ホロコーストU【Holocaust & Auschwitz finance】
2月4日にドイツで、発表された、ショッキングなニュース。
翌日には、国外のプレスにも翻訳され、Financial Timesの一面トップ記事になった。
不思議な事に、日本のプレスではまったくといって、いいほど取り上げなかった。
第二次大戦中に、ナチスがユダヤ人の、大量虐殺施設に使った、アウシュビッツ(現在、ポーランド領のオシフェンチウム)は、映画「シンドラーのリスト」でも、有名になりましたが、この収容所建設資金の融資に、ドイツ最大の商業銀行、ドイツ銀行が関与していたと、みずから発表したことです。
1942年から、43年にかけて、Kattowitz, Bielitz, Teschen と Beuthen支店が、工事を請け負った建設会社に融資をしていた。
このナチス時代の、融資については、以前より疑義がもたれていたが、今回、初めて銀行側から、公式に事実を認めるコメントを出した。
私の、銀行員としての経験から言えば、融資の権限は、支店長権限と、本部決裁の二つに別れる。
通常は、貸し出し金額、融資期間と融資の目的により、この線引きがなされている。
収容所のような大掛かりな、建設プロジェクトともなれば、Kattowitzのような、田舎の小規模店舗の支店長では、決められる案件ではなく、地域本部の審査部長が承認しないと、融資が実行できないように、なっている。
これほど大きな、国策がらみの案件であれば、ベルリン本部に書類が残っていないのは、不自然だと、個人的には思った。
銀行側の発表では、戦後のドイツ分割とポーランド領の返還で、関係書類が現地に残ったままとなり、閲覧不可能だったために、ようやく昨年から、書類の収集が可能になったとしている。
今回収集できた、関連書類はならべると、9,5Kmにも登る、膨大な資料だ。
ドイツ銀行は、過去最大の買収プラン、米系の銀行Bankers Trustの合併を発表したが、米国のユダヤ人団体が、ドイツ銀行の、過去のナチスへの関与、ユダヤ人への補償問題を明確にしないかぎりは、圧力を掛ける事が予想されたからだ。
来週にも、NYに本拠を置く、World Jewish Congressと、ドイツ銀行、ドイツ政府、アメリカ政府による、戦時中のユダヤ人補償問題会議を直前にして、開示に踏み切ったものと、思われる。
このニュース発表後、ユダヤ人団体は、ドイツ銀行の開示姿勢を、「評価する」コメントを発表し、問題の解決にむけて、一歩前進の兆しを見せている。
早速、2月5日には、Dresdner Bank AG,Commerzbank AG とHypoVereinsbank AGの大手銀行は、「当行には、そのような融資加担の事実は、まったくない」とコメントを発表した。
確か、二年くらい前に、日本企業が、戦時中朝鮮人に強制労働をさせた事実を、否定し、賃金の支払いと、補償金支払いの話し合いの、席を設けることすら拒絶していたのに、比べると、今回のドイツ銀行の決断は、随分と思い切った事をしたものである。