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新しいものと出会う場面は、善く言えば“先入観が無い”、悪く言えば“予備知識が無い”状況で迎えることが多いと思われます。“先入観が無い”とすれば、出会いの後にもっと出会ったものについて知りたいという欲求が起こることでしょうし、“予備知識が無い”とすれば知識を吸収しなかったことを後悔するでしょう。
このサイトでは“何処か行きたい症候群”のようなコーナーも設けて、双方への対応も少し考えましたが、もう少し手軽に対応するための情報提供も試みたいと思います。それは本のご紹介です…
“紀行”に分類されるようなものも面白いのですが、大欧州を漂泊すると、目にした風景が現れるに至る道程が気になり始めるものです。そうした意味合いで、ご紹介するものは歴史系統のものが目立つかもしれません。
私の場合、“ガイド”的なものは目に留まれば読みますが、“実用情報”は大概現地で案内地図を入手して使用するので、コピーして持参するようなことはしません。
お楽しみいただければ、またご意見などを掲示板にでもお寄せいただければ幸甚です…


書名 著者 出版 勝手な感想
ロシア思想史 メシアニズムの系譜 高野雅之(こうのまさのぶ) 早稲田大学出版部 自分にとっては「今日あるのはこの一冊のおかげ」と言っても過言ではない。
ロシアが型づくって来た“心象風景”のようなものを考察した一冊である。
読後は“ロシア観”とでもいうようなものが変わることであろう。類似した本は殆ど無いと見受けられる。
マイナーな本かもしれないが、出版当時大手新聞の書評にも取上げられていたので、各地の図書館で見つかる公算は大きい…
地図で読む世界の歴史 ロシア ジョン・チャノン
ロバート・ハドソン
外川継男 監修
桃井緑美子 訳
河出書房新社 ロシアの興りからソ連が旗を降ろすまでの通史が、豊富な図版とともに明らかにされている。
図版の中には、興味深い絵や写真の他、労作と見受けられる歴史地図も多い。
ロシアに関心を持つようになり、「もう一寸知りたい」という方には絶好の入門書である。
ロシア その歴史と心 藤沼貴 第三文明社 永年ロシア文学研究に携わっている筆者が、無数に湧き出る“ロシアの謎”について整理している。
筆者は「答えよりも問いを提出する」としているが、20世紀のドラマを創り出した主要キャストに踊り出るまでを判り易く説いたものに仕上がっている。
読んで旅する世界の歴史と文化 ロシア 原卓也 監修 新潮社 一寸見た目には、ボリュームのある付き合い難い本にも見受けられるが、国や地域に関して、歴史、地理、名所、文学、音楽、風俗などなど分野毎に、各々を得意とする執筆陣によって手際よくまとめられている。
そのため、今日はこれ、明日はあれと思いつくままにランダムに読み、概ね一通り読んだ暁にはそれなりの“通”を自認出来る仕掛けになっている。
ここでは、個人的な好みで“代表”としてロシアを挙げたが、各地域のものがあり“小百科シリーズ”の様相を呈している。
私は、このシリーズのイギリス、オランダ・ベルギー、北欧、中欧を持っている。何れもタメになる本だと思う。
物語 北欧の歴史 モデル国家の生成 武田龍夫 中公新書 「北欧を訪ねる予定があるが、何かあの地域のことが判るもの」と訊ねられた時、迷わずに奨めたこともある一冊。
北欧諸国は観光を大事にしており、概して旅行者には優しい。地図や飲食や買い物のような、街を歩く具体的な情報は、現地の案内所やホテルなどでどうにかなる。そうした意味で、出発前にも楽しめて、帰った後に続きか再読をしても興味深いものとして本書を挙げる。
現在“北欧”と言えばスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドの5カ国を指すことが多いが、各々の歴史は独自にあるものの、重なる部分も多い。要領よくまとめるのはなかなかの苦労と見受けられるが、バイキングの昔から、北の強国として繁栄した時代、欧州のパワーゲームの中で苦労した時代、冷戦、EUといった今日的な話しなどを、新書サイズに巧みに詰め込んでいる。
良い季節には文句無く美しい自然が迎えてくれる北欧だが、旅の前でも、或いは後でもこうした手軽な参考書で歴史を知ると楽しみが拡がる。
スウェーデンは、今日では平和な国の印象だが、嘗てはバルト海の覇権を巡ってロシアと激しく争った経過がある。個人的には、ロシアの側から学んだ話しを逆側から学ぶことが出来たのが、もっとも興味深い。またデンマークの王達は、エピソードに事欠かず、なかなか面白い。
スコットランド王国史話 森護 大修館書店 偶々同じ出版社から出ているが、一方は記者を経て大学講師を務めていた日本人による、他方はスコットランド出身の小説家による彼の地の歴史を題材にした読み物。
18世紀に正式に連合王国が成立するまでは完全な独立国だったスコットランドの歴史は、過激なまでにドラマチックである。何れの書も平明な語り口で、こうしたドラマを教えてくれる。
これを読んでからスコットランドを訪ねると、名所を見る観点も変わることであろう。
メル・ギブソンが映画『ブレイブハート』で演じた英雄ウィリアム・ウォレスを巡る話しも、これらにあたればよく判る。(因みに『ブレイブハート』の小説も二見書房から文庫で出ている。)
スコットランド物語 ナイジェル・トランター 著
杉本優 訳
華麗なる二人の女王の闘い 小西章子 朝日文庫 スコットランドの歴史に関するものを上記で挙げたので、序でに簡単に読める文庫本を挙げておきたい…
過激なまでにドラマチックなスコットランドの歴史にあって、16世紀に登場した最も華麗なヒロイン、メアリー・スチュアートと、波乱の前半生から玉座に上り、英国繁栄の礎を築いたと言われるエリザベス1世…
同時代を駆け抜けた2人の女王の物語がこの一冊で巧みに語られている。最近エリザベスを主人公に据えた映画があったが−あの映画の原作も新潮文庫にあり、なかなか良い…−、メアリーの方がよりドラマチックな感じがする…
旅名人ブックス
オランダ 栄光の“17世紀”を行く
日経BP社 “ガイドブック”の範疇に入る本とも言えるが、そういう括り方が相応しいのか否か、少々疑問も禁じ得ない、「読み応え」があるものである。たまたま最近読んだ2冊を代表のように挙げたが、欧州各地を中心に、色々な地域に関するものがシリーズで出ている。
各地域が誇る文化遺産が登場した歴史的背景などに突っ込んだ記述がなされていて、美しい写真も豊富である。
前者は日本との接点となったオランダの通商活動の経過、後者は欧州北部に広範に展開したハンザ同盟の盛衰が詳しく判る。読んでから旅に出ても、旅から帰って読んでも興味深い。
旅名人ブックス
ハンザの興亡 北ヨーロッパ中世都市物語
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