を防止して、河川水の汚濁化を防ぐ。(2)清澄な淡水を供給する。(3)栄養物質、餌料を河川・海洋の生物に提供する等がある」(吉武孝「沿岸生態系:森林の魚つき機能」森林総合研究所所報No.22、2003年)。黒松がなくなることにより魚が来なくなると懸念する漁業関係者もいる。生態系のサイクルを絶つ行為になる。

楽園イメージの虚偽

海の近くに住むことには苦労がある。販売パンフレットの謳う「海から五分の生活楽園」に騙されてはならない。南風が強い日は、あたり一面に海の匂いが漂っている。台風などの日は潮風ではなく塩水が直接飛んで来る可能性もある。建物は潮風に晒される。

自転車や自動車も場所によってはすぐに錆びる。車の車体、ガラスが塩で真っ白・ベトベトになる。早めに洗車しておかなければ車は長く持たない。自転車も同じで新規購入するならばステンレス車が良い。エアコンの室外機も故障しやすい。

洗濯物の乾きも悪く、ベトベトする。南風の日、高層部では洗濯物は外に干さない方がいい。布団の日光浴も厳しい。物干し竿はステンレス製でなければ錆びてしまう。それでも、これまでは黒松の林が潮風を緩和していた。しかし、湘南袖ヶ浜レジデンス建設により、黒松の多くは切り倒されてしまった。

楽園イメージによる購入者ばかりでは、数年などの短期間にて、潮風がひどくて嫌になり、売却して次の住人が入る、というような形態となりそうである。その結果、隣人が誰であるか知らない、挨拶もしない、というような住民の出入りの激しい落ち着かない街になってしまう危険が高い。

土壌汚染

建設地は湘南海岸のサナトリウムの一つであった病院跡地であるため、医療廃棄物による土壌汚染も懸念される。購入者にも、かつて何に使われていた土地なのかを調べ、汚染の有無を確かめる慎重さが必要である。将来、辛い思いをしないためにもしっかりとした調査が臨まれる。

事業者には土壌汚染を隠蔽してマンションを販売した三菱地所と土壌汚染発覚でマンション建設中止に追い込まれた東急不動産が含まれている。得体の知れない怪しいものが出てきたら怖い。死体置き場として使われた箇所もあり、死者の怨念が染み付いているかもしれない。

湘南袖ヶ浜レジデンスの欺瞞

湘南袖ヶ浜レジデンスは欺瞞的にも景観・眺望をセールスポイントとしている。地域住民が慣れ親しんできた景観・眺望を奪っておきながら、販売コピーで景観・眺望を売りにするのは被害者感情を逆なでする。事業者は景観をチラシとセールストークにだけ利用して終わりにし、景観を破壊する高層棟を建てて利益を上げようとしている。

湘南袖ヶ浜レジデンスの宣伝チラシは建設地周辺を「低層な住宅地が広がる落ち着いた環境」「大きな空の美しい環境」とアピールする。しかし、湘南袖ヶ浜レジデンス自身が、「低層な住宅地が広がる落ち着いた環境」「大きな空の美しい環境」を破壊する。

宣伝チラシにある「なぎさプロムナード」の写真は、もう永遠に消失してしまった風景である。パンフレットやチラシのイメージ写真に写っている広い空の大部分は湘南袖ヶ浜レジデンス自身や病院兼老人ホームで埋まってしまうのが現実である。

湘南袖ヶ浜レジデンスは反対運動する人達が「守って下さい」と訴えている景観・環境を頼りに売っている。自分達が創った物ではない物、まして自分たちが破壊している物の中に辛うじて残っている物をマンションのセールスポイントにするのは筋違いである。宣伝文句に謳われている、豊かな環境を形成している既存樹木は、奪われた人々の努力と熱意とによって辛うじて残された樹木である。

ピースピースピースの欺瞞

湘南袖ヶ浜レジデンスは計画名をピースピースピースプロジェクトとする。環境を破壊しておいてよくピースと書けたものである。町並みや景観は高層マンションの引き立て役ではない。ブラックユーモアのつもりだろうか。呆れて開いた口がふさがらない。

広告チラシ「「正式価格&販売住戸」発表会開催!!」では「資料請求はホームページでも受け付けております。「ピースピースピース」を検索してください」と記述する。「湘南袖ヶ浜レジデンス」で検索して建設反対Webサイトが検索結果に表示されることを回避させるための姑息な手法である。

実際、「ピースピースピース」をgoogleで検索しても、スポンサー広告以外の通常の検索結果では湘南袖ヶ浜レジデンスに無関係なページばかりである。この点からも湘南袖ヶ浜レジデンスの事業主(東京建物、三菱地所、東急不動産)の隠蔽体質を看取できる。消費者が多くの情報から判断することを妨げようとする企業である。

