猿とストレス
Mar.6.99

猿とストレス【the ape and stress】


最近の週刊文春を、、暇つぶしに読んでいたら、おもしろい記事があった。

猿を使った、ストレス耐性実験。

二匹の猿に、かわいそうだが、電気ショックを、不定期的に、与える装置を取り付 ける。

檻には、ランプを取り付け、電気ショックを与える直前に、点灯させ、事前に猿が わかるようにする。

二匹のうち、一匹だけに、リモコン装置を与える。
ランプが点灯してから、このリモコンのボタンを押すと、電気ショックが来ないようになっている。

暫くすると、この猿は、リモコンの役割を学習し、ランプが灯るのを、みてから、 電気ショックを防ぐ方法を覚え、使いこなすようになる。

但し、いつランプが灯るか、わからないので、リモコンは肌身離さず、持ち歩くよ うになる。

電気ショックに対して、なす術を持たない方の、猿は、しまいには、諦めの境地に 達し、だんだん電気ショックにも慣れてきて、日常生活の一部として、取り入れて しまう。

数ヶ月後、ストレスが溜まって、先にやられてしまうのは、実は、リモコンを持っ た方の猿だ。

リモコンを持った猿は、いつランプが点灯するか、気が気でならず、常にランプを見 る習性がつき、集中力が散漫になり、睡眠も不足がちになる。


これは、携帯電話を持たされた、現代の人間に当てはまる。

人間は、自然界で、唯一道具を発明し、使いこなす動物だという事になっている。

厳密に言えば、象は、てこの原理を知っているし、小枝を道具にして、木の幹に隠 れた虫を穿り出す鳥なんかは、いる。

道具は、生活を楽にするために、必然性から生まれるのだが、生活を楽にすると、 人間はどんどん、だめになる動物でもある。


携帯電話のお陰で、出張もせわしなくなった。

私は、長い間、携帯電話を持つことを、避けてきたが、時代の流れに逆らえず、専用に電話が支給された。

以前は、出先で要件を早めにすまして、買物したり、昼間から、パブに入って、ビールのんで、帰りの便まで、時間つぶしをする余裕が、あったもんだが、電話を持って歩くようになっていらい、仕事がどこまでも、追いかけてくる。

地下鉄に乗っていて、地上に出る区間で、ぴーぴーかかってくる。話しているうちに、再び地下にもぐり、会話が切れる。
これは、ストレス溜まる。

空港のトイレで、鳴り出したときは、どうしようか、動揺した。

会議中は、スイッチを切っておくが、あとでオンにすると、ボイスメールが一杯入っている。

先週なんか、早朝便で、ロンドンヒースロー空港に降り立った途端、入国審査の前で、「緊急の用あり、そのまま、チケットを変更して、次ぎの便にて、オランダに戻られよ」なんてのが、あった。

これじゃ、リモコンを持たされた、猿と同じですよね。