キューブリック
Mar.15.99

キューブリック【Stanley Kubrick】


私の好きな、映画監督が、また一人この世を去った。

私は、てっきり彼がイギリス人だとおもっていたが、もともとは、アメリカ人だとはじめて知った。

2001 Space Odyssey、時計仕掛けのオレンジ、シャイニング、博士の異常な愛情、ロリータ、etc..彼の名を知らしめた作品は、数々あれど、私が最高に好きなのは、キューブリックらしからぬと言われる、「バリー リンドン」。

ライアン オニール主演、William Makepeace Thackeray (1811-63)原作の、"The Luck of Barry Lyndon"を映画化したもの。

この映画がすごかったのが、実に光と陰を自然にうまく利用していた、画像が非常に美しかった点。

それもそのはず、徹底して、高感度フィルムを用い、自然光、蝋燭の灯火だけを使って撮影しまた、こだわり様。

上映時間が、三時間以上かかる、大作でした。

この映画は、ヨーロッパが戦乱にあけくれた、波乱の時代に、成り上がって最後には、落ちぶれる一代記ともいえます。

アイルランドの農家の息子、バリー リンドンが女性を争って、故郷にいられなくなり、イングランドで軍隊に入隊して、七年戦争に参戦する。

その後、脱走して、ドイツ軍(当時のプロイセン)に紛れ込み、ドイツ女を、Ich liebe Dichでたぶらかし、ジゴロの素養をつけてゆく。

彼は、究極のジゴロとなり、いかさま賭博士として、カジノを荒らしまわり、とうとう、お金持ちのリンドン夫人と結婚して、逆玉の輿に乗る。

しかし、生活は荒れ、最後には自分の義理の息子に、決闘を申し込まれ、脚をぶちぬかれ、切断し、身ひとつで、追い出されるはめになる。

この映画を見て、当時大学生だった私は、ヨーロッパにはいろんな国があって、歴史が複雑だなぁと思い、関連史料を調べるようになった。

キューブリックの最高傑作に、この作品を挙げる人はまずいないだろう。

あまりにも、キューブリックらしくない、歴史大河ドラマなんです。


時計仕掛けのオレンジは、見ていてすごく恐かった。

社会からはみ出した人間を、洗脳していく過程と、バックに流れるベートーヴェンの「歓喜の歌」は、迫力あった。


2001 Space Odysseyも、あと二年で暦が追いついてしまう。
宇宙船のなかで、ジョギングはまだ出来るまで、技術は進んでいないし、コンピューターを対話するまで、現実のレベルが、あと二年で追いつくか、楽しみだが、宇宙船の船外活動なんかは、まさにキューブリックが、描いた通りのことが行われるようになった。

あの、モノリスは一体、何を言いたかったのだろうか。
答を出さないまま、キューブリックは、この世を去ってしまった。