眺望の幻想

湘南袖ヶ浜レジデンスは景観・眺望を最大のセールスポイントとするが、それは保障されたものでないことに注意しなければならない。湘南袖ヶ浜レジデンスの隣にはマンション高層棟より高い病院・老人ホームができる。病院の上の三層が有料老人ホームとなる予定である。病院や老人ホームから見下ろされる可能性もある。中庭側にあるガーデンヴィラから見ると最短17メートルの隣棟間隔からは絶えず向かいの廊下を通る人から覗かれるので、落ち着いて生活出来るか疑問である。

老人ホームを嫌悪施設と考える人は少なくない。病院や老人ホームが近くにあると、夜中の救急車の出入りに驚かされることがある。閑静な住宅街であるなら、なおさら音が響いてしまう。病院には小児科はない。他にも儲からない診療科目は消えていく運命にある経営方針の病院である。この病院の建築主の茅ヶ崎にあるメイン病院と同様、老人病院になる可能性がある。

道路を挟み南側の空地の所有者は湘南袖ヶ浜レジデンス幹事会社の東京建物である。湘南袖ヶ浜レジデンスは南向きをアピールしているが、将来南側にマンションが建ち、セールスポイントである日照・眺望が喪失する可能性がある。その場合、資産価値も激減する。

不動産販売にあたり宅建業者には宅建法で説明義務が定められている。重要な内容を購入検討者に伝えない営業担当者がいるならば、良いマンションとは言えない。売買契約の重要事項説明では、「高度地区指定」告示が決まれば、説明義務がある。隣に建つ病院の高さがマンションの高層棟より高くなる。マンションに向き合う形の南側空地が何になる可能性があるか(販売サイドが全てを把握してるわけではないが、知っていることを隠してはならない)。知っていて何も言わないなら、不誠実な業者である。知らないならば、さらに不動産業者として問題になる。

購入者の心構え

購入者も町並みにあった高さ、建物がバランスよく並び、落ち着いた景観を維持してるマンションということなら、たとえ少々割高でも選ぶ時代である。湘南袖ヶ浜レジデンス高層階居住者が眺望を楽しむ31メートルの高層棟を建ててしまうことは、それ以外の平塚市民にとって大いなる損失になる。

安心と愛着のある生活を奪われて暮らさなければならない人々がいることを忘れてはならない。そのようなマンションが購入者に安らぎがもたらすか疑わしい。周辺住民に優しくないマンションが購入者にとって住み心地のよいマンションであるか疑問である。近隣住民の反対を押し切って強制着工する事業者が消費者にとって信頼に足る業者であるか疑問である。信頼できない企業の物件には問題がある可能性が高いと考えることは消費者にとって合理的である。

周囲から歓迎されないマンションは避けたほうがいい。周辺住民との関係をはじめ、建物自体もいろいろ問題が発生しそうな物件である。マンションの価値は、周りの人からどう見られているるかで左右される。他人から「いい所に住んでいるね」と言われれば誰しも嬉しいであろう。平塚市内の全員とは言わないまでも、良識派のほとんどが非常識と考えるマンションに大金を払って住むのは馬鹿げている。

マンションを買うならば、近所の人達と気持ちよく関われる場所がいい。非難されてまで住むのは辛いし、肩身もせまい。購入する場合は四千万円も五千万円も出すことになるから、周辺を廻って近所の人に声を掛けて確認した方がいい。建設地周辺に建設反対の幟旗が立っていたら、「何が問題か」と訊ねるのが自然である。

全戸南向きの注意点

湘南袖ヶ浜レジデンスは全戸南向きをアピールするが、全ての居室が南向きの恩恵を受けるわけではないことに注意しなければならない。南向きという言葉だけで、採光良好と早合点すると大変なことになる。居住してから後悔することになる。知らない人が損をする構図である。

湘南袖ヶ浜レジデンスでは全戸南向きにするために住戸は南北に細長い形になっている。マンション版ウナギの寝床である。南東及び南西の角部屋以外のほとんどの住戸では採光は南側と北側のみである。南北に細長くなっているため、南北よりも東西の方がはるかに長い。ここは壁であり、窓はない。

住戸北側の居室は北側からの採光しか得られない。3LDKならば二部屋が北側になる。南側は壁である。北側は共用外廊下に面することになると推測されるが、その場合、通行人の目が気になり窓を開け放しておくわけにもいかない。しかも窓には面格子が付けられている。「見方によっては居住者が勝手に牢獄の窓から脱出しないようにガードしているようでもある(実際に地震が原因で火災が発生し、窓格子によって逃げ遅れ、焼死した事例がある)」(小菊豊久、マンションは大丈夫か、文藝春秋、2000年、36頁)。

