Evening Live

佐伯誠之助が出るということで、バイト帰りに直行。いかにも安サラリーマンみたいなスーツ姿だったので、周囲から浮く浮く。ああ、私はここの一員ではない、どうしようどうしよう、という違和感を味わいつつ一発目。...あれ?なんか竹コプターみたいのをかぶって、女性と二人で出とるがな。あんなんだったっけ?で、音はなんか、何もせず単独で聴いてもかなりいい。どうもしかし佐伯誠之助にしてはかっこよすぎるような、音作りが上手すぎるような、幸せすぎるような...いちおう変なタイミングで笑いを取ってはいたけど、もう少し面白かったような気もするし、この人は一体何者だ?前回顔をあんまり覚えていないからなあ。などと首をひねっているうちに終わってしまいました。
二発目がドラヒップ。なんだかかかっている曲がヒップホップ風になってきて、思いきりクラブ風の格好で決めた男性が3人ターンテーブルの後ろにならんだのて、ああヒップホップか、私、真面目にヒップホップをしている人を見るとどうしても笑ってしまうんだな、殴られないだろうか、と心配していたら、いきなり、バニーガール風の耳とファーのショートパンツを付けた女性二人組が出てきて、「よ!よ!」というヒップホップの人特有の鳴き声をあげて踊りだしました。で、歌詞がまた相撲取りの元田中がちゃんこ食って横綱を下手投げで破っただの、女スパイの本当のボスが、実は秘密にして活動していたはずのダーリンだった(なんてありがちな)だの、日本人がドイツでネオナチに刺されて重傷だの、めちゃめちゃしょうもなくて、なかなか好感が持てました。ただ思ったのが、日本でラップとかヒップホップでお笑いを入れてやるというのは、なんかもともと日本で最初にラップをやったのが吉幾造の「おら東京さ行くだ」だし、それ以前にも笠置シズ子とかいるし、なんか、既視感があって、neuesで売ろうとすると大変かな、と思いました。Dragon Ashというのは私はCMで聴いただけで、全然熱心なリスナーではないんですが、一聴してすごいと思ったのは、日本語でヒップホップをやっている癖に、きちんとシリアスな音楽として成り立っていて、ぜんぜんお笑いの入る余地がない、ということでした。そんなの前にもいくらでもいた、という人がいるかも知れませんが、少なくても私が聴く限り失笑せずに聴けた最初のヒップホップでした。ということで、日本国内の特殊事情で、この分野ではシリアスなものよりもお笑い系の方が歴史が長いので、かなり技術的に上手くないとあんまり注目されないかも。でもまあこの人達は、あんまり上手くないけど、なんか聴衆を愛しているのがそこここに伝わってきて、よかったです。あ、ところで、最初に出てきたクラバー三人組、バックトラックをかけるだけであんまり働いていませんでした。あれだったらフロントの二人だけで自分でMDを操作してもできると思うんだけど、あの女性二人組が、まあ、書き割りみたいにこういう人らを配置して立たせといたらコントラストがくっきりして笑いが取れるかな、と思っていたのかも。もしそうだとしたらなかなか痛快。
三発目が...あ、佐伯誠之助こっちじゃん。じゃあ、最初に出てきた人ってなんだったんだろう?まあいいや。前回は何が面白いのか全然説明になっていなかったのでちょっと解説すると、売りは二つあって、寒いトークと妙な間を持ったステージ進行で、前回は曲の途中で、何の前触れもなく「はあツ!」と絶叫してそこでぶちっと一曲終わってしまうとか、最後に「ほんま好きやねん」を熱唱して終わったりと、なんだかリズム音楽の根本をなめてかかったようなステージングが新鮮だったのと、「前のPeckさん、ギター上手いですよねえ。ほんとにまったく、もう、僕ももっとギター上手かったらこんなことやってませんよ!」とかとても渋い声でしょうもないぼやきを入れていて、これが笑いの才能があるらしくきちんとお客さんを掴んでいたのが印象的でした。なんか、歌詞とか喋りとかの意味的な部分以外の、ダンス音楽はシームレスに繋いだ方が上手い、とか、そういう前提みたいなのを平気で蹴り倒しているような風情が目新しかった。さて今回は...前回と雰囲気は一緒で、なんかステージの途中でメモリカードを1分以上ごそごそ捜しまわったり、曲の途中で突然踊りを止めて「ああやれやれ」という感じでぶちっと一曲終わってしまったりと、わりと新しくいろいろと工夫を入れています。曲の方も、AVの音をサンプリングしたのをえんえん流したりとか(これはしかしちょっと苦痛だった)、応援団風の妙な踊りが入るようにしたりとか、前回とはかなり趣が変わっていました。この芸風でいろいろ開発するのはなかなか大変かとは思いますが、いまのところ頑張っている感じです。喋りは相変わらず肥だめに石を投げ込んで糞まみれになったとか、下品なネタばかりでした。ああ、おもしろかった。
もう一組あるというので、かなり待ってチェックしてみましたが...ターンテーブル担当とギター二人とフロントのボーカルで、音は要するにマンチェ風で、ダンストラックの上にギターをかぶせる、という感じでなかなか懐かしくて良かったんですが、フロントマンが滑りまくっていてなんか目を背けてしまいました。最初アルミホイルで作った防護服みたいなものを着て出てきて、おお、これは臨界事故ネタか、と思っていたら、単に古典的に宇宙人ネタでした。で、この人、もと新日鉄釜石の松尾雄治みたいな顔をしていて、Axel Rose みたいな声を出すのですが、喋りが面白くない。努力をしていないわけではなく、必死こいて観客席の方に飛び込んでほふく前進してみたり、三輪車にのってひとまわりしてみたり、いろいろやってみてはいるのですが、どうもお客さんを引かせる役にしか立っていない。フロントマンがどっか行ってしまったあとの、バックトラックだけの時間の方がなんか気持ちよく踊れるという、可哀想なことになってしまいました。このひと、佐伯誠之助の2-30倍はエネルギーを使っていると思うんですが、彼の半分も聴衆から愛されていないように思われ、人生って不公平だな、と思いました。どちらかというと、チェルシーとかの、ハードコアパンク目当ての客の前でやった方がいいのかも知れません。彼が必死こいて全裸になって天井に逆さにぶら下がって叫んでいる後ろで、女性のスタッフの人がカウンターで静かな表情でカクテルを作っていたのがとても印象的でした。