みなさん、ゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか。私は...プログラム書いていたことしか記憶にないぞ。最終日ぐらいのんびりしようと思ったら親戚筋の京都観光にかり出されて、その人たち自体には何の罪もないいい人たちなのだけれど、結局連休中、彼女がいるにも関わらずまともに遊びにいった所はどこにもない、何だかとっても寒いので、「ちょっと遊んでくるぜ」と彼女に宣言して(といってもナンパする能力はないから修羅場にはならない)7時半頃入場。おお、日曜日だからとっても早い。
で、入ってみたら、懐かしい、90年代初頭によく流行ったようなささくれだった音がかかっていました。一生懸命rockin'on とか読んで選んで聴いてたよなあ。思わずノスタルジーに浸ってしまいました。しかし、この手の音って何が気持ちいいんだろう、とつらつら考えていたら、これはチラリズムなのではないか、という結論に達しました。ノイズの海の中に隠された微かな和音を苦労して選別して聞き取ることによって、和音自体はたいしたことがなくてもなんか神々しいような気がしてくると、まあ、ノイズ自体も現代社会で育ってしまうと気持ちいい所があるので、それだけでもないと思うけど。ところで、全然話は違うのですが、楽器の音の聞き分けとか、人間の耳はいとも簡単にやってしまいますが、機械にやらせようとするととっても難しいらしいです。なんか月刊bit別巻の「コンピュータと音楽」というのの付録のCD-ROMで、バイオリンの音だけ抽出するプログラムと言うのを作っているのですが、その結果の音と言うのがかなり他の雑音が混じっている。いやあ、人間の耳って、あっさりと凄いことをしてしまうんですねえ。いきなり理屈が多いんですが、だって、この手の音って、長時間聴いてると飽きて退屈なんだもん。いろいろと妙なことを考えないと寝てしまう様に思い、珍しく大脳皮質を使いつつ聴いておりました。酷い事を書いているようですが、多分こういう事を感じているのは私だけではないと思うんですが、たとえば後ろを振り返って見たら聴衆の半分ぐらいが腕組みをして身じろぎもせずに騒音に耳を傾けている、と言う、何だかシュールな光景でありました。
で、そうこうしているうちに一つめのバンド。おお、このルックスは。昔元キッスの(あ、今もか)ジーン・シモンズが「ピザの宅配のバイトのにいちゃんのような格好をしたやつが「ああ、なんてひどい人生なんだ」って嘆いているような音楽にはもう飽き飽きだぜ。おれたちはロックしたいんだ(死語)」と言うようなことを90年代に入ってから何かのインタビューで言っておりましたが、ピザの宅配のバイト。はっはっは、何だかそのままであります。しかしとても気持ち良さそうにノイズを出しておりました。私は私で高校時代の失恋の思い出なぞがフラッシュバックして来て、音と関係なく胸が一杯になってしまいました。女性がドラムをしていたんですが、かなりかっちりしていてこれはなかなか聴けるな、と思っていたのですが、最後のハードコアパンク風の曲だけタイミングがずれまくっていて、あああああ、体力切れたのね、と言う感じでした。
次がドリルマンと言うバンド。どこかで聴いたことがあるな。これまた変拍子を使いまくったりとか、なかなか実験的でユニークな音を出してくれました。しかし、ドラムとギターでなんか別のリズムを奏でていて、そのうちに一緒になってしまうと言うのは、これは物理で言う「引き込み」という奴ではないでしょうか。この手のリズムをずらす曲自体は少ないから良くわからないけれど、そもそもこういうダンス音楽で人間が振動するというのは、なんかこの手の物理モデルを使い回して説明できそうな気がします。何かの原理が抽出できたら、DJなんかにとってみたら結構使いでのある理論になるように思います。
その次も知らないバンド。これはイギリスのギターポップを忠実にコピーしている、と言う感じの人たちでした。要するに割と適当な格好で出て来て、マイクを低く設定して猫背でギターを掻き鳴らして(あの姿勢、肩凝らないのかなあ)なんかごにょごにょと叫ぶと言う。まあ、スタンダードにうまいんでそこそこ女性の人気を集めていたのですが、これのどこがexperimental だ、なんか、ほりのぶゆきの漫画風に言うと「おかあさん、俺、大きくなったらイギリス人になるよ」と言ってそうな人たちで、歌詞もほとんど英語で、まあ、ローカルには人気者になれるかもしれないけど、なんだかコピーバンドの域をでないなあ、と思っていたら、突如打ち込みの音が流れ出してそのフォーマットが壊れて、とっても艶のあるノイズを奏で出して、おお、やればできるじゃん、という感じでした。歌詞はドイツ語で「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」と叫んでいるだけなんですが、この曲は良かった。しかし、このまま突っ走るのかと思ったら、それ一発だけで後は元に戻ってしまいました。勿体無い。
次がキリヒト。これはやはり手塚治虫の漫画からとったのかな。犬のかぶりもんでもして出て来るのかな、と思ったら、大真面目でありました。前座のバンドとは全然モノが違う!で、前述のチラリズムどうこうなどと言うのは全然関係ない、とんでもない良質な音を奏でていました。ギターとスタンディングドラムの二人組なのですが、とても二人とは思えないような厚みのある音を出します。取りあえずドラムがバカテク。「デブのくせにリズム感のいいオヤジだぜ〜」((C)望月峯太郎)といった感じで、これまで何か適当に付けて来た理屈をすべて蹴り倒してしまうようなパワーがありました。ギターのにいちゃんも、かなり音がこなれていてリズムもばっちりで、これはこのバンドだけで2000円払って入った価値があったわ、とほくほくしておりました。むかし、Primusというこれまた実験的ですがとんでもなくうまいベースのやつがいるバンドがおったのですが、なんとなくそいつを思い出してしまいました。そのバンドはCDで聴くといまいち迫力がなくて2-3回しか聴かなかったのですが、ライブはこんな感じだったのかもなあ。
この辺りで体力が切れて帰宅。ああ、理屈長い。