湘南袖ヶ浜レジデンスCONCEPT BOOKは「窓からは湘南の太陽の恵みがたっぷり注ぎ込み、陽光と海を身近に感じられる、健やかな暮らしをお約束します」(7頁)とする。これは南側バルコニーに面した居室には当てはまるかもしれないが、全ての居室で当てはまるとは限らないことを忘れてはならない。

急激な人口増加の問題

大規模マンション建設による急激な人口増加が交通渋滞、駅乗降の混雑を誘発し、それに伴う安全面の不安を増幅させる。湘南袖ヶ浜レジデンスは総計画戸数301戸に対し、駐車場100%設置を謳う。もし全ての住戸が駐車場を利用したら、新たに301台の自動車が出入りすることになる。周辺住民にとっては排気ガスによる大気汚染や交通渋滞で迷惑を被る可能性が高い。

湘南袖ヶ浜レジデンスは総計画戸数301戸に対し、駐輪場200%設置を謳う。自転車は一家に二台ということになる。湘南袖ヶ浜レジデンスではファミリータイプの住戸(2LDK, 3LDK)が中心を占めるが、三人家族や四人家族で一家に二台では足りないことが多い。溢れた自転車はマンション敷地内や敷地周辺に勝手に駐輪されることになる。

事業者の神頼み

湘南袖ヶ浜レジデンス事業者は風水個別相談会(2005年11月3日)を開催する。売り主は占術家にも頼りたいのだろうか。それほど追い込まれているのだろうか。案内葉書持参の来場者への商品券500円分プレゼントも実施している。何が何でも集客したい事業者の焦りが感じられる。逆に言えば購入検討者は慎重に構えた方がいい。

海に近いという立地特性からは潮風水相談や風水害相談会の方が購入検討者には切実である。風水相談会では「風水でいい」という名目で高価なオプションも買わせようという魂胆が明白である。イベントのあり方一つでも購入者の生活は考えていない企業体質を改めて確認できる。

既存不適格建物

平塚市では2006年12月に高度地区指定告示、2007年6月には景観条例公布を予定する。建物の高さは22.5mに制限されると見込まれている。湘南袖ヶ浜レジデンスの10階は景観条例違反となる可能性が高い。逆に湘南袖ヶ浜レジデンスのような高層建築を規制できなければ景観条例の意味はないと言える。

景観条例に違反すれば、湘南袖ヶ浜レジデンスは完成時には不適格建物になる。資産価値は激減し、将来の建替え時に制約を受ける。既存不適格となれば、当然建替えになった場合には従前の規模での建替えは不可能となる。容積率は今より抑えられてしまい、現状より小さい建物になる。出て行かなければならない世帯も発生しうる。

マンションの建替えは数十年後の話と問題先送りとする向きもあるかもしれないが、予期せぬ大震災等があって、建替えなければならない事態が起こる可能性もある。阪神・淡路大震災の時も、この既存不適格建物の建替えが問題になった。

将来買い換えなどで自宅売却をする際に、次の購入者や抵当権を設定する銀行は再建築できるかどうかを検討する。再建築が困難または不可能な場合は、新しい買い手が付きにくくなる。買い手が見つかってたとしても、新しい買い手に対して、物件的な理由で住宅ローンの融資をしない場合が多い。

景観条例違反の件で問い合わせ

景観条例違反の問題について直接問い合わせた方から、内容を伺った。以下にやり取りを記述する。2005年11月10日17時50分頃、湘南袖ヶ浜レジデンスマンションギャラリーに電話(0120-151-225)で問い合わせをした。応対した担当者は坂田と名乗ったという。

