フィンランド【Suomi】
今週、フィンランドに行ってきた。
因みに、フィンランドというのは、現地の言葉では、スオミと言う。
オリンピックなんかの、フィンランドチームは、確かにSUOMIと書いたユニフォームだ。
目的地は、古都トゥルク(昔の首都)だったが、宿泊はヘルシンキ(現在の首都)にした。
何度か来た事はあるのだが、いままでは厳寒の冬の暗い時ばかりだったので、あまり明るい印象は持っていなかったが、この初夏の季節は非常に美しい。
北部の北極圏あたりでは、日没のない白夜がみられるが、ヘルシンキあたりだと、確かに夜中まで、明るいが、一応日没はある。
森と湖の国と、良く表現されるが、その通りの、自然が美しい国です。
1917年に、ロシアから独立した新興国で、ロシアの支配以前は、スウェーデン領だった。その頃の首都が、トゥルク。
ヘルシンキに着いたのは、日曜日。夕刻、中心街に出てみたが、人通りが殆どなく、ゴーストタウンのようだった。
随分と寂れているな、と思いきや、突然、酒場から物凄い、怒声とも悲鳴ともつかぬ、どよめきが起った。
何事だろうと、中に入ってみると、人いきれで、むんむんとしている。
客の視線は、ジャンボスクリーンに釘付け。
偶然にもノルウェーで開催中の、アイスホッケー世界選手権の決勝マッチだった。
長野オリンピックの金メダルチーム、チェコと、対するは、フィンランドである。
昔から、フィンランドはアイスホッケーは強い。
当然ウィンタースポーツは、盛んだが、アイスホッケー選手とスキー選手は、は国民的英雄だ。
長野でも、ジャンプのアホネンが金メダルとったし、距離スキーの、ミュレリも金メダル。アイスホッケーは、決勝進出ならず、苦杯をなめただけに、相手がチェコとあっては、当然ファンとしては、燃えるらしい。
結果は、3-1で、フィンランドが優勝。
その夜、町中大騒ぎ。フィンランド人の酒好きは、有名。
寡黙で、内気なフィンランド人らしくなく、Markoは、饒舌な男で、いろいろ説明してくれた。
「フィンランドってのは、独立してまだ80年程度の若い国。独立したときに、スウェーデン王室の血縁をまつりあげて、王室を作ろうとしたが、結局うまくいかず、共和国になったんだ。
だから、ナショナリズムを盛り上げる為に、国民の団結の拠り所として、スポーツに対する思い入れは、すごいんだ」
「この国の男の子は、他の国と違って、サッカー選手じゃなくて、皆アイスホッケーの選手になるのが、夢でね、俺もそうだった。女の子にもモテルしね。」
「今回は、オリンピックチャンピョンのチェコだったから、盛り上がったけどね、相手がロシアだと、もっと盛り上がるんだ。」
コソヴォ問題で、米露両国の仲介役を、フィンランドがやっているが、EU加盟国(95年から)でありながら、軍事同盟には参加しない、政治的特殊性が理由だと思う。小国ながらの、バランスを重視した姿勢ならでは。
独立した後も、ソ連が再び侵略してきたために、第二次大戦のときに、独立を守る為に、ソ連と激しく戦った。
日独伊の、ファシズムの枢軸国とは一線を画して、同調しなかったが、連合国ソ連と戦ったために、戦後、国連からは、同じように扱われてしまった。
もう、生産はやめてしまったらしいが、「アミラール(admiral)」という、ビールがあった。
このラベルに、日露戦争で活躍した元帥、東郷平八郎の顔がデザインされている。
宿敵ロシアを下した、偉大な戦術家として、採用されたのだろうが、まさか本人は、遠くフィンランドで、ビールのラベルにされるとは、夢にも思わなかっただろう。
レストランやバーで、何度もこのビールを飲みたいと、6軒の店で、尋ねたが、
「昔は置いてあったけど、最近見ないねぇ。生産していないかもしれない」と何処でも言われた。
この東洋人は、なぜそんなビールを飲みたがるのだろうか?と怪訝な顔をされたが、その内2軒の店では、
「あぁ、判った、あなた日本人か?アミラール トーゴーが見たいんでしょ」
と意を察してくれて、回りの人に、聞いてくれたりいたが、結局今でも入手できるのか判らなかった。
「残念だが、いいや、何でもいいから、フィンランドで一番旨いビール出してよ」
と頼むと、大抵、Hartwall社のLapin Kultaが出てきた。
余談だが、フィンランド語で、酔っ払いの事を、偶然にも「ヨッパライ」とか「ヨッパラッテ」と言う。
Markoに、日本語でも全く同じだ、と話したら、大笑いしていた。
しかし、飲んでみたかったなぁ、トーゴービール。
オランダに、戻ってきたら、Markoから、Emailが入っていた。
「Dear Hiro、お前の探していた、トーゴーのビール、まだどこかで生産しているそうだ。うぅむ、いいやつだ。今度フィンランドに来たときに飲ませてやるから、仕事じゃなくて、遊びに来いよ。
お前は、安心して、ヨッパライやれ。 Marko」