Stones vs. Beatles


お手つぎ運動



 あああ、私はどうしてこう企画モノが好きなんでしょうか。全国のクラブをさがしてもここしかないであろう、Rolling Stones と Beatles だけで一晩盛り上がる、という企画です。クラブ音楽というのは新しさが命ではないのか、何か、今の音楽に対する批評性があるのか、等ということにたいしては、すみません、と土下座するしかないです。おっそろしく単純に、いいメロディ、いいリズムで盛り上がろう、というだけのイベントです。しかし、これが安い割にいろいろ考えられて面白いんだ。

 なんか、基本的にStones, Beatles しかかけてはいけないため、DJにとっては無形重要文化財の神楽なみに縛りがきついイベントのようです。ちょっと前までは、A Hard Days Nightが一晩に4回ぐらいかかったりしていました。で、さすがにしんどいと思ったのか、一時期規制がゆるくなっていたのですが、そうするとChumbawambaだのbeckだの、どこがどうStonesや Beatles と関係があるんだ、というようなものがかかってました。やれやれ。ついでに、一時期リクエストボックスなるものが設けられて、お客さんのリクエストを聴いていたのですが、いつの間にかなくなっていました。どうしてかな、とスタッフの人にきいてみたら、「リクエストしてもしなくても、どうせ全部かかるから意味ないじゃん」とのこと。

 そういう中でいつも楽しみにしているのが、知り合いのDJのよしもと君です。彼は縛りがきつい中で、毎月どうやってか新ネタを仕入れてきてかけてきてくれます。Youssou N'Dour のObladi Oblada (CMで使ってましたね)とか、Bananarama の Help! とか。しかし、最近気付いたのですが、Beatlesのカバーって大体80年代が多くて、最近はあんまりないのではないでしょうか(強いて最近の人をあげたら奥田民夫ぐらい)。なんか、かかっている曲のアレンジが全部80年代風です。そのことを本人に指摘したら苦笑いして、やっぱり最近はBeatlesのカバーをわざわざ作る人はいないねえ、と言っていました。

 で、ちょっと思ったのですが、基本的にBeatles はメロディ、Stones はリズムのバンドだと思うのですが、カバーという形でどちらが再現性が高いかと言えば、圧倒的にメロディの方です。リズム(の中のグルーブ)というのは、どういうものがまだよく分かっていなくて、本人の感覚に凄く依存しているところが多いんですが、メロディに関してはきっちり記述法が決まっていて、誰がやってもかなり共通するところがある。だから、カバーの質というのはBeatles側の方がきいていて圧倒的に高い。で、それぞれのアーティストが自分独自の音で同じメロディをやっているのですが、それぞれがなかなか面白い。安易は安易なんでしょうけど、Beatlesの残したメロディって人類の宝みたいなもんなんだから、これを90年代の音で再構築してみたらそれはそれで面白いものができるのに、誰かやってくれんかなあ、ということ。あ、でも、90年代に入って新しくできた音って、音色とかよりリズムパターンの方が多いのかな。ドラムンベースにビートルズのメロディ。なんだかどうなるんでしょうか。

 それと、前回も書いたんだけど、計算機科学で音楽の研究をしている人、「自己陶酔型ライブシステム」なんぞというへたれたものを作っている暇があったら、「グルーブとはなにか」という根源的な部分を追求してほしいものです。君たち、本当に踊ってるのか?

 で、今日は結局3:00頃までいたんですが、最後に沖縄バージョンlet it be なるものが流れて、盆踊り風の異様な盛り上がりを見せていました。お見事。