Asian Pops

映画のサントラ・主題曲・挿入曲(その2)


《自梳女》電影原聲帶

オリジナルサウンドトラック

《自梳女》電影原聲帶
ELITE 7432154672 ES-5143 (1997)
(北京語)

これはカリーナ・ラウ(劉嘉玲)、チャーリー・ヤン(楊采妮主演の映画『自梳』(97)のサントラで、この作品は日本では97年の第10回東京国際映画祭で『女ともだち』というタイトルで公開されています。

この作品はあらゆる点でとても良い映画なのですが、音楽がいいのもその一つです。音楽の担当はスティーヴ・ホウ(何崇志)という人で、オーケストラを使った壮大な曲から、小編成の管弦楽による軽い曲、ピアノによるややジャジーな曲など、バラエティに富んだ曲作りをしています。

映画の各シーンと音楽とのマッチングも良く、サントラを聴くと映画のシーンがいくつも浮かんできます。
例えば私が気に入っているシーンでこういうのがありました。ドラゴンボートレースの日、小船でアーチ橋の下を通ったカリーナ・ラウが、橋の上にいるチャーリー・ヤンに気がついて手を振ろうとしますが、彼女が恋人と一緒なのに気付いて、一瞬ためらい、そのまま上げた手を引っ込めてしまいます。たったそれだけの短いシーンなのですが、その時のカリーナの戸惑いの表情と仕草が絶妙で、このシーンだけで主演女優賞あげてもいいと思ったくらい。ここで流れているピアノの曲がとても美しく、台詞の無いシーンだけに、この音楽を聴くと、水面を流れる小船の映像が目の前に浮かんできてしまうのです。
自梳 自梳

CDの構成は、サウンドトラック11曲の他、映画の中では使われていませんが、カリーナ・ラウとチャーリー・ヤンのデュエットによる主題曲と、カリーナ・ラウの歌う曲も1曲含まれています。カリーナ・ラウは歌手としてアルバムも出していますが、まあその、あんまり歌は上手くないです。


小倩

小倩

オリジナルサウンドトラック

小倩
Philips 536 331-2 (1998)
(北京語)

これはあの『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』シリーズのアニメーション版『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー スーシン』のサントラです。私が買った物は、CD(上の写真)とVCD1枚が下の写真の様な派手なパッケージに入った2枚組みです。これで3,000円しなかったから(東京都内某CDショップ)、結構お買い得です。ただし、これは台湾で出されたもので、全て北京語となっています。

CDの内容

  • 1曲目「愛恨惹是非」 唱:ロナルド・チェン(鄭中基)
    これは黑山老妖のテーマとなるバイタルな曲。
  • 2曲目「生死相許」 唱:レオン・ライ(黎明)、プリシラ・チャン(陳慧嫻)
    映画のエンディングテーマ。デュエットの掛け合い部分が良く出来ている美しい曲。
  • 3曲目「親親桃花」 唱:エンジェル・チャン(陳琪)
    主人公二人が初めて出会うシーンの曲。実写版の映画と異なり、小倩は空飛ぶ籠に乗って桃の花を撒き散らしながら、派手に登場します。寧采臣はここで彼女に一目惚れしてしまうのです。
  • 4曲目「点一黑就興奮」 唱:ジェームズ・ウォン(黃霑)
    ジェームズ・ウォンが吹き替えを担当した、燕赤霞のテーマ曲。
  • 5曲目「我最美」 唱:リンダ・ウォン(王馨平)
    挿入曲の一つ。
  • 6~18曲目 映画のサウンドトラック
    バックの音楽が全て収録されています。オーケストラを使った美しい曲が多く、何國杰という人が音楽を担当しています。

    この映画は、吹き替えトラックが香港版と台湾版の二種類製作されましたが、挿入曲もそれに合わせ、それぞれ同じ歌手が広東語と北京語で歌ったものが使われています。このCDに収録されているのは、台湾版の北京語で歌っているバージョンです。

VCDの内容

  1. 「愛恨惹是非」のビデオクリップ(カラオケ付き)  唱・出演:ロナルド・チェン(鄭中基)
    これはクリストファー・ドイルが演出し、ハイ・チョンマン(奚仲文)が美術を担当するという超豪華スタッフで、かなり凝った映像になっています。
    愛恨惹是非
  2. 「生死相許」のビデオクリップ(カラオケ付き)  唱・出演:レオン・ライ(黎明)、プリシラ・チャン(陳慧嫻)
    生死相許
  3. 本作品のメイキングビデオ(台湾版)
    この作品は吹き替えの担当が香港版と台湾版とで異なるため(このページ参照)メイキングビデオも、香港版と台湾版の両方が製作されました。香港版のほうは、日本の上映劇場で前売り券と供に販売されました。

完全結婚手冊

オリジナルサウンドトラック

完全結婚手冊
EMI100 7 2438 59533 2 3 (1997)
(広東語・北京語)