「景観条例に違反するというのは本当でしょうか」
「湘南袖ヶ浜レジデンスが、ですか」
「はい、そうです」
「今、現在、景観条例に違反するということはございません」
「すると将来はどうなのでしょうか」
「将来、どのような形になるかは分かりません」
「景観条例は来年か再来年には公布される予定と伺っておりますが」
「条例が成立するとしても、どのような内容になるかは私共では申し上げられません」
「そうなりますと購入者としては自分で調べなければならないわけですね」
「ただ、通常の場合、高さ制限に違反するとしても、既存不適格となるだけで、将来建替える場合に制限されますが、すぐに取り壊さなければならない、というようなことにはなりません」
「先ほど、内容は決まっていないとおっしゃられましたが、それは決まっているのですか」
「景観条例が既に施行されている地域もありますので、そこでの場合です」
「つまり、平塚市では別の内容になるかもしれないということですね」
「通常のケースではなりません」
「ですから、ご説明の場合というのは他の地域のことで、平塚市では、すぐに壊さなければならない、という内容になる可能性もあるわけですよね」
「はい。ないとは思いますが」
「ないとする根拠は他の地域の条例内容で、平塚市議会の審議状況を踏まえてのものではないわけですよね」
「・・・・・・」
「それから、おっしゃる通り、既存不適格になるとしても建替えの場合は困ることになるわけですよね」
「建替えというのは何十年先のことで、その間に用途地域の変更もありえますし・・・」 「あのですね、住む側にとっては何十年と住むわけで、売ったら売りっぱなしというわけにはいきませんよ」
「・・・・・・」
「建替えの際には、もっと小規模の建物しか建てられなくなり、何人かの住人は出て行かなければならなくなる可能性もあるわけですよね」
「あるかのしれませんが、私共としては断言することはできません」
「こちらでもっと調べなければならないということですね」
「申し訳ありません」

イーホームズに建築確認申請

湘南袖が浜レジデンスはイーホームズから建築確認申請をした。イーホームズは杜撰な審査で姉歯建築設計事務所による耐震データ偽装構造設計書を承認した民間検査機関である。「湘南袖が浜レジデンスも大丈夫だろうか。別の機関で再確認をしてほしい」と思うのは自然な心理である。購入検討者はもとより、これまで平穏に暮らしてきた近隣住民にとっても、当然の心配事である。

湘南袖ヶ浜レジデンスマンションギャラリーに電話(0120-151-225)で問い合わせした人によると、以下のやりとりがあった(2005年11月22日)。販売担当者の「テレビで騒がれておりますので、私どもも現在確認中でございます」との発言は注目に発言する。消費者の安全第一からではなく、マスメディアが騒ぐから確認するという姿勢である。
「湘南袖ヶ浜レジデンスはイーホームズに建築確認申請をしたと聞いていますが、大丈夫ですか」
「現在、調査・確認中でして何とも言えません」
「確認とは建築確認という意味ですか」
「いいえ、そうではございませんで、事業主への確認ということでございます」
「イーホームズではなく、事業主に確認しているということですか」
「設計事務所による偽造が大きなニュースになっていますが、イーホームズの審査に問題があったと報道されています」
「テレビで騒がれておりますので、私どもも現在確認中でございます」
「建築確認自体はイーホームズから既に下りているということですよね」
「左様でございます」
「建築確認を他の機関で取り直す、ということは考えられていないのでしょうか」
「今の段階では何も申し上げられません」

反対運動への妨害

匿名掲示板での殺人予告

インターネット掲示板「平塚ちゃんねる」では反対者を脅迫する内容の匿名投稿がなされた(2005年6月18日)。殺人予告と受け取ることもできる。「幹事不動産会社の担当者のお父様が行政や市議会にも強い影響力を持つ某団体のお偉いさんだからねえ。あんまり強く反対すると駅のホームで電車に乗るときに後ろが気になって電車に乗れなくなってしまうといけないから、このへんでやめておいた方が身のためだよ」(適宜、句点を付加した)。

湘南袖ヶ浜レジデンス建設反対運動の幟旗に破壊工作

2005年9月28日未明、湘南袖ヶ浜レジデンス建設反対運動の幟旗が何者かに破壊された。破壊されたのは幟旗六本である(「美しい街並み自分たちで守る」湘南ジャーナル2005年11月4日)。ポールは折られ、旗は破かれたり、外して結ばれたりと現場は惨い状態になっていた。

10月4日、警察に器物損壊の被害届けを提出することを伝え、10月8日に受理された。警察からは周辺のパトロール強化を伝えられた。反対運動に対する明確な挑戦である。このような陰湿な破壊工作は工作者の意図とは逆に、かえって反対運動を結束させ、より強硬にすることになるだろう。

どうして ここに 16 階 SAVE THE GREEN IN HIRATSUKA 私たちの景観を守ってくれますか!!!
no16F 空と緑と景観を守ろう 平塚市民の自慢の景観を守ってくれますか!!! 湘南なぎさプロムナードの環境を守る会 活動記録
no16F 平塚袖ヶ浜計画 今日のトピック 平塚市民の自慢の景観を守ってくれますか!!! 景観モデル地区に突如持ち上がった高層マンション計画「平塚袖ヶ浜計画」の見直しを求める市民の運動 **守ろう 広い空 穏やかな環境
湘南なぎさプロムナードの環境を守る会
(仮称)平塚袖ヶ浜計画 「ここには過去結核患者収容病棟があった。
この敷地の一部で過去医療器具等を焼却し埋伏していた。
道をはさんで向かい側の高浜台ハイツの公園からはいまも土を掘ると簡単に医療廃棄物が出てくる。
目下、解体作業が進む看護師寮は当時は死体置き場だった(第I期工事B棟建設予定地)。
淺沼組の現場責任者安部氏は、看護師寮付近の竹林を刈っていて、急に具合が悪くなったそうである。
ライト工業という会社が一部の土壌入れ替え作業を請け負った。掘ると次から次へ医療廃棄物が出てきたものだから、種分けしてコンテナに詰め院外廃棄する作業と、土壌を選別する作業とで4ヶ月を費やした。」

