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東山魁夷展を見た。(990925,茨城県近代美術館)

なんといっても森なのだと思った。海よりも森。
日本画における森の描き方に、新しい境地を開いたのではないか。
それから、霧、靄の類。

国民画家と言われるのは理解できる。きれいだ。気持ちが安らぐ。丁寧を極めた仕事に頭が下がる。

滝や白馬は描かずもがなでは、と思う。
滝がない方が完成度が高いのではないか。
白馬を描くことによる、心象と具象の重ね合わせは、落ち着きが悪いというか、少し無理を感じる。「自己」など絵の中に持ち込まない方がいいのではないか、この作家の場合は。

唐招提寺の障壁画は試作のみの展示であったが、これはただただ素晴らしい。
この一作によって、魁夷は日本美術史に残るだろう。
70歳にして頂点に到っていることに感嘆。

40歳頃は、平面構成を色々研究していたようだ。アメリカの現代美術を思わせるようなものもあって面白い。
北欧旅行によって、奥行きが深まったように思う。
ドイツで描いた、民家の壁。実は奥行きを持っている平面の表現として秀逸。
中国の風景を描いた水墨画は総じて傑作。

最後に展示されていた晩年の三作がつらかった。画風の変化というより、衰えだろう。
魁夷の本質的なものは維持されているが、張りつめていたものが少し緩んでいる。
晩年のバド・パウエルを聞くようだった。

 

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