ヒトが、通常動き回る地域の事を、行動範囲といい、その人の世界観に影響を与える(と私は思う)
かく言う私も、日本では、九州に二回、北海道に一回、沖縄に一回行った事はあるが、四国に足を踏み入れた事は、未だない。
先日、典型的エリートと呼ばれるタイプの、アメリカ人に、欧州の通貨統一の説明をしていて、ヨーロッパの地図を見せた。
参加11カ国に、色が塗ってある。いちいちその名前を、あげつらう必要はないだろうと、思ったが、年のために、オーストリアを指して、「この国、わかる?」と聞いたら、分からないという。
日ごろ、ヨーロッパに住んで、仕事であちこち、行き来していれば、ヨーロッパの白地図は、すらすらと、首都名にいたるまで、わかる。
しかし、確かに、日ごろヨーロッパに縁のない、毎日を送っている彼には、わからなくて当然。
因みに、私が、仮にUSAの白地図を渡され、州の名前をかけと言われたら、正直いって、ハワイ、アラスカ、カリフォルニア、フロリダが限界だ。
テキサスは?と聞かれても、州都ダラスは言えても、場所は分からない。
アメリカ人からみれば、「お前はそれでも、高等教育を受けたビジネスマンか?」と言われそうだが、そんなもんだろう。
よく、ヨーロッパの人に、「普通の日本人だったら、大学卒業しても、フランスとドイツとスイスの地理的関係は、分からないと思うよ」と語ると、驚く。
でも、あなたは、タイとカンボジアと、ベトナムの位置関係が分かりますか?と聞いて、答えられる人は、特別な興味を持った人以外では、まずヨーロッパにはいない。
毎週一回、みっちりやった、お陰で、なんとかオランダ語で、業務がこなせるようになった(まだ、ビジネス文書は書けないが、会話はとりあえず、クリアした)。
たまたま、初夏に、日本に出張があり、先生に、「来週から日本に行くので、次の授業を延期したい」と言った。
すると、先生は、「へぇ、大変ね、今ごろ寒いから、冬支度していくのかしら?」
その頃の、私のオランダ語の聴解力も、たいしたことないから、私は聞き間違いかと思い、訊ね代えすと、やはり質問は、「これから、寒いんでしょ」という内容だ。
どうやら、誤解があるようだと思い、確認すると、「日本って、確かニュージーランドのすぐ上あたりでしょ?違ったかしら」
うぅむ、私は唸ってしまった。これが、17世紀に、東インド会社を拠点に、七つの海を制覇し、アジア市場を牛耳った、オランダ王国教育の、なりの果てか。
地図を見せて、日本の位置を、確認すると、さすがに先生は、恥ずかしそうであった。
それ以来、私は、事ある毎に、恥をかかぬように、飛行機の中で無料配布される、日本航空の機内誌に付いている、折り込み地図を眺めては、世界中の国と首都を覚えるように、心がけている。