江口友子のまちある記 平塚市議会議員(無所属)「周辺の住宅を見下ろすかのように立ちそびえる高層マンションは、都市計画と住民の手によって慎重に築きあげてきた環境や景観を一気に壊してしまいます」(2005年1月31日)。5月18日はマンション建設で景観が破壊される状態を示した写真を掲載した。「スカイラインは、みごとに分断されてしまいます」。
松本とし子・平塚市議会議員(日本共産党) 「(仮称)平塚袖が浜計画」とは あの旧杏雲堂病院跡地が・・・。
「美しい街並み自分たちで守る 低層化求め市民運動ひるまず 旧杏雲堂跡地 マンション・病院景観問題」湘南ジャーナル2005年11月4日


景観保全

美しい景観や眺望は成熟した市民社会の象徴である。町並みは地元が長年にわたり培ってきた市民の貴重な財産である。「良好な景観は現在および将来における国民共通の資産である」(景観法2条)。生活環境の保全は世の中の常識であり、且つ必然であり、かけがえの無い有形の財産である。次世代に引き継がなくてはならない共有財産である。素敵な景観の場所を私達の時代で終わりにしてはいけない。

住まいは個人のものだけでなく、社会のものでもある。私たちはその中で生き、活かされている。「都市づくりの目標は、いい風景の中で楽しく暮らすことにある」(北沢猛「人口減考えた都市づくり」読売新聞2005年11月18日)。これから景観の問題は、日常的な社会問題として扱われていくことが予想される。

自分の属している空間を守ることは、その中にいる人々を大事に思い、愛することと同じことである。住民自身が声を出して、行動して、汗を流さなければ住みよい街は作られない。意見の対立を避け、ムラ社会から孤立しないという日本人の古くからの体質を維持していては、自分の資産も公共財も守れない。利潤追求を最優先にした事業計画に対し、住民が「地域の環境や景観に配慮したものにして欲しい」と声を上げることは当然の権利である。

高層マンションにより環境をすっかり変えてしまう計画に対し、反対運動が起こるのは当然である。今までとは全く異質な大きな建物ができるのだから、反対は当然の権利である。計画内容に問題はないかどうか、住民への説明は十分かどうか、環境や住民生活への影響を危惧する声に対し誠意を持って答えているか。

何も言わなければ、景観は悪くなる一方である。よりよい環境を残すように事業者や行政に対して働きかけるのは、住民の義務でもある。街並みや景観を無視した業者の営利至上主義に対し、住環境防衛の闘いを行わざるを得ない。住民運動は日本人の自治意識や政治参加意識も高めてくれる。景観の維持は、長期的に見れば住民のみならず地元企業にも利益をもたらす。

行政においても新たに建つ高層ビルに対し、既にある住宅地を保護する制度を考える時期に来ている。地方政治と行政の場は、何よりもそこに暮らす住民の利益を第一に考えられるべきである。「都市再生」を掲げるならば、ゼネコンを潤すだけの大規模開発に巨額の予算をつぎ込むのではなく、都市における居住の快適性や住環境を守る住民自身の運動を支援することが求められる。地方議員は住民からの声を聞き取り、自らの判断に立って行動すべきである。

住民意思を無視した事業者により、建設が強行されることは少なくない。それでも反対運動が負けない方法はある。現在訴訟を起こしている深沢ハウス(旧都立大学理工学部跡地の長谷工による巨大マンション開発)は訴訟の影響で全体の三割しか売れていない(第一回とどろきシンポジウム、玉川区民会館ホール、2005年2月5日、五十嵐敬喜(法政大学教授)発言)。

京都市のアンケートで約9割が「景観のための建物制限は必要」

京都市は2005年8月に実施したアンケート調査「歴史都市・京都の創生〜京都の景観を守るために〜」の結果を発表した(2005年11月10日)。「建物に一定の制限を加えるのはやむを得ない」という回答が約9割に上るなど、景観に関する規制に積極的な市民が多いことが明らかになった。