これは、アニタ・ユン(袁詠儀)、チャン・シウチョン(陳小春)、チャーリー・ヤン(楊采妮主演の映画『完全結婚手冊』(97 未公開)のサントラです。結婚をテーマにしたこの映画は、いかにもUFO映画らしい、日常感覚に根ざした軽く暖かいタッチの作品です。

アルバムの1曲目、キャス・パン(彭羚)が歌う主題曲「只因找到你」は、セリーヌ・ディオンのヒット曲"Because You Loved Me"のカバーです。この元歌は、ミシェル・ファイファーとロバート・レッドフォード主演の映画『アンカーウーマン(Up Close and Personal) 』(1996)の主題曲でもありました。
映画のためのオリジナル曲は、これとチャーリー・ヤンの歌う6曲目のみで、その他に、映画の中で使われた曲として8曲が収められています。
面白いところでは、40~50年代のスター、ヤオ・リー(姚莉)の歌うヒット曲「玫瑰玫瑰我愛你」が、チャン・シウチョンの働く写真館で流れていたりします。これは香港では有名な曲で、この曲と同名タイトルの映画も、あの『黒薔薇vs黒薔薇』の続編としてレオン・カーファイ(梁家輝)主演で作られています。こういう古い流行歌が全部で3曲使われていて、そういうところがまた面白いです。
その他では、チャーリー・ヤンのアルバム「1997 采妮からも2曲が使われていて、これも映画のイメージによく合っていました。


全身莫文蔚

莫文蔚 カレン・モク

全身莫文蔚
滾石唱片 ROD 5123 (1996)
(広東語)

これは見ての通り、カレン・モクのオールヌードのジャケット写真が話題になったアルバム。この「全身莫文蔚」っていうアルバムタイトルもなんか良いです。
彼女は最近ではZaのコマーシャルソングなどで明るいポップな曲をヒットさせていますが、このアルバムはちょっと重い感じです。しかしこれが一番彼女らしく、音楽的にも質が高くて、やはり代表作であると言えます。

このアルバムの中で何曲か、彼女が出演した映画の主題曲を歌っています。

  • 2曲目「色情男女」
    これは『夢翔る人 色情男女』の主題曲。このダラ~っとしたアンニュイな感じがすごくいいです。映画はまだ観ておりませんが、似合ってそうです。
    この曲のような、ややスローで重い曲がアルバム中には多く、フランス映画のような独特の雰囲気がとても心地好いです。

  • 9曲目「誰和誰」
    これは『飛虎雄心II之傲氣比天高 』(未公開)の主題曲。この映画は、好評だった『ファイナル・オプション 香港最終指令』の続編と位置付けられる作品です。なんとなく北欧ポップス的なゆったりした曲。

  • 11曲目「比夜更黒」
    これはリー・リンチェイ(李連杰)主演の『黒俠』(未公開)の主題曲。これはいかにも香港ポップス的な曲。

  • 12曲目「未了情」
    これは『チャイニーズオデッセイ 西遊記 其ノ弐』の挿入曲。ちょっと中国的メロディーのゆったりした美しい曲です。
    現在のカレン・モクの女優としての活躍ぶりはご存知の通りですが、私も含め、世間で女優としてのカレン・モクが注目されたのは、やはりこの『チャイニーズオデッセイ』のシリーズだったようです。私もこの1作目を観たとき、彼女の超情熱的な演技に目が釘付けになってしまい、以来ファンとなったのでした。

    ちなみにこのうち2曲は、次に紹介する「滾石院線」というアルバムにも収められています。


  • 滾石院線

    オムニバスアルバム

    滾石院線
    滾石唱片 ROD 5147 (1997)
    (広東語・北京語)

    これはロックレコード(滾石唱片)のアーティストによる映画の主題歌を集めたオムニバスのアルバムです。非常に盛り沢山で、丁度今話題になっている映画の主題曲なども入っているので、お買い得かもです。

  • 1曲目「有心人」   『ボクらはいつも恋してる! 金枝玉葉2
    唱:レスリー・チャン(張國榮)
    98年秋公開予定です。

  • 2曲目「色情男女」   『夢翔る人 色情男女
    唱:カレン・モク(莫文蔚)
    これも98年秋公開予定です。

  • 3曲目「快樂」   『97家有喜事』(未公開)
    唱:エミール・チョウ(周華健)

  • 4曲目「一個好人」   『ナイスガイ
    唱:ジャッキー・チェン(成龍)
    なにもジャッキーが自分で歌わなくても…と思うんだけど。

  • 6曲目「新不了情」   『つきせぬ想い
    唱:萬芳

  • 7曲目「追」   『君さえいれば
    唱:レスリー・チャン(張國榮)

  • 8曲目「當真就好」   『花の影
    唱:レスリー・チャン(張國榮)/サラ・チェン(陳淑樺)

  • 9曲目「流光飛舞」   『青蛇転生
    唱:サラ・チェン(陳淑樺)

  • 10曲目「玫瑰香」   『赤い薔薇白い薔薇
    唱:サンディ・ラム(林憶蓮)
    ちょっと50年代のタンゴみたいな妖しい曲。

  • 11曲目「未了情」   『チャイニーズオデッセイ 西遊記 其ノ弐
    唱:カレン・モク(莫文蔚)

