depth

前略
急に寒くなってきましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。私は先日、彼女の知人の結婚式があるとかで、二次会で使えそうな曲がないかと聞かれて所有している200枚ばかりのCDを検索してみたのですが、どういうわけかムードミュージックに使えそうな曲は全く存在せず、一応XTCとかElvis Costelloとか渡してみたのですが、視聴した所メロディはいいんだけど、歌詞をチェックしたら即大却下となった、という話を聞いて、なんだかそういえば昔はラブソングなぞ目の敵にしていたな。某K川の畔に集う等間隔アベックを見ては、世界人類が不幸でありますように、と唱えつつ対岸に向かってロケット花火を発射したり、クリスマスの夜に一人で播け播けサリン、とか唱えつつ安下宿でワインを飲んでCarter USMだのFaith No More だのを最大音量で聞いてたな、とか、まあ、それはいいんですが、どうも凶悪な気分が蘇ってきて、なんかわざわざ駿台の予備校生のような鈍臭いポリエステル製のコート(イズミヤ、1980円)を着込んでメトロに出かけました。聞く所によると本日は割とささくれだった音らしいので、かなり期待。
で、入ってみると割と容姿に命を賭けたようないかにもクラバー風の人だらけだったので、凄まじい違和感を楽しみつつぼーっと後方で音を聞いておりました。ドラムンベース。...何か、あんまり恐くないな。取りあえず低音で艶のあるバスドラとかベースの音を思いきり効かせておいて、その上に早いテンポの繊細なハイハットの音を重ねているというのが基本パターンなのですが、あんまし凶悪な気分を増幅する作用をしません。だいたい、私のような素人にとってこの基本パターンにそった音の区別をするというのは、某ROの表現を借りると「盆栽のどこの枝が何度傾いている」というような差を識別するに等しく、ぜんぜん見分けがつきません。従ってどちらかというと、ループの部分よりも、イントロに使っている音の手触りで盛り上がってしまう、という感じで、なんだか大脳皮質ばかり使っているような気分になりました。
ということで考えたのですが、人間、本能的に聴いたら恐い音というのはどんなんだろうか、といえば、まあ取りあえず音量ですか。でっかい音は恐いやろと。私個人的にJimi Hendrixというひとはこの原理をうまいこと利用した人ではないかと思っているのですが、それはまあいいとして、あとは記号的に「危険」と表記してあるような音ですね。Public Enemy のCDを聴いた時に、何かの曲でパトカーのサイレンをそのままサンプリングして使っていて、ああ、いろいろと工夫しているな、と感心した覚えがあるんですが、そうすっと私の場合「そこの黒いスクーター、止まりなさい」というサンプルとか使ったら、おっかない上に**府警に対する殺意とかが想起されて効果抜群なんですが、まあこれは一般性がない。矩形波みたいなのもアラームに使っているからわりといけるかな。しかし、無闇と低音を効かせても、何か大仰やな、という印象だけであんまり雰囲気がでないかもしれない。取りあえずこのDnBというフォーマットはそれはそれで面白いんだけど、どうも私にとってはアカデミックな印象があるな、と思いました。ちなみに私が本能的にやばそうとおもう音は、パンク何かで使うギターのぎょおおという割とペラペラとした音なのですが、わたくし、パンクスの人に殴られた経験もなく、特に経験によって増幅されているようにも思われないのですが、あれは何なんでしょうか。聴神経から脳に伝わった時に、たまたま脳内の危機を伝えるシグナルに類似した部分がある、とか。
本日は一応映像も使っていて、ある程度音と同期させているみたいで割と興味深かったのですが、タイミングはともかく、何かどうしてみんな都市生活の一部を切り取ったみたいな絵、もしくはCGCGした絵を高速で切り替えてみせる、というフォーマットしか使わないんだろう。たまに静止画を使ってメリハリを付けたりとか、もっと生活臭のするようなアホな絵を使うとか、取りあえず「クラブ風でない」絵を使うだけでとんでもなく目立つようになる気がするんですが(多分私が80'sとかが好きなのもそのへん)、もうちょっと「自分が格好を付ける」という前提条件を捨てた方がおもろい絵を作れるのではでは。