LIBOR
Apr.22.99

LIBORLondon Inter Bank Offered Rate】


金融に関係ない人でも、一度くらいは、LIBORという言葉を聞いた事があるだろう。

一般には、ライボと呼んでいるが、人によっては、リボーとも言われる。

早い話しが、コーヒーや牛肉の値段が、世界中でバラバラなのと同じように、金利というのは、一定で無い。

でも、国際社会でお金を貸し借りする時には、客観的に、毎日値段を決めましょう。というのが、このLIBORだ。

国際金融の世界では、契約書に、「その日のLIBORに、何%上乗せしたものを、借りた方は、貸した方に、金利として支払う」という条項を普通いれます。

実際には、複数の銀行が、ロンドン市場で、「この金利なら、貸してもいいですよ」という数値を出し、極端に高いところと、低いところをカットして、その真ん中のレベルを提示した銀行の、レートを平均して算出したのが、この指標です。


さて、今回は、金融商品の説明をしたいのではなく、このLIBORのLについて。

なぜ、ロンドンなのか。

今や、世界の基軸通貨は、US$であるのは、誰も異論はない。

じゃぁ、なぜNew York市場を、スタンダードにしないのか?

英国ポンドなんてのは、かつては基軸通貨だったが、今では、英国以外では、殆ど無視されている通貨に、成り果てた。

むしろ、ドイツマルクの方が、大陸ヨーロッパでは、ずっと通用する。

今年から、ユーロの誕生で、ますますポンドの陰は薄くなっている。

しかしながら、何がどうなろうと、世界の金融業界を動かしているのは、やはり、ロンドン市場なのです。

いくら、フランクフルト市場が、取引高がすごいといっても、金融関係一筋に、ずっと仕事をしてきた私には、ロンドン市場と、他の市場との層の厚さときたら、大学と中学校くらいの、差がいまでも感じられます。

昨年以来、ロンドンに行く機会が、やたら多いのですが、行く度に、そのレベルの高さと、人材の厚みに、感心します。

巷では、これからはユーロの時代、欧州中央銀行のある、フランクフルトが欧州の、金融センターになるのでは、という声もある。

しかし、私はこの見方には、否定的です。

ロンドンの、リーディングマーケットとしての、地位は揺るぎ無い。

たとえ、英国の経済が弱体化しようが、英ポンドが、無視されようが、変わらない。


なぜかというと、アングロサクソンという民族が、金融に非常に向いているのでは、ないかと最近常に思うのです。

英国人と、いろいろ接してきた私の感想は、

「とっつきにくい。慇懃無礼で、そつなく付き合えるけど、腹の中では、何考えているのか、わからない。形式を重んじ、なかなか本音を出してくれない。」

良く言えば、

「相手に対して思いやりがあり、名誉や対面を傷つけない心遣いをしてくれる。思慮深くて、素朴な一面もあるし、ユーモアのセンスなんかは、抜群で、社交の主役にはなれないけど、会話を上手にこなす」

というのが、私の英国人評。

人の気持ちを無視して、頭の中にあることを、ずけずけと、なんでも口に出して、ストレートに表現する、ゲルマン文化圏の、オランダ人や、ドイツ人とは、かなり違う。

相手が聞いていようが、いまいが、一人称だけで、ひたすら自説を喋り捲る、ラテン系のフランス人や、イタリア人とも、また違う。


なぜ、アングロサクソンが、向いていて、ゲルマン、スラブ、ラテン人に出来ないかの、最大の理由は、「危機的状況になっても、パニック状態にならず、冷静な判断を出来る」という素養において、ずばぬけて、優れているのでは、ないかと思う。

金融市場というのは、一秒きざみで、世界が逆転するような、パニックの連続の世界だ。

ラテンの人たちが、危機に対する対処が、弱いのは、いまさら言うまでもない。

スラブの人たちは、危機を危機として、認識しない鷹揚な性質がある。

ゲルマンの人たちは、危機に直面すると、保身に走り、責任論を展開して、問題解決を二の次にする。

あくまでも、私の見てきた限りの判断なので、異論はあるだろうが、英国人は、危機に面したら、深呼吸して、分析を始め、原因を見つけ、その時点で、一番最適な解決方法を、実行に移す。

日本人だったら、全員の合意をとりつけるまで、目をつぶって、問題を先送りにするだろうし、ある時点で、最適な解決方法だったのだが、時機を逸してしまい、実行に移したら、状況が変っていたという、状況が普通。

別に、アングロサクソンを弁護する積もりはないのだが、彼等は、金融に非常に適した素養と、文化様式を持っているがゆえに、ロンドン市場の位置づけは、安泰であろうと、私はおもっている。