  • 12曲目「笑紅塵」   『スウォーズマン 女神伝説の章
    唱:サラ・チェン(陳淑樺)
    映画の暗い雰囲気の中で、この明るい曲が非常にいい感じでした。

  • 13曲目「願」   『晩9朝5』(未公開)
    唱:サンディ・ラム(林憶蓮)
    これはとても美しい曲です。

  • 14曲目「追夢」   『チャイニーズオデッセイ 西遊記 其ノ弐
    唱:アテナ・チュウ(朱茵)
    アテナ・チュウのちょっと下手っぴな歌がかわいい。

  • 16曲目「男兒當自強獅王爭霸之大合唱」  『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地争覇
    唱:大合唱
    これは誰でも知っているあのお馴染みのメロディーです。「大合唱」とかいって、誰が歌ってるのかよく判らない。ひょっとしてリー・リンチェイの声とかも入っているんだろか?

  • 黑色誘惑

    張智霖 ジュリアン・チョン

    黑色誘惑
    EMI百代 (1997)
    (広東語)

    抱著你的日子

    彭羚 キャス・パン

    抱著你的日子
    EMI百代 7243 8 55799 29 (1996)
    (広東語)

    この2枚のアルバムは、「古惑仔」シリーズの外伝である、サンドラ・ン(呉君如)主演の「古惑仔情義篇之洪興十三妹」(98 未公開)の挿入歌が収められているアルバムです。

    洪興十三妹 この映画の英語タイトルは"Portland Street Blues"といいますが、Portland Streetとは、モンコック(旺角)の夜の繁華街である砵蘭街のことで、ここで生まれ育った"十三妹"の、ちょっと渋めの青春グラフィティーみたいな映画です。そして使われている音楽も渋いギターのブルースだったり、まさに"Portland Street Blues"という感じでした。

    この映画の音楽は、杜自持が担当しています。この人は、香港ポップス界では有名なアレンジャー・プロデューサーで、ジャズやソウルの味を生かしたアレンジを得意とし、私が一番気に入っているアレンジャーでもあります。この人は今まで映画の音楽を担当したことは少なかったので、そういう面でも興味深いです。

    映画の中では、彼がプロデュースを務めたミュージシャンのアルバムの中から、挿入曲を幾つか選んで使っています。

    まずジュリアン・チョンの「黑色誘惑」

  • 2曲目「別要我放棄」
  • 6曲目「暫停的故事」
    これは2曲ともスローな曲で、しかも相当感情の入った、ドロドロのバラードなのです。部屋でCDかけて曲だけ聴くと、ちょっと何だなあと思ってしまいますが、映画のバックに流れると、すごくハマっていて格好いいです。
    このアルバムでは、彼はアップテンポの曲も何曲か歌っていますが、しかしジュリアン・チョンの声は妙に色っぽいので、やはりこういうドロドロの曲が似合ってます。

    次にキャス・パンの「抱著你的日子」

  • 1曲目「夜風鈴」
    これもスローバラードですが、映画ではアレンジを変えて、よりドラマチックな曲になっています。
    映画では、シュウ・ケイ(舒淇)が、自分を捨てた男に花束を持って殺しに行くシーンで流れました。彼女も銃で撃たれ、二人折り重なって死んでいくシーンが美しいです。十三妹はその後「彼女は一筋の流れ星のようだった」と回想します。とまあ、そういう映画です。

    また他に、映画の主題歌をシュウ・ケイが歌っていますが、彼女は歌が上手いので、歌手としても今後活躍するのではないかと期待できそうです。

    洪興十三妹 この映画は、他の「古惑仔」シリーズとは趣が異なり、夜のモンコックの街がロマンチックで美しく撮られていたり、大陸の風景がまるでカリフォルニアのようだったり、ちょっと独特の雰囲気があります。


  • 短髪

    梁詠琪 ジジ・リョン

    短髪
    EMI百代 EDL-6006 (1997)
    (北京語)

  • 1曲目「短髪」
  • 3曲目「懂得愛自己」
    この2曲は、ダニエル・チャン(陳曉東)ジジ・リョン(梁詠琪)主演の『初戀無限touch』(97 未公開)のそれぞれ主題曲と挿入曲です。
    1曲目は、映画のラスト近く、イギリスへ留学するジジ・リョンと別れたダニエル・チャンが、彼女の乗った車を見送りながら、彼女のことを走馬灯のように回想するシーンのバックで流れます。そういうシーンにぴったりな、少し切なくてドラマチックなアレンジがしてあり、映画で使うことを想定して曲を作っているようです。
    3曲目は、映画のエンディングのバックで流れる曲で、幸せな気分で映画館を出られるような曲になってます。

    また、このアルバムの中の1曲目「短髪」と5曲目「口香糖」の2曲は、オムニバスアルバム「E POWER 電翻你的天」のクラブミックスバージョンと聴き比べると、非常に面白いです。こちらはセンシティブで感傷的、あちらは超クールで格好良いです。


  • 1998/08/16

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