アンケートの回答用紙は、住民基本台帳と外国人登録データから無作為抽出した20歳以上の市民3000人に郵送で配付した。有効回答数は1503(有効回答率:50.1%)。「建物を建てる場合に、建物の高さや色、形などが制限されることについて、どう思うか」という設問に対する回答は、「自由に建築したいが、景観に配慮する必要があるので、一定の制限は必要だ」が68.3%、「景観は重要なので、制限が加わってもかまわない」が21.6%を占め、あわせて約9割が景観を保全するための建物への制限の必要性を感じていることが判明した。

「現在の京都の景観について、どのような印象を持っているか」という設問には、回答者の67.1%が「魅力のある景観は失われつつある」と危機感を示した。「京都の景観を保全・再生するための規制についてどう思うか」という設問には「規制はさらに強化するべきだと思う」が52.8%を占め、「規制を緩和すべきだと思う」の3.8%や「規制はするべきではないと思う」の0.9%を大きく上回った。


自然

自然は段々と少なくなり、人工のコンクリートで固めたものばかりが増えてきている。人類には自然のバランスが必要である。一度破壊された自然は元には戻らない。私利私欲のために自然を破壊することは許されない。自然は限りない資源の宝庫である。自然に逆らえば自然から逆襲を受けることになる。環境基準は引き上げられるべきで、決して下げられるべきではない。生態系全体ひいては環境を守るため、関係者の決意と行動が求められている。

テムズ河では「幅の広い落ち着いた流れの両岸に、歴史的な建造物が並んでいる。ぶざまなコンクリートの堤防や高速道路によって隅田川の光景を都市から遮断し、抹殺した東京と異なり、ロンドンは川と分かちがたく共存している」(田中芳樹、創竜伝10大英帝国最後の日、講談社、1999年、99頁)。

「日本橋の真上に高速道路をかぶせて建設し、醜悪な市街づくりに狂奔した日本では、泡沫経済がはじけて消えた後に、コンクリートの荒野だけが残った」(田中芳樹、創竜伝10大英帝国最後の日、講談社、1999年、126頁)。

開発業者の在り方

地域の実情をよく調査し、その上で開発を行うのが本来の開発業者の在り方である。地域に根差す住宅会社だからこそ、周辺状況にも気を配って顧客の不安に応えるべきである。開発業者には真剣に環境のことを考え、それを提案していかなければならない責任がある。住民感情は説明会などで充分察知することが可能である。察知した上でどう対応するかで、その会社の社会性が判断できる。

地域住民の意思を置き去りにして進められる開発には疑問を抱かざるを得ない。環境を破壊しても金儲けができればいいという考えには賛同出来ない。利益のみを追求し、独善的な判断で業者が環境や地域住民に被害や損害を与える可能性を無視・否定することは許されない。住民が長年に渡りつくり上げてきた「街の有り様」を民間事業者が勝手に激変させてしまうことは許されない。

地域の住民の反対を無視し、地域の景観を損なってまで、押し切ろうとする営利活動は、反対運動を起こされて当然である。経営者は時代の流れに対し、口先だけで実体のない企業理念を、後追いで取って付けたように唱えるのではなく、地域の住民の誰もが共感を覚え、自社の利益も確保できる事業展開を考えるべきである。これに対し「綺麗事を言うな!」と言うのであれば、明らかに景観意識の徹底的に低い企業も、消費者に対して「景観に充分配慮して‥‥」と虚言を弄するのは止めるべきである。

プロジェクトの責任

「事業者は、基本理念にのっとり、土地の利用等の事業活動に関し、良好な景観の形成に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力しなければならない」(景観法第5条)。プロジェクトの収益だけを考えないことが肝要である。「損して得とれ」という言葉がある。プロジェクトより大きなもので考えることが重要である。

「組織は、プロジェクトによって生じる影響について、ますます多くの責任を負うようになってきている(たとえば、道路建設プロジェクト中の考古学遺跡の偶然による破壊)。それが完成されたはるか後に、人々、経済および環境に与える影響であっても同様である(たとえば道路は、かつては汚染されていなかった環境へアクセスをもたらすとともに破壊も促進しうる)」(プロジェクトマネジメント協会、プロジェクトマネジメント知識体系ガイド2000年版、「2.5.4社会・経済・環境の持続性」)。

建築基準法は最低基準

建築基準法は最低基準に過ぎない。法律に触れなければ何をしても構わない訳ではない。建築基準法を遵守することは当たり前のことであり、それだけでは社会的責任を果たす必要条件になっても十分条件ではない。建築確認を錦の御旗にして、合法的であれば何をしてもいいという商売のやり方は社会的な道義を忘れたものと評価せざるを得ない。

「形式的な法令順守さえしていればいいという消極姿勢が不祥事再発の根本原因」となっている(「三菱グループ大半、総会非公開 閉鎖性が生む硬直化 不祥事防止決意に残る疑念」産経新聞2005年6月30日)。2005年6月以来、社会を大きく揺さぶっているアスベスト問題のように、法令に抵触しているわけではなくとも被害を出すケースは少なくない。法令順守だけでは企業の社会的責任は果たせない。

建築基準法をクリアしていても「住民に与える影響が著しく大きく、受忍限度を超えている」と裁判所が認定し、事業者側に賠償を求めるケースは全国で出始めている。「建築基準法に定める日影規制の違反がなく建築確認を得たときは日照権侵害はないと思いがちだが、建築基準法をクリアーしていても日照権侵害となる場合があるので注意が必要である」(法常格「建設工事と日照権」建設総合サービス事務局、もぎたてレポ、VOL.26、1998年8月26日)。

映画「The Corporation」の中で年商14億ドルのカーペットメーカーである米国インターフェース社を環境に配慮した事業運営に変身させたレイ・アンダーソンRay Anderson会長は以下の予言をした。「現在の標準的な企業の商業活動は後世、忌まわしい犯罪行為として語られるようになるだろうStandard corporate practice of today will be remembered as heinous criminal behavior」(Jason Silverman, Wired News: Preaching to the Anti-Corp Choir, Jun. 04, 2004.)。「法規制や社会情勢の変化で、過去に合法だった行為が違法になる」(「今日の白が明日は黒になる」日経ビジネス2005年8月22日号28頁)。

地域社会の凶敵

悪徳不動産業者はなり振りかまわず突進し、売ったら売りっぱなし、後は野となれ山となれである。環境のことは少しも考えず、売れもしないマンションをどんどんつくり、町壊しをする。「そこのけ、そこのけデベロッパーが通る」と言わんばかりのむき出しの大企業利益優先の論理だけである。

「ゼネコンこと大手総合建設業者は建物や施設をつくり、土木工事を行うのが仕事であって、そのことによって環境がどのように破壊されようと、貴重な生物が絶滅しようと、その地域社会にどんな混乱を生じようと、一切責任を持たない、関係ないという基本方針(ポリシー)を持つ事業体である。国の政治権力と結んで日本列島を乱開発し、物質文明の砂漠にしようとしている元凶である」(森村誠一「地域社会の凶敵」旧日本IBMグランド跡地対策協議会ニュース・特別号2004年11月15日)。

理解を要求するだけの説明会

建設計画、建設工事は時には人命さえ脅かし、人々の生活に大打撃を与える。しかし事業者には近隣住民とうまくやっていこうという発想は皆無で、ケチるだけケチって、それでダメなら金で解決しよう、「後は知らん!」という態度が見え見えである。

住民向け説明会では「え〜今後検討してまいりたい」「え〜ご理解いただきたい」「ご理解を賜りますようお願い申し上げます」ばかりで、質問に対する回答はなされず、一つも説明になっていなかった。説明会ではなく、一方的な計画書・パンフレットの解説会に過ぎなかった。

三菱地所トラブル

三菱地所、土壌汚染を隠して販売

「湘南袖ヶ浜レジデンス」(ピースピースピースプロジェクト)の事業主である三菱地所(東京都千代田区)は、2001年12月、複合施設「大阪アメニティパークOAP」敷地内のマンション「OAPレジデンスタワー」の土壌や地下水から環境基準を超えるセレンやヒ素、カドミウムなどが検出されたとの重要事項を隠してマンションを販売した(粟野仁雄 「不動産業界の王者「三菱地所」が客を騙してマンション販売」財界展望2005年1月号)。

OAPの事業主は三菱地所と三菱マテリアル(東京都千代田区)である。販売代理は三菱地所の100%子会社である三菱地所住宅販売(東京、大山智社長)。三菱地所と三菱マテリアルの両社役員らが行った会議で「土壌汚染を公表するべきだ」との意見が出ていたにもかかわらず、「公表すれば資産価値が下落する」などの理由で非公表にしていた。

2004年12月16日、大阪府警生活経済課は、50代の男性へのマンション販売について宅地建物取引業法違反(告知義務)容疑で、法人としての三菱地所住宅販売を書類送検した。容疑となった違法なマンション販売は、今月21日午前零時に公訴時効(3年)が成立する。同課はこれまで、同社のほか、開発主体の三菱地所、三菱マテリアル両本社を家宅捜索するなどしてきたが、容疑者を特定できなかったため、時効成立回避のため法人だけを書類送検した。今後、2002年の販売分について、同法違反容疑で捜査を続ける。

