超法規的措置
Apr.7.99

超法規的措置【英語でなんと言うんだろう?】


先日Nelson Mandelaのタイトルで、リビアのテロリストの裁判を、オランダで行なう事に、少し触れた。

今回の裁判は、非常にユニークなもので、国際紛争の解決手段のひとつの、方法を示すものとなった。

死者200名以上の、大惨事となった、スコットランド上空での、パンナム機爆破事件のリビア人容疑者の引き渡しを求めていたのは、スコットランド。

\ 因みに、一言でU.K.と呼んでいるのは、United Kingdomでして、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの総称。

実は、イングランドとスコットランドは、法律が違う。

イングランドとウェールズは、同じ法律により法治されているが、歴史的経緯もあり、スコットランドは、独自の司法権を持っている。

スコットランドとしては、容疑者をスコットランドの法律にもとづいて、スコットランドの裁判所が裁くというのが、今回の話。

しかし、スコットランドに、容疑者を引き渡して、そこで裁判をやることには、リビアがずっと反発していたため、第三国で裁判をすることで、合意した。

その第三国として、選ばれたのが、オランダ王国だったという事。

オランダは、国際法のいわば中心地となっていて、数年前の「原爆は、国際法違反か?」という、全世界の注目を集めた裁判が、行われたりしている、実績もあったためだろう。


私は、てっきり、ハーグの国際司法裁判所で、この裁判をやるのだろうと思い込んでいたが、新聞を読んでいて、そうでない事を知った。

ユトレヒトの郊外に、ZEISTという、小さな街がある。

かつて、米軍基地があった場所で、いまでも恐らく、オランダ軍が使用している、施設があるらしい。


ところが、そうは行っても、オランダの国内では、当然外国である、スコットランドが、勝手に司法権を実行できよう筈がない。

そこで、(私は、この記事を読んで、その柔軟性に感銘を受けましたが)オランダ政府は、なんと、その裁判期間中だけ、そのZEISTの設備を、スコットランド領として、割譲するという、ウルトラCの超法規的措置をとったのです。

つまり、この間、オランダのどまんなかに、スコットランドが出現してしまったわけです。

超法規的措置というと、昔日本で、福田内閣の政権時に、ハイジャックテロリストの要求に、応じて、政治犯を釈放してしまって、賛否両論を巻き起こした措置が、ありましたが(人命は、地球より、重いってやつですね)、今回のは、もっと粋な計らいです。


この場所は、そのために、大挙してやってきた、スコットランドの警察官が警備し、プレスは締め出されているのですが、きっと内部では、スコットランド人の関係者が、入国審査かなんかしてるんでしょうかね。

しかし、普段は何もない場所だけに、報道陣や関係者が押しかけても、宿泊施設も十分にない。

近隣のホテルは、満室状態だけど、ここでも大手ホテルチェーンの、Golden Tulip Hotelは、粋な計らいをして、「事件の、犠牲者の遺族が、裁判を傍聴する場合は、特別優先」を徹底しているそうです。

降ってわいた、大騒ぎで、地元の住民からは、若干苦情も出ているようですが、今回の裁判の為に、弾力的な対応をしている、オランダ政府に、敬意を表したいと思います。