大阪府警生活経済課は両社上層部が汚染隠しを決めた疑いもあるとみて、今後も関係者の事情聴取などを続け、全容解明を目指す(「三菱地所住販を書類送検へ 重金属土壌汚染隠し事件」共同通信2004年12月14日、「土壌汚染隠しマンション販売、三菱地所住宅販売を送検」読売新聞2004年12月15日)。生活経済課は会議のメモなどを押収し、役員らの汚染に対する認識について解明を進めている。

2001年夏頃、敷地内から基準値を超える有害物質が出ていることが両社幹部に報告された。これを受け、両社役員らが出席した会議は2002年中に数回開かれ、汚染対策が話し合われた。その中では「汚染公表すべきだ」という意見や「公表すれば売れなくなる」といった消極的な意見も出された。

三菱地所の高木茂社長(65)は大阪府警生活経済課の調べに「マテリアル社などと歩調が合わず公表を含めた具体策を打ち出せなかった」などと供述している。同課は両社経営陣が汚染の事実を把握しながら公表を見送った可能性が高いとみている(江畑佳明「OAP土壌汚染:「三菱」2社、役員会で「公表すれば価値下落」−−押収メモで判明」毎日新聞大阪夕刊2005年3月28日)。

木村惠司・三菱地所社長は土壌汚染の可能性について認識があったことを認める。「もともとOAPの土地には、旧三菱金属(現三菱マテリアル)の大阪精錬所がありました。ですから開発の時には当然、何らかの形で土壌汚染のようなことがあるんじゃないかと思っていました」(木村惠司「社会に遅れた土壌汚染対応」日経ビジネス2005年8月1日号132頁)。

「三菱側にとっての落とし穴は、法令に違反しているかどうかに固執するあまり、法令以上の高度な企業倫理を求める社会の要請に応えようとする意識が欠けていたことにある」(「今日の白が明日は黒になる」日経ビジネス2005年8月22日号29頁)。

日赤医療センター敷地でマンション建設紛争

「湘南袖ヶ浜レジデンス」(ピースピースピースプロジェクト)の事業主である三菱地所は東京都でも病院敷地でのマンション建設事業を行い、反対運動に直面している。

日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)の敷地内にマンションなどを建設する計画は、都市計画法に基づく開発許可を得ていないなどの違法行為があるとして、隣接地で小、中、高校を運営する学校法人東京女学館が2005年5月9日、東京都を相手取り、東京地裁に提訴した。都に工事中止命令を出すことなどを求める。

訴状によると、日本赤十字社と学校法人日本赤十字学園は、建物の老朽化が進んだことから医療センターの建て替えや特別養護老人ホームの新設などを計画。約7万3000m2の敷地の南側に医療センターなどを集中して建設するとともに、再建整備の財源を確保するため敷地北側に定期借地権を設定して三菱地所と三井不動産に提供した。定期借地権を設定した敷地の面積は約3万m2で、地上6階から19階建ての分譲マンション8棟を建設する工事が2004年から進んでいる。

一連の計画について、日本赤十字社らは都市計画法29条の開発許可は不要であるとの見解に基づいて再建整備計画を進めてきた。道路の廃止、付け替え、新設といった土地の区画形質の変更がないので、都市計画法で定義されている開発行為に該当しないというのが根拠だ。

しかし原告側は、「新たに建設される建物は多数でかつ大規模であり、周辺環境に与える影響が極めて大きい。それを考えると、開発許可が不要という考えはあまりにも形式的で不合理。都市計画法の目的や基本理念を達成できないことは明らか」として、都の開発許可を得ないまま工事を進めるのは違法と訴える。

また、分譲マンションの総戸数は約780戸だが、マンション以外に600床の医療センターや156室の職員宿舎なども計画されており、戸数1000戸以上の計画に必要とされる環境影響評価手続きも必要となるはずだと主張している。

さらに再建整備計画の敷地は建築基準法86条における一団地の認定を都から得ているが、すべての建物を取り壊して従来とまったく異なる空間を形成する計画は、既存建物への追加建物という86条の規定の範囲を超えていると主張。敷地北側は定期借地権を設定して建物管理も三菱地所らに任せることから、一体的な管理ができず一団地の認定は違法とする。

行政が第三者に対して一定の処分をするように求める「義務付け訴訟」は、行政事件訴訟法の改正(2005年4月1日施行)で可能になった。今回の訴訟は、この制度を活用して、許可や認定を行う都に、工事の中止と禁止命令を出すよう求めた(「隣地の学校法人がマンションなどの工事中止を求めて東京都を提訴」日経アーキテクチュア2005年5月16日号46頁)。

学校法人 東京女学館 『日本赤十字社広尾地区再建整備計画に関する訴